2021 Fiscal Year Research-status Report
Development of STEAM education program through the integration of traditional crafts and digital fabrication
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21K02761
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Research Institution | Kyushu Sangyo University |
Principal Investigator |
佐藤 慈 九州産業大学, 芸術学部, 教授 (90412460)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
青木 幹太 九州産業大学, 芸術学部, 教授 (70159276)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | STEAM教育 / デジタルファブリケーション / 3Dプリンター / 伝統工芸品 / 博多張子 / 教科横断的な教育 |
Outline of Annual Research Achievements |
博多伝統職の会(事務局:福岡市)所属の博多張子職人と連携し、伝統工芸とデジタルファブリケーションを統合的に学習できるSTEAM教育コンテンツの開発を目的として、3DCADソフトウェアと3Dプリンターを使った博多張子の制作手法を検討した。具体的には、通常、粘土や木で作成される博多張子の型を、Webブラウザ上で操作できる3DCADソフトウェア「Tinkercad」を用いてモデリングし、熱溶解積層方式の3Dプリンターで出力したものに置き換える手法について検討した。検討の結果、3Dプリンターで出力した型を活用できることが確認でき、造形材料には、熱収縮が小さく、安定したプリントが可能なPLAが適していること、乾燥した和紙を型から外す工程があることから、モデリングの際に抜き勾配を考慮する必要があることなどが分かった。 制作手法の検討結果に基づき、教育コンテンツの開発に向けたワークショップを計画し、2022年2月20、23、26日に福岡市科学館で実施した。コロナウイルス感染拡大防止の観点から、参加人数を、教室の広さに合わせて13名に制限した。参加者はすべて小学生であり、3年生4名、4年生5名、5年生2名、6年生2名であった。1回目は、博多張子の説明、3Dプリンターの説明およびデモンストレーション、3DCADソフトウェアによる型のモデリング、2回目は、3Dプリントした型への和紙張り、3回目は型出しと絵付けを行った。ワークショップ終了後に、参加者を対象としたアンケートを実施し、実施内容の評価を行った。アンケートの結果、「Tinkercad」の操作を難しく感じている子どもは少なく、モデリングに関しては、ある程度高度な内容に修正しても問題ないことが分かった。また、ワークショップのスタッフによる振り返りミーティングを開催し、次年度以降の活動において検討すべき事項を明確にした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
デジタルファブリケーションを活用した張子制作手法の検討については、博多張子職人と連携し、当初の計画通りに実施することができた。検討の結果、伝統的手法とデジタルファブリケーションを融合させた新たな手法を考案することができた。また、小学校における授業実施に向けた、ソフトウェア、および機材、道具、材料の選定についても検討を行うことができた。3DCADソフトウェアについては、小学校での使用を前提として、無料かつWebブラウザ上で簡単に操作が可能な「Tinkercad」が適していることが確認できた。ただし、クラウドベースのアプリケーションであることから、実際に小学校で授業を実施する場合には、インターネット環境を準備する必要がある。また、3Dプリンターで出力された型が、博多張子の制作に問題なく活用できることも分かった。制作するモチーフについては、カッターを使わずに制作することができるお面を選択し、実施したワークショップにおいて、子どもたちが問題なく制作に取り組む様子が確認できた。 令和3年度の計画では、パイロット授業を令和4年度に実施する予定であったが、福岡市経済観光文化局地域産業支援課および福岡市科学館の協力もあり、少人数のワークショップというかたちで、前倒しで実施することができた。 デジタルファブリケーションを活用したSTEAM教育および伝統的工芸品制作の事例調査については、コロナの影響が継続していたためフィールド調査が実施できなかったこと、また、先述のとおり、前倒しでワークショップ開催の機会を得たことから、ワークショップの準備および実施に多くの時間を割いたことから、令和4年度も引き続き調査を継続する必要がある。 また、2月に開催された福岡市の校長会(小学校、中学校、高校)において、授業内容をまとめた資料を配布し、小学校での授業実施に向けた準備を進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
福岡市内の小学校での授業実施に向けて、経済観光文化局地域産業支援課および博多伝統職の会と連携し、2022年5月に福岡市内の各学校への参加募集、6月に実施校決定、7~8月に実施校との打合わせ、および授業準備、9~12月に授業実施というスケジュールで研究を遂行する予定である。 また、2022年10~11月には、福岡市東区の複合施設「なみきスクエア」において、中学校、高校の生徒を対象としたワークショップの実施を計画している。ワークショップのテーマは、小学生を対象としたワークショップと同様に、3Dプリンターを用いた博多張子の制作であるが、デジタルファブリケーションについて、より高度な内容を取り入れた教育コンテンツの実施を計画している。ワークショップを通じて得られた知見を踏まえて、中学校あるいは高校での実施を想定した教科横断型の授業を計画し、令和5年度に福岡市内の中学校あるいは高校で実施することを目指している。 令和4年度に活動した成果は、2023年2月頃に福岡市内の商業施設で開催が予定されている大学主催の展示会において公開することを予定している。また、2022年6月に予定されている日本デザイン学会春季研究発表会において、令和3年度に実施した3Dプリンターを用いた博多張子ワークショップの活動内容とアンケート結果に基づいた評価について口頭発表する予定である さらに、授業およびワークショップの実施と並行して、STEAM教育およびデジタルファブリケーションを活用した伝統的工芸品制作の事例等についての調査も行い、得られた知見を実践に反映させる。また、昨年度のワークショップ後に開催された振り返りミーティングで挙げられた反省点についても検討を行い、授業の内容および方法を改善していく。特に、伝統文化をデジタル化する意義について考えさせる内容をどのように授業に組み込むべきかについて検討を行う。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由は、コロナの影響が継続していたため、デジタルファブリケーションを活用したSTEAM教育および伝統的工芸品制作の現地調査を控えたこと、また、県外での開催を見込んでいた学会の研究発表大会がオンライン開催になったことなどから、旅費として計上していた予算の一部が未使用となったことが挙げられる。また、小学校での使用をシミュレーションするために購入したノートPCが、想定よりも安価であったことも理由のひとつである。生じた次年度使用額は、今後の現地調査および学会発表の経費として使用するとともに、当初の計画に加えて実施することになった、中学校、高校の生徒を対象としたワークショップ、および、活動成果の公開を目的とした展示会に伴う費用としても、必要に応じて使用する予定である。
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Research Products
(3 results)