2023 Fiscal Year Research-status Report
自閉症スペクトラム障害児の反復的行動は支援場面で「適応的機能」を有するか?
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21K02685
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Research Institution | Nara Women's University |
Principal Investigator |
狗巻 修司 奈良女子大学, 人文科学系, 准教授 (30708540)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 自閉症スペクトラム障害 / 反復的行動 / 自傷行動 / 常同行動 / 相互交渉 / 共同注意 |
Outline of Annual Research Achievements |
自閉症スペクトラム障害(ASD)児にみられる「反復的行動」と対人相互交渉における質的障害との関連を検討するため,2023年度は,1)関連する先行研究のレビュー,2)児童発達支援センターにおける療育場面の観察とデータ整理・分析,3)奈良女子大学大学院附属心理・教育相談室でのASD児への支援場面の観察・分析の3点を引き続き実施した。 先行研究のレビューでは,自傷行動と常同行動を中心としたASD児にみられる反復的行動について,先行研究の到達点と研究課題について整理した。とりわけ,近年の研究から,1)ASD児が示す自傷行動が不安の高さや情動調整の困難さと関連すること,2)反復的行動と情動調整の困難さが,ASD児者の社会的コミュニケーション機能の発達を阻害する要因となることの2点を見出すことができた。一方で,これらの研究はASD児の養育者や教師などの支援者を対象とした質問紙による検討が中心であり,反復的行動と対人相互交渉場面での行動の発達的関連について,ASD児の行動観察による検討が十分に行われておらず今後の研究課題として指摘されていることも明らかとなった。 また,2023年度は療育場面などでの行動観察も継続して実施し,1)ASD児が示す反復的行動の変容過程,2)共同注意を中心とした対人相互交渉場面での行動の発達的変化,3)反復的行動と対人相互交渉場面での行動の発達的関連の3点を中心にデータの整理と分析も実施した。分析の途中であるものの,現時点では,自傷行動には①前後の文脈とは無関係な自己刺激的理由で産出される自傷行動,②相手のはたらきかけを拒否するために産出される自傷行動,③自らの要求を伝達するために産出される自傷行動が存在し,これら3つの自傷行動は対人相互交渉場面での行動の発達と関連する可能性があることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
療育場面などの観察も中断することなく実施できており,観察データの整理と分析も順調であるため
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Strategy for Future Research Activity |
反復的行動についての先行研究のレビューを引き続き実施していくとともに,療育場面での観察を継続しつつデータの分析を進めていく予定である。とくに,これまで継続して観察してきたASD児を対象として,自傷行動と常同行動の変容過程と,共同注意を中心とした対人相互交渉場面での行動の発達的変化との関連について検討してくことを予定している。
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Causes of Carryover |
予定の重複等があり,参加を予定していた学会等に参加することができなかったため,旅費が計画通り支出できなかった。次年度以降の使用計画としては,データ整理・分析の人件費,および,ビデオカメラやデータ分析作業用PCの購入を計画している。
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