2021 Fiscal Year Research-status Report
グローバル化時代における視覚特別支援教育と日本語教育の有機的連携に向けた基盤構築
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21K02727
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Research Institution | Nippon Institute of Technology |
Principal Investigator |
河住 有希子 日本工業大学, 共通教育学群, 准教授 (10605372)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
藤田 恵 立教大学, 日本語教育センター, 特任准教授 (80606070)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 特別支援教育と日本語教育の連携 / 視覚障害 / 点字 / 日本語学習 / JLS児童生徒 / 点字による日本語学習教材 |
Outline of Annual Research Achievements |
特別支援教育教員と日本語教員の連携によるJSL児童生徒への日本語教育の基盤構築という目的に向けて、2021年度は(1)教育連携に向けたケーススタディ、(2)JSL児童生徒受け入れの現況調査を計画した。 (1)の教育連携に向けたケーススタディでは、2021年度は視覚特別支援学校での日本語教育の実践を通して、視覚に障害がある日本語学習者の学習スタイルや学びの進捗を観察するとともに、特別支援教育教員との連絡、相談を密にすることによる相互理解の深化、連携の可能性の模索を進めた。特別支援教育教員に詳細な授業報告、学習者の状況の報告を継続的に行うことにより、「日本語の授業」で何を指導しているかを伝えつつ、特別支援学校の教科教育における躓きの原因の一端が日本語力にある可能性を共有し、教科教育に日本語教育の要素を取り入れる方法を検討した。2021年度は、特別支援教育教員と日本語教員の連携により文字の指導(日本語の点字五十音および教科学習に頻出の記号類の読み書き)を強化することで、学習にポジティブな影響が生まれる可能性が見出された。 (2)のJSL児童生徒受け入れの現況調査では、調査の事前準備として、視覚に障害がある日本語学習者からの相談対応に多くの実績をもつ国際視覚障害者援護協会(IAVI)との連携体制を構築した。今後、同協会と全国の盲学校、視覚特別支援学校とのネットワークを通して、視覚に障害があるJLS児童生徒の受け入れ状況調査を行う。また、2020年度以前の研究成果として作成した視覚に障害がある日本語学習者のための日本語授業支援ハンドブックの普及を、同協会とともに進める計画を立てた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2021年度はCOVID-19の影響により対面での調査に制約が生じた。そのため日本国内の視覚特別支援学校におけるJLS児童生徒の受け入れ現況調査は、調査協力依頼先のリスト作成と、依頼方法の計画の段階で一時的に中断している。今後の状況の変化に応じて、可能な方法を検討し、調査を開始する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度研究計画の遅れについては、2022年度は、対面での調査にこだわらず、書面およびオンラインによる方法も併用し、視覚特別支援学校におけるJSL児童生徒の受け入れ現況調査を行う。調査協力者には点字ユーザーも多く含まれることから、書面の準備の仕方やオンラインでのコミュニケーションの方法に留意し、適切なデータ収集に努める。 2022年度は、視覚特別支援教育と日本語教育の教育連携に向けたケーススタディをさらに進めることを計画している。当初は、2021年度の授業実践の総括を踏まえて新たに計画した授業の実践を検討していた。しかしながら、COVID-19やその他の社会情勢の影響により、授業実践を予定していた学校への留学生の新規入学がなく、日本語クラスが開講されないこととなった。そのため、計画を一部変更し、調査対象を元留学生、日本語学習経験者にまで広げることを検討している。 なお、2021年度中に国際視覚障害者援護協会との連携体制の構築が進み、支援者側のネットワークを広げることができた。そのため2023年度以降の計画に早めに着手し、視覚特別支援教育関係者とともに、過去の日本語クラスのデータに基づく振り返りを行い、教員間の連携の在り方を確立することにも重点をおく予定である。
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Causes of Carryover |
COVID-19により、国内外の学会が中止あるいはオンライン開催となり、学会大会参加費および旅費の支出がなかったこと、調査依頼先の入校制限等により、対面での調査を見送ったことにより調査用資材の点点訳・印刷・通信費および調査協力謝金の支出がなかったことから、次年度使用額が生じた。 次年度は調査研究や成果発表を書面、電話、オンラインでも遂行することができるよう、デジタル端末とwi-fi環境の整備、電話通信費、点字文書作成(専門家による点訳、校正を含む)に使用する。また、研究分担者、研究協力者との研究データ共有や打ち合わせもオンライン環境を活用することが望ましいと考えられるため、それらの整備にも使用する。
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