2023 Fiscal Year Research-status Report
Development of STEAM education program through the integration of traditional crafts and digital fabrication
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21K02761
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Research Institution | Kyushu Sangyo University |
Principal Investigator |
佐藤 慈 九州産業大学, 芸術学部, 教授 (90412460)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
青木 幹太 九州産業大学, 芸術学部, 教授 (70159276)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | STEAM教育 / デジタルファブリケーション / 伝統工芸品 |
Outline of Annual Research Achievements |
2023年度は、福岡市立博多工業高校の生徒を対象に、3Dスキャナー、3DCADおよび3Dプリンターを活用して博多張子のお面を制作するワークショップをパイロット授業として実施した。前年度に実施した小学校の授業よりも高度な内容とするため、3Dスキャナーを使って参加者の顔をスキャンしたデータを博多張子の型のベースとし、既存の3DCGパーツを活用しながら、オリジナルのお面をデザインさせる内容とした。また、地域の伝統文化である博多張子を、現代文化に接続することを意図し、ハロウィンの仮装で用いることを想定したお面の制作をテーマとした。 ワークショップの配当時間は、前年度の授業で得た経験を踏まえて、2時間×4回、全8時間とした。1回目は、博多張子職人による博多張子の講義と、顔の3Dスキャンの実習、2回目は、3Dプリンターの仕組みを中心としたデジタルファブリケーションについての講義、およびWebブラウザで操作ができるTINKERCADを用いた型のモデリング、3回目は、博多張子職人の指導の下、3Dプリンターで出力した型に和紙を張り重ねていく作業、4回目は、乾燥した和紙をヘラで型から外し、絵付けを行った。ワークショップを通じて、デジタルファブリケーションの特徴を活かしたユニークなお面が多く制作された。 授業後に、ARCSモデルに基づいたアンケートを実施した。その結果、注意、関連性、自信、満足度のすべてのカテゴリーにおいて4.5以上と高い点が得られた。このことから、今回のワークショップが、学習者の動機付けの観点においては有効な内容であることが示唆された。 活動の成果は、2023年11月に九州産業大学・大楠アリーナにおいて開催された展示会「KSU VISION DAY 文×理×芸 =展」において公開した。また、昨年度の成果は、第69回日本デザイン学会春季研究発表会において口頭発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
小学生を対象としたワークショップ、中高生を対象としたワークショップ、小学校の「総合的な学習の時間」における授業、および高校におけるワークショップ(パイロット授業)と計4回の実践を行い、授業計画および教材開発に向けて、多くの知見を得ることができた。また、実践ごとにアンケートを実施し、学習者の動機付けの観点においては有効な内容であることが確認できた。ただ、より学校教育に導入しやすい教材に仕上げるためには、さらなる改良が必要だと判断し、研究期間を一年延長することにした。具体的には、教員が3Dプリンターや3DCADソフトウェアを指導するための資料、および、郷土の文化や歴史を深く学ぶためのスライド、テキスト、ワークシートの作成などが挙げられる。 教員に対するアンケート結果や、ワークショップや授業時の調査から、デジタルファブリケーションを活用した教育への関心が高いことが分かった。小学校においては、一人一台タブレット端末が配布されており、授業のさまざまな場面で活用されているようであるが、デジタルファブリケーションをテーマした授業はあまり行われていないようであり、本研究の必要性を感じた。「総合的な学習の時間」において、地域の伝統工芸品を学ぶ授業がすでに行われていることから、伝統工芸品とデジタルファブリケーションを融合した教育コンテンツを開発することができれば、新しいテクノロジーに触れながら、既存の学びをより深められる授業の実現が期待される。開発中のSTEAM教育教材を学校教育に導入できるようにするためには、学習指導要領に基づきながら、教科横断的な視点で教育の目標を明確にし、教育内容や教材を目標に合わせて調整していく必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
福岡市立博多工業高校で実施したデジタルファブリケーションを活用した博多張子制作ワークショップの成果と、ARCSモデルに基づいて実施したアンケートの結果をまとめ、2024年6月に予定されている日本デザイン学会春季研究発表会において口頭発表を行う。 これまでの実践で得られた知見や、先述の学会で得られた意見等を踏まえて、次世代のものづくり技術を学びながら、郷土の伝統文化について考えることのできるSTEAM教育教材を作成する。STEAM教育教材の対象は小学生であり、特に4年生の「総合的な学習の時間」での活用を想定し、これまでに開発した授業内容や教材をベースとして、学習指導要領に基づいて教育目標、指導計画、実施形態等を明確にしていく。作成したSTEAM教育教材は、連携先である福岡市地域産業支援課を通じて、学校教育関係団体に提供する。 最終的に、実施したワークショップや授業で得られた成果やアンケート結果、および開発したSTEAM教育教材の内容を論文にまとめ、STEAM教育の参考事例として情報を広く提供する。
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Causes of Carryover |
高校のICT環境が整っていたため、想定よりもワークショップに費用がかからなかったため、計上していた予算が未使用となり、次年度使用額が生じた。また、学校教育に導入しやすい教材に仕上げることを目的に、研究期間を一年延長することにしたため、教材作成に必要な予算を確保したことも理由である。生じた次年度使用額は、STEAM教育教材の作成、学会発表の経費、および、研究成果の公開に伴う費用として使用する予定である。
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Remarks |
(1)は博多工業高校で実施した「博多張子×STEAM教育プログラム」の紹介ページ。
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Research Products
(3 results)