2022 Fiscal Year Research-status Report
英語の基礎学力を担保する総合試験の研究―大学入学者選抜改革を目的として
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21K02658
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
吉田 健三 神戸大学, アドミッションセンター, 入学試験コーディネーター (20790728)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 総合型選抜 / テストの妥当性・信頼性 / 基礎学力の担保 / 早期受験 |
Outline of Annual Research Achievements |
令和3年度「志」特別選抜における英語力評価を主とする総合試験に類似したサンプル問題(A、B)を活用し、2021年度と同じ方法で2022年度に2回目の模擬試験を実施した。2022年度の研究協力者は、89名(文系53名、理系36名)であった[2021年度:97名(文系50名、理系47名)]。各年度のデータ、複数年度の合体データを多元的に分析し、次の(1)~(6)が確認された。(1)テスト間の相関分析、因子分析により、A・Bの出題構成の同質性の高さが確認された。(2)各設問の正解率と合計点との相関分析によって、サンプル問題Aの3題で相関がみられなかったが、全般的に各設問が受験者の能力を弁別する識別力があることが示唆された。(3)各設問正解率と合計点分布の分析によって、測りたい能力が設問で測られている場合と不十分な場合の原因が具体的に示された。(4)信頼性の分析では、クロンバックのα係数を算出し、項目数が少ないA、Bでは期待される数値には至らなかったが、 A・B合体では0.728を示し、信頼性を有することが示唆された。(5)アンケート調査の回答分析では、内容に対する[興味]は、総じて高かった。[難易度]は、Aでは「適切」、Bでは「やや高い」が多く、[量]は、2つの大問で「適切」、3つの大問で「やや多い」が多く、テストの平均点の差と同傾向がみられた。[意図]は、「そう思う」「ややそう思う」の合計値より、設問を通してどのような能力を測ろうとするかという意図への理解が示された。[ヒント]は、得点が高い受験者ほど解答する際の明示的・暗示的なヒントが理解できていた。以上により、基礎学力の担保や早期実施に対する配慮に関して肯定的な回答が得られた。(6)サンプル問題と「志」総合試験との同質性について、語彙レベルと可読性の観点から分析を試みたが、十分な知見を得て分析を深める必要が再確認された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画調書の計画とは異なり、2021年度のサンプル問題を活用したが、その理由は次の通りである。(1)研究初年度の分析において構成概念妥当性、信頼性が示唆され、基礎学力の担保や早期受験への配慮の適切さに関して肯定的な回答を得ることができた。(2)2年度分のデータを用いることによって検証の精度が高まると判断した。また、新型コロナウイルス感染症の拡大の状況を考慮して、当初の研究実施方法の変更を余儀なくされ、2021年度と同様の方法で実施した。科研費申請時では、総合試験およびアンケート調査は試験会場において一斉に行う計画であったが、郵送やメールによってデータを入手する方法を用いた。分析においては、サンプル問題(文系型A、理系型B)の得点、大学入学共通テスト、英語民間試験(TOEIC L&R IP, TOEFL ITP)の得点・スコア、およびアンケート調査の回答を統計的に分析し、テストの構成概念妥当性、信頼性、意図した学力の差異を弁別する識別力、基礎学力の担保や早期受験への配慮の適切さを検証することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
研究計画調書では新たにサンプル問題を作成する計画であったが、2年間の模擬試験の分析を通して、構成概念妥当性、信頼性、意図した学力の差異を弁別する識別力、基礎学力の担保や早期受験への配慮の適切さを検証することができたため、今年度は、サンプル問題と「志」総合試験で活用した英文の多元的な分析に焦点を当てる。次の2点を最終年度の研究課題として推進したい。(1)語彙レベルの同質性に関して、検定手法や入力データが適切であるかを検証する。(2)可読性において、Coh-Metrixを用いた分析法を研究し、そこから得られたデータと、Flesch-Kincaid Grade Levelなどの公式により示されたデータを比較し、可読性の分析を深める。本研究の研究協力者から得られた貴重なデータや本研究で活用した英文が、学内外の今後の入学者選抜の検討に資するよう研究成果をまとめたいと考えている。また,他大学における入学者選抜試験の出題検討にも資するため,大学入試センター主催による全国大学入学者選抜研究連絡協議会(第18回)において研究成果を発表する予定である。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染症拡大の影響で、当初の計画を変更せざるを得なくなった。人件費、学会等への出張旅費が計画よりも少なくなったことが主な要因である。今年度は、2021年度、2022年度に入手したデータを分析するためのディスプレイの大きい16型PCを購入し、繰越額をその費用の一部に充当する予定である。
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Research Products
(2 results)