2022 Fiscal Year Research-status Report
Research on the effects of school-based citizen science in the field of astronomical and meteorological fields
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21K02616
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Research Institution | Ryukoku University |
Principal Investigator |
滋野 哲秀 龍谷大学, 公私立大学の部局等, 研究員 (60788967)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
多賀 優 龍谷大学, 農学部, 教授 (00755671)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 天体気象分野 / シチズンサイエンス / 気象防災 / ミスコンセプション / 探究活動 / 理科 / 地域との連携 / 総合的な学習の時間 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究においては、日本学術会議が提唱するシチズンサイエンスという活動をめざして、喫緊の課題となっている気象防災教育とも関連させ多くの研究協力者との協働で天体・気象分野を中心にしながら観察・実験開発を含めた効果的な指導法の研究開発を行ってきた。研究内容として、小中一貫教育に取り組む京都府舞鶴市・宮津市の教員、高槻市立小学校の教員、京都地学教育研究会(高等学校教員)、所属する日本気象学会、日本気象予報士会との連携協力のもとで活動を行うことができ、新たな知見を得ることができた。 特に、研究協力者教員との連携授業や研究協力校の理科や総合的な学習の時間(高校においては総合的な探究の時間)など様々な機会をとらえて、シチズンサイエンスの萌芽となる活動を生み出すことができたことは大きな成果だといえる。 ほとんどの大学生が天気図から風向を正しく記入できないなど、至急に改善が必要な誤認識は、研究協力校である中学校や京都府立桃山高等学校の授業及び総合的な探究の時間などでの実践により、シチズンサイエンスの一つの方向性を見出すことができた。その中でも、日本気象予報士会をはじめ、地域の人たちを巻き込んで災害地域をめぐるフィールドワークを交えて、過去の気象災害を振り返り学習するという活動は、今後のシチズンサイエンスの在り方として貴重な事例になると考えられる。 この活動については、SSH(スーパー・サイエンス・ハイスクール)の探究活動とも絡めたものであり、高校生が主体となり課題を設定し、地域の人々や気象関係者、災害が発生した地域の小学校などとも連携した活動である。 今後SSHなどの指定を受けていない近畿北部の高等学校や小中学校においても探究活動を支援する中で新たなシチズンサイエンスの取り組みに移行する活動が数多く生まれてきたことは、学校を基盤としたシチズンサイエンス研究の大きな成果である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の開始当初は、新型コロナウイルス感染症が収束しておらず、本研究の中心となるグループ活動や多くの人々が集まって活動することについて制限があり、感染状況の様子をみながら少しずつ活動を展開してきた。そうした時期に、ミスコンセプションのベースになる研究を、小中高等学校の教員と緊密に連携しながら児童生徒の概念形成などについて、きめ細かなデータ収集を行うことができた。特に教科書分析などミスコンセプションの内容について教科書のミスリードとなっていると考えられる内容を抽出し、研究協力者と協議して、実際の授業においてミスコンセプションを基盤にした問いのデザインをもとにした授業を実施した。そうした中で、多くの有効な指導法を開発することができた。その成果は、日本気象学会秋季大会、日本気象予報士会研究成果発表会、国際会議(New Perspectives in Science Education - 12th Edition)などで発表することができた。 さらに、総合的な学習の時間や教科の授業を探究的な学びに変えるためのサポートを行うことで、シチズンサイエンスに向かうための基盤整備が行えたことは、本研究のその後の活動に大きな力になった。研究協力校である京都府立桃山高等学校や府立宮津天橋高校、京都府立峰山高校、舞鶴市立和田中学校、高槻市立玉川小学校の教員と今後の研究の方向性についての議論を行った結果、総合的な学習の時間や総合的な探究の時間の児童や生徒が考えた課題設定には、今後のシチズンサイエンスの萌芽となる課題が数多く生まれてきた。そうした活動は児童生徒が中心となりながら地域の人たちを巻き込み、学校を基盤として学習する場が形成されつつある。 また、コロナ禍で2年以上中断されていた、小学校を基盤にした星空観測会を小学生とその保護者、地域の人たちとともに学習の場として再開することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
天体気象分野に関するミスコンセプションの解消に向けた研究については、まだ多くの基盤研究も必要である。特に、対話型論証などを活用した問いのデザインの開発により効果的な学習を行うための基礎研究を継続しながら、シチズンサイエンスという学習の場を学校を基盤として動かしていくためのより有効な方法を研究開発する必要がある。 新型コロナ感染症の5類移行に伴い、集団での活動が再開できるようになったため、様々な活動を学校と協働で行うことができるため、地域の協力者を交えながらより有効な学習の場の構築を検討していきたいと考えている。 2022年度に行ってきた小中学校の総合的な学習の時間や総合的な探究の時間の活動サポートは、天体・気象分野だけでなく、学校を基盤としたシチズンサイエンスの萌芽となる場となることが明らかになり、こうした点は、本研究の大きな成果である。児童生徒が地域をベースに課題を設定することにより、自然科学のみならず社会科学においても数多くのシチズンサイエンスを学校からつくり出すことができるのは今後の教育の在り方についてシチズンサイエンスという学習の在り方について示唆を与えることになる可能性がある。 気象防災に関する京都府立桃山高等学校(研究協力校)の生徒が中心となった過去の気象災害事例を地域の人々とともに専門家を交えて行った事例は、他の地域でも同じような方法で実施できる事例であり、フィールドワークも取り入れ京都府だけでなく滋賀県においても実践を積み上げ、気象災害が多発する日本において生徒とともに地域の人々が学習する先進事例となる可能性がある。研究協力校である京都府北部の高校、小中学校、高槻市の小学校においても研究協力者である教員と協議を行いながら児童生徒の探究活動と連携しつつ、研究活動を積み上げて新たな知見を生み出していきたいと考えている。
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Causes of Carryover |
2022年度の前半は、まだコロナ禍の影響が大きく、学校の教育活動は平常時に近い状態で行われるようになったが、打ち合わせなどがオンラインでの開催になったほか、まだ、野外での観察会などを開催するなど自由に制限なく活動することが十分にはできなかった。2022年度後半になり、多くの人が集合して観察会を開催することがようやくできるようになったが前半の活動が低調になったため全体としての調査研究活動が縮小してしまったことが予算を繰り越してしまう結果となった。人件費・謝金の支出などが少なくなった。 2023年度は、コロナ禍の活動制限が大きく緩和されるため、今後のシチズンサイエンスの研究を構築してきた様々なネットワークを活用しながら新たな可能性も探りながら研究活動を進めていく予定である。そのために、2022年度に使用しなかった研究費を活用し、研究知見を積み上げ、学会等におけるより多くの研究発表を行う予定である。 特に2023年3月の国際会議における外国の研究者とのネットワークの構築により、国際的な課題の共有を対面で行うことができたことは、今後の研究についての大きな弾みとなっており、国際会議での発表を目標として世界に発信できる研究を積み上げていく予定である。
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Remarks |
開始ページ83 終了ページ90
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Research Products
(6 results)