2023 Fiscal Year Annual Research Report
理論と経験に基づく批判的思考力育成のためのビデオと自他レポート吟味による授業設計
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21K02781
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
仲林 清 熊本大学, 大学院社会文化科学教育部, 客員教授 (20462765)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田中 孝治 金沢工業大学, 情報フロンティア学部, 准教授 (60583672)
池田 満 北陸先端科学技術大学院大学, 先端科学技術研究科, 教授 (80212786)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 批判的思考 / インフュージョンアプローチ / 既有知識 / ドキュメンタリービデオ / 自他レポート吟味 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は,講義型の多人数授業で大学生の批判的思考(クリティカルシンキング)を促進するための授業設計である.「特定科目の中で批判的思考を明示的に教えるインフュージョンアプローチ」に近い形態を採る.学習者の経験が想定される問題領域(例えばリーダシップ)の知識体系を説明し,具体事例のビデオを視聴させ,批判的思考を説明する介入を行ったうえで分析レポートを提出させる.次回授業で全員のレポートを配布し,自他の考えを比較・吟味させる.この過程を通じて,ビデオの内容を「知識体系に従って論理的に」,「真正な文脈での目標志向的思考」で分析し「自他の思考過程を吟味・内省」する,という批判的思考を促す. 2023年度は,前年度に行った授業実践の結果を分析・論文化し,査読付き論文として採録された.内容は本研究の授業設計に則ったオンデマンド講義に関するもので「企業のビジネスモデル」を対象問題領域として取り上げた.具体的には,JR東日本のSuicaを扱ったドキュメンタリービデオを用い,Suicaの開発・普及過程をネットワーク外部性という経済学の理論から分析させるレポートを課した.次回授業で全員のレポートを配布し,自他の考えを比較・吟味させたうえで,再度レポートを作成させた. 批判的思考を説明する介入を行った場合と行わなかった場合を比較したところ,「知識体系に従った論理的思考」,「真正な文脈での目標志向的思考」,「自他の思考過程の吟味・内省」のいずれにも効果が見られたが,特に「自他の思考過程の吟味・内省」の効果が大きかった.具体的には,「他者のレポートを読んで異なる視点が得られた」,「ビデオを再度視聴する際に,他の人が着目している観点を取り入れた」といった他者の思考過程を参考にして自身の思考過程を内省していると考えられる記述が大幅に増加し,このような記述を行った学習者は授業評価も高いことが確認できた.
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Research Products
(3 results)