2021 Fiscal Year Research-status Report
Development and practice of educational programs to learn about "Mirage", according to the developmental stages of children
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21K02766
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Research Institution | Natural History Museum and Institute, Chiba |
Principal Investigator |
大木 淳一 千葉県立中央博物館, その他部局等, 研究員(移行) (90280750)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 蜃気楼 / 総合的な学習の時間 / ICT教育 / 身近な自然現象 / 九十九里 |
Outline of Annual Research Achievements |
申請者の今までの研究によって、千葉県九十九里浜地域が日本を代表する珍しい蜃気楼の観測地であることが明らかとなった。この地域の魅力である蜃気楼を教材としてこども園、小学校、中学校において授業に取り入れることで、身近な自然現象に興味を抱くきっかけ作りを、今年度は九十九里町の学校を対象に実施した。 こども園では5才児クラス対象に1時間授業を実施し、身近な蜃気楼として「逃げ水」を観察したことで、自宅へ帰っても保護者へ話すほど印象的な体験として位置づけることができた。小学校では第6学年対象に総合的な学習の時間を活用して、1年間、長期的に取り組むこととした。その結果、珍しい蜃気楼を観測できなかったものの、身近な蜃気楼を道路と海岸で観測でき貴重な体験学習を専門家である申請者と実施できた。また、年度末には蜃気楼について1年間かけて調べたことを、テーマ毎に班分け、動画として保護者限定で情報発信することができた。中学校では第1学年理科の「光の屈折」の学習のまとめとして、2時間かけて蜃気楼を水槽実験などを通して学習した。小学校と中学校では一人一台タブレット端末が配付されているため、学習の記録、調べ学習や発表作業で活用し、ICT教育により教育効果をさらに上げることができた。 また、気象観測装置を活用した上位蜃気楼の発生条件を解明するべく、冬季の気象観測を行った結果、地上3mと15mで1.5度から4.2度ほど上空の方が気温が高いと上位蜃気楼を観測できることが明らかになってきた。その結果を小学校の学習でも活用し、発表用のデータにも引用することで最新の研究成果を学ぶことができ、子ども達の自信に繋がった。 蜃気楼の映像資料として、北海道道東地域の蜃気楼の映像を記録することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
こども園、小学校、中学校で蜃気楼に関わる授業を今年度は実施することができた。こども園は1時間授業に逃げ水観察と変形太陽の話をしたが、①野外で逃げ水を観察するプログラムと②水槽で蜃気楼を再現する実験と変形太陽の写真を比較する、2つの授業に分けた方が園児の理解が深まるとの指摘をこども園のスタッフから受けたので、次年度はプログラムの見直しを図りたい。小学校においては第6学年の総合的な学習の時間において、年間70時間のうち47時間(31日)を活用して蜃気楼について学習した。教育効果は高かったものの、申請者が31日中、20日間教育アドバイザーとして参加したため、かなり手厚い授業となった。今後、専門家が関わる日数を減らしつつ、学習効果が高まるプログラムやスケジュールを立てる必要がある。中学校においては学習指導要領との兼ね合いで、事前学習と専門家が関わる2時間を実施するのが限界であることを現場の教師から伺うことができた。その制約の中でどうすると教育効果が高まるのか、ICTの活用を再度見直しながらプログラムをブラッシュアップする必要性が見い出せた。 上位蜃気楼の発生メカニズムについて、夜間を中心に観測できる冬季については、地上15m以下の温度構造の逆転現象を気象観測装置から読み取ることができた。今後、昼に上位蜃気楼が発生する春から夏にかけた温度構造の解明を行う必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
今後もこども園、小学校、中学校において授業を実施し、子ども達の各発達段階における学習プログラムのブラッシュアップを目指す。特に、小学校、中学校では一人一台タブレット端末が配付されているため、ICT教育による学習の向上を目指す。さらに、今までの成果から、専門家が立ち会わなくても教師が授業で活用できる映像資料の制作、学習指導案を作成し、インターネットなどで公開する必要がある。 映像資料については今後も全国の上位蜃気楼観測地に赴き、映像を記録し教材化に向けた資料を収集する。 また、小学校の授業を地元の高校が見学に来た際、「郷土の自然を知る」という高校独自に取り組むプログラムがあり、講演を依頼された。本研究課題の更なる発展型である「高校生」に対してどのようなアプローチで蜃気楼に興味を持たせるか、現場スタッフと協議しながらプログラム開発を行いたい。 さらに気象観測装置を設置したことで、年間を通した上位蜃気楼発生時の鉛直方向の温度構造を解明できる可能性が高まった。この成果を授業に取り入れるプログラムを模索し、蜃気楼発生予報など地域から世界へ情報発信できるようなユニークな活動へ繋がる仕掛けを考える必要がある。
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Causes of Carryover |
今年度はコロナ禍であったため感染拡大防止の都合上、蜃気楼の映像記録を目的とする野外調査(富山県魚津市、千葉県館山市等)を予定どおり実施できなかった。そのため、次年度使用額が生じた。翌年度は北海道石狩湾や琵琶湖周辺地域だけでなく、今年度予定していた地域、特に富山県魚津市に蜃気楼発生確率が40%を超える高確率の日に何回かに分けて出張し、上位蜃気楼の映像を記録する予定である。
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