2021 Fiscal Year Research-status Report
保育における障害の可能性のある外国人幼児の早期把握と支援に関する研究
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21K02716
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Research Institution | Tokyo Kasei University |
Principal Investigator |
野澤 純子 東京家政大学, 子ども学部, 教授 (20451693)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
石田 祥代 千葉大学, 教育学部, 教授 (30337852)
藤後 悦子 東京未来大学, こども心理学部, 教授 (40460307)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 発達障害のある外国人幼児 / 早期把握 / 就学移行支援 / インクルーシブ保育 |
Outline of Annual Research Achievements |
発達障害の可能性のある外国人幼児の早期の把握と支援の基礎的研究として、調査および文献研究を行った。調査では、保育上発達が気になる外国人幼児の早期発見と支援、および保護者支援の実態を明らかにするために、発達が気になる外国人幼児への保育経験のある現職保育者(100名)を対象にweb調査を実施した。結果、療育利用が35件あり、うち14件は、園からの紹介により専門機関や医療機関につながっていた。一方療育につながらない65件の主な理由として、心配しているが紹介していない(35件)や紹介したがつながらなかった(17 件)があった。保育者が外国人幼児の様子から、発達の遅れや偏りの可能性を見極める際、日本人に比べて判断が困難な事項(26項目)を質問したところ、最多が言語に関すること(表出・理解・構音)、次いで人とのかかわりやルールなど社会性に関すること、家庭の様子から判断することの困難、であった。一方、視線の合いにくさ、多動・衝動性、感覚の特異性、注意の問題などは半数以上の保育者が日本人同様に判断できると回答した。また、保育上発達が気になる外国人幼児の保護者対応で困ること(6項目、4件法)では、全項目において困る(非常に~困る)の回答が70%以上となった。気になる点の説明(82%)が最も多く、次いで家庭の様子の聞き取り(80%)、専門機関の理解(79%)と続いた。さらに集住地域と散在地域、支援システムの点から分析した。 文献研究では、文化的・言語的に多様な背景をもつ(以下CLD)障害幼児とその家族に対する早期支援について海外文献を対象に知見を整理した。結果、「特別な教育的支援へのアクセスの難しさ」、「CLD家族の支援制度の理解不足」、「CLD家族に関する専門家の知識不足」の3つの共通課題が抽出された。以上の結果を次年度の研究の基礎的データとした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
新型コロナウイルスの再拡大により、一部の研究が実施できなかった。具体的には、保育者、関連機関職員との面接調査、外国人幼児を受け入れている保育機関等における実施調査を実施することが困難となった。(今年度研究計画中の、①地域特性別の実態に基づく早期把握における阻害要因の同定のうちの面接調査、②先進的地域における支援要素分析に基づく促進要因の同定の実地調査)。 これらの実施困難となった調査について、研究分担者、および研究協力者、研究協力機関と協議し、次年度に延期することとなった。
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Strategy for Future Research Activity |
1.初年度実施困難のため延期となった発達障害の可能性のある外国人幼児の早期の把握と支援における阻害/促進要因の同定ための研究の一部、①地域特性別の実態に基づく早期把握における阻害要因の同定の面接調査、②先進的地域における支援要素分析に基づく促進要因の同定の実地調査を行う。面接では、半構造化面接により、保育者・関係者を対象に、気づき・家庭状況把握・連携・支援上の困難を多変量解析、テキストマイニングにより分析する。その上で、発達障害の可能性のある外国人幼児の早期の把握と支援における阻害/促進要因を同定し、地域特性、多様性の別に分析した図表、成功要因の表とネットワーク図を呈示する。 2.円滑な就学移行の阻害/促進要因の同定を目的に、質問紙調査と面接調査を行う。調査内容と分析は、気づき・家庭状況把握・連携・支援上の困難を多変量解析、テキストマイニングにより分析する。 実地調査では、国内外国人集住/散在各3地域の事例、国外インクルーシブ先進国の散在地域の事例を調査しまとめる。調査内容と分析は、就学前支援・多職種連携の実態、移行ツールとしての要録・支援シート活用実態、家庭支援を多変量解析、エピソード分析し、阻害/促進要因を抽出する。結果から、支援方略を集住/散在地域、子どもの特性、施策から類型化した図表を呈示する。 なお、初年度同様に新型コロナウイルス拡大による対面での面談調査等が困難な場合には、オンライン面談調査に変更するなどの工夫をし、研究の着実な遂行に努める。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルスの再拡大により、研究計画上の実施予定であった、保育所保育士、幼稚園教諭、こども園保育者、および関連諸機関教職員への対面での面接調査および、外国人幼児を受け入れている保育所、幼稚園、こども園、小学校等への実地調査が実施できなかった。これらの研究実施に必要であった、調査対象者への謝金、調査旅費、その他調査諸費用、データ入力・分析用機器代金が未使用となり、次年度使用額が生じた。次年度使用金は、延期した研究実施のために使用する。 2022年度は当初計画の当該年度予算の使用に加え、延期した研究を実施するため、調査謝金、旅費、その他調査諸費用(印刷代金、通信費等)、データ入力・分析用機器購入をすることとなっている。
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