2022 Fiscal Year Research-status Report
大学の学費の論理・構造に関する研究:歴史・日米比較・社会的合意水準
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21K02652
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
白川 優治 千葉大学, 大学院国際学術研究院, 准教授 (50434254)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 学費水準 / 授業料 / 修学支援新制度 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、日本の大学における学生納付金(以下、学費)について、その論理と構造を実証的に明らかにすることと、学費の社会的合意水準を探究することを目的とするものである。コロナ禍の中で、大学の学費負担は社会的課題として再認識されたこと、また、2020年度より新たに開始された「高等教育の修学支援新制度」などの制度環境の変化も視野にいれつつ、大学における学費を学術的に探究することを目指している。本研究は、①日本の大学の学費がどのような経過で現在の価格水準や多様性(特に、私立大学における多様性)を持つに至ったのか、歴史的経過を明らかにすること(①歴史的研究)、②日本と同様に公立(州立)大学と私立大学が存在し、学費負担が社会的課題とされている米国を比較対象とし、その現状を把握し参照すること(②日米比較)、③コロナ禍の中で学費に対してどのような見解が表明されているのかを収集・整理・分析すること(③言説分析)、④①から③の研究成果をもとに学費のあり方に関する設問を作成し、一般市民を対象とする社会調査として質問紙調査を実施し、その社会的合意水準を探索すること(④社会調査)、を具体的内容としている。 2022年度は、コロナ禍が続く中での研究として、①歴史的研究を中心に取り組むこととし、その前提として、日本の大学の学費の現状把握に中心的に取り組んだ。具体的には、高等教育の修学支援新制度における機関公表資料(各機関の公表する「大学等における修学の支援に関する法律第7条第1項の確認に係る申請書」)を収集し、分析することで、修学支援新制度の受給状況と課題を明らかにした。また、大学・短大・専門学校の学校種をこえて、卒業後に同一の国家試験(看護師国家資格)の受験資格を得ることができる看護領域に着目し、その学費水準の分析を試みた。また、②日米比較として、米国の大学の学費に関する先行研究等の収集を進めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
当初計画では、2022年度は研究課題のうち、②日米比較に中心的に取組み、米国調査を行い資料収集や訪問調査を行う計画を立てていた。しかし、コロナ禍のなかでの研究計画の見直すこととし、文献収集による先行研究等の収集に留まった。また、①歴史的研究についても、修学支援新制度に関連する分析が中心となり、学費に関する歴史的経過を具体的に検証することまではできなかった。研究計画に沿った進捗はみられるが、当初計画どおりではないことから「遅れている」と判断している。
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Strategy for Future Research Activity |
2023年度は、引き続き、①歴史的研究に取り組むとともに、②日米比較のために、米国における大学の学費に関する動向情報の収集、③言説分析のために、コロナ禍の中で学費に対する見解の収集・整理・分析を進める。①歴史的研究では、国立大学については「文部省年報」や国会議事録等の資料を用い、私立大学は各大学の大学史等の資料を用いて、大学の学費の歴史的経過の把握に努める。②日米比較では、特に、米国のコロナ禍での学費に関する訴訟動向や物価上昇の影響を把握する。③言説分析では、2020年のコロナ禍以降の学生の有志団体等の主張やSNS等での学費をめぐる様々な見解、雑誌記事・新聞記事等の関連記事を収集するとともに、各大学・大学団体の公的見解を収集することで、異なる立場からの近年の学費に対する見解を整理する。2022年度以降の、物価上昇の影響をどのようにとらえるかなど、社会変動が学費・授業料に与える影響も視野に入れて考察する。
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Causes of Carryover |
2022年度の研究では、2020年度より開始された高等教育の修学支援新制度における機関公表資料(各機関の公表する「大学等における修学の支援に関する法律第7条第1項の確認に係る申請書」)の収集・分析を中心的な作業として取り組んだ。この資料はオンライン上での公表資料のため、直接的な経費がかからなかった。また、当初予定していた米国調査についてコロナ禍のなかで2022年度の実施を見送ることとしたことから、繰越金が多く生じた。
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Research Products
(2 results)