2022 Fiscal Year Research-status Report
ろう重複障害児における手話を主とするコミュニケーションの形成と促進に関する研究
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21K02679
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Research Institution | Miyagi University of Education |
Principal Investigator |
松崎 丈 宮城教育大学, 教育学部, 教授 (50400479)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | ろう重複障害 / 教育実践 / 手話 / コンサルテーション / 専門性 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、ろう重複障害児との手話を主とするコミュニケーションを検討することで、ろう重複障害教育に関する教員支援・研修のコンテンツ開発やコンサルテーションの進め方に関する基礎資料を収集することを目的としている。当該年度は、次のように2つの研究を実施した。 1つ目は、2021年度に行った聴覚支援学校重複障害学級の教育実践に関する実態調査について、20年以上ろう重複障害教育の実践経験を有する教員3名にインタビュー調査の分析結果をまとめた査読付き論文が掲載された。具体的にはインタビューデータを質的に分析し、8件の概念的カテゴリー(ろう重複障害教育の孤立無援化、長期化している構造的な諸問題、ろう重複障害教育担当教員同士で同僚性を形成、家族と協働でろう重複障害児のキャリア教育を考える、コミュニケーションの実践的見識の蓄積、専門家が導入するオンサイト研修、ろう重複障害児とのコミュニケーション実践の質的向上、同僚性に基づいた研修や環境の変革)が生成された。これら概念的カテゴリー同士の関係の考察から、聴覚支援学校における今後のろう重複障害教育に向けて個々の教員および教員組織が専門性を形成・共有するための具体的な対応指針を抽出できた。 2つ目は、ろう重複障害教育実践の視点や手立てに関する心理学的実践研究として、2020年度から聴覚支援学校でろう重複障害児への教育実践をしている教員との協働でアクション・リサーチ及びコンサルテーションの手法を用いた実践研究を継続している。当該年度も2020年度で対象としたろう重複障害児の事例を継続実施でき、縦断的な観察及びコンサルテーションによる事例の変化に関するデータを収集している。1つ目の論文とは別にこのコンサルテーションによる1事例の変化の分析および教育実践の視点や手立ての抽出をまとめた査読付き論文を投稿し、掲載された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究課題について、手話を主に用いるろう重複障害教育実践の現状と課題に関する調査研究について、ろう重複障害教育担当教員へのインタビュー調査・分析を行い、論文にまとめて雑誌に掲載された。その調査・分析の結果は、聴覚支援学校におけるろう重複障害教育の現状と課題を教育現場の視点から詳細に明らかにしたものである。従来、ろう重複障害教育とは聴覚障害領域とそれ以外の障害領域を掛け合わせたようなものとして語られがちであったが、20年以上の経験を有する教員の実践的経験からそれだけでは足りず、コミュニケーションの視点で子どもを理解し、必要な教育的対応を考案していくといった新たな専門性が求められるという明確かつ具体的な知見を得ることができた。当初の研究計画で想定していたものを上回る成果であったと考える。 また、2年目の研究計画を前倒しで行っているろう重複障害教育実践の心理学的実践研究についても、本研究に協力している聴覚支援学校2校のいずれも、ろう重複障害担当教員が積極的に本研究のコンサルテーションに参加しているおかげで、手話を主とするコミュニケーションの形成・展開への教育支援を考える多角的な視点と手立ての抽出につながるエピソード群を確実に収集することができている。そのうち1つの事例はすでに成果が見られたため、論文にまとめてコンサルテーションの進め方に関する基礎資料として発表した。本来これは2022年度に発表する予定であったが、これも当初の研究計画よりも早く進めることが可能になっていると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
令和5年度は、次の通り研究を進めていく。 1つは、2021年度に発表した査読付き論文2件の内容とあわせて、当初の研究計画にある「手話を主とするコミュニケーションの形成や展開に関する教育的な視点と方法の体系化を試み、教育現場で実用可能な形にまとめて成果を発表すること」を行う。具体的には、学校教員およびろう重複障害児を持つ家族が読めるような冊子という形にまとめ、発表・配布することを考えている。また、この冊子は、教員養成大学におけるろう重複障害教員養成のテキストとしても活用し、その成果を検証することも考えている。ただし冊子としてまとめるにあたって、重度重複障害教育における理論体系も踏まえておく必要があるため、長年重度重複障害教育の研究および実践の実績に基づいて学校教員研修及び家族支援を実施してきた専門家のチェックや助言指導のもとで進めていく必要があると考えている。 もう1つは、1年目に前倒しで開始したA校とB校における心理学的実践研究の実施は令和5年度も継続可能であることを確認できたため、両校とも年2~3回訪問して、アクション・リサーチおよびコンサルテーションによる手法で行いながら本研究のテーマに関連するエピソード群を収集・分析するとともに、ろう重複障害児とのコミュニケーョンの形成と展開を目指すためにどのような視点や手立てが求められるのか、といったろう重複障害教育の方法論的な探求を行う。A校とB校のろう重複障害教育の現場でその方法論を検証し、その成果は、1つ目の冊子で発表する。
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Causes of Carryover |
研究対象校には年2~3回の頻度で訪問し、データ収集を行う計画であったが、コロナ感染拡大の関係で研究対象校からの希望により年度途中で訪問回数を1回分減らすことが生じたためである。
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Research Products
(2 results)