2022 Fiscal Year Research-status Report
人工知能の特許性の判断から、弁理士は特許業務の熟達に必要な暗黙知を新たに学べるか
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21K02829
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Research Institution | Japan Advanced Institute of Science and Technology |
Principal Investigator |
神田 陽治 北陸先端科学技術大学院大学, 先端科学技術研究科, 教授 (80417261)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 人工知能 / 特許性判断 / 弁理士 / 熟達 / 直感的把握力の学習 |
Outline of Annual Research Achievements |
1件の図書出版(国外)を行い、また、1件の国際会議の主催(金沢市)を行った。 図書は分担執筆であり、「人工知能時代における重要な知識経営の問題:人間は人工知能から学べるのか、学べないのか」と題した担当の章で、次の4点を主張した。①人間は他人の“表情”を読み取るのが得意であり、人間は人工知能(AI)の行動を観察し、AIの判断から学ぶことができる。②専門家であれば誰でも、暗黙知の獲得を通して、自分の専門知識をAIで拡張することができる。③暗黙知の獲得は、AIと人間の間に適切な境界オブジェクトを挿入することで容易となる。④AIと人間の間の境界オブジェクトの設計は、専門家が慣れ親しんでいるドメイン知識のフレームワークと互換性があると良い。 また、「第五回価値創造グローバル会議」を、2022年の9月2日から4日にかけて金沢市で主催した。コロナ禍の終盤時期で、海外からは入国申請とビザ取得が必要な時期が継続中で、ハイブリッド開催にせざるを得なかった。Philip Kotler教授らにはオンラインで、国外からはSteve Vargo教授を、国内からは鈴木寛教授や久夛良木健教授を招き、講演をして頂いた。そしてこの機会を利用して、本研究に関する情報交換を行った。 国際会議後、コロナ禍の収束が見えて来た段階で、調査対象の「人工知能が特許性を判定するサービス(AI Samurai社, https://aisamurai.co.jp/)」を使った弁理士への調査を計画している矢先、ChatGPTが発表されたことで、本研究の調査内容を再考することにした。本サービスの出力は、弁理士が特許検索で慣れ親しんでいるクレームチャートであるが、ChatGPTを使えばクレームチャートの読み解きが簡単になる可能性がある。現在、ChatGPTとの連携機能を開発中である。開発後に弁理士・特許技術者への調査を行う。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究の目的は、専門家が業務を行う中で身に付けていると思われる、暗黙的な知識・スキルを、専門家の業務遂行の一部を人工知能が支援、あるいは代替できるようになる時代に、専門家を専門家足らしめている暗黙的な知識・スキルを、いかに修得できるのかを問うものである。暗黙的な知識・スキルの修得は阻害されてしまうのか、それとも人工知能の働きが修得を促進するのかを研究調査するものである。 本研究では研究調査を具体的に進めるために、専門家として、特許申請業務を行う弁理士・特許技術者を対象とし、「人工知能が特許性を判定するサービス(AI Samurai社, https://aisamurai.co.jp/)」を使う。このサービスは類似特許を検索し、クレームチャートという、弁理士や特許技術者が日頃、特許性を判断するために使っているチャートの形を模して表示できる。クレームチャートという慣れ親しんだ形で表示することで、弁理士・特許技術者による特許性の内容の理解が効率化し、専門家の知識・スキル修得が促進されるというのが、本研究の開始時に想定していた答えである。 調査対象の「人工知能が特許性を判定するサービス」には、特許検索式の生成と特許文書作成支援機能が昨年度に機能強化され、これらの機能が弁理士の特許文書の読解を支援できると想定していたが、ChatGPTが発表されたことで、クレームチャートの読解という本研究の根幹が影響を受ける可能性が出て来た。本特許サービスとChatGPTを連携させれば、クレームチャートの読み解きがはるかに容易になる可能性がある。現在、ChatGPTとの連携機能を開発中であり、開発後に弁理士・特許技術者への調査を開始する。
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Strategy for Future Research Activity |
従来、弁理士・特許技術者は、日頃の業務の中で行う、公知例調査の中で大量の特許文献に目を通すことで、あるアイデアが特許となりうるかどうか(特許生を有するかどうか)を判断する直感的把握力を養っており、これが弁理士・特許技術者を特許の専門家足らしめる暗黙知であると、本研究では想定していた。ここで、「人工知能が特許性を判定するサービス(AI Samurai社, https://aisamurai.co.jp/)」とChatGPTを連携し、サービスの出力するクレームチャートをChatGPTで要約することで、クレームチャートの読み解きがはるかに容易になる可能性がある。 現在、ChatGPTとの連携機能を開発中であり、開発後に弁理士・特許技術者への調査を実施する。弁理士・特許技術者は、自身が業務担当している産業分野については特許性の直感的把握力を持っているが、担当していない産業分野については特許性の直感的把握力を持っていないと考えられる。本研究の問いは、自分が担当していない産業分野の特許性の直感的把握力を、サービスの出力するクレームチャートをChatGPTで要約したものを読むことで、従来に比べて簡単に獲得できるようになるかである。 調査では、特許事務所の弁理士・特許技術者が普段扱っていない産業分野の特許公報を複数選び(50個程度)、それぞれの特許公報の第一請求項を入力にして得られるChatGPTのクレームチャートの要約とクレームチャートを弁理士・特許技術者に読解してもらった後に、特許性の直感的把握力がどのくらい獲得できているかを調査する。
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Causes of Carryover |
初年度と2年度の前半、コロナパンデミックの影響が続き、国内移動が制限される状況により、弁理士・特許技術者への面談調査が行えない状況が続いた。また、海外への渡航が制限される状況により、国際会議への参加も難しい状況が続いた。このような状況の中で、国際会議(金沢市)を主催し、ゲストスピーカーの交通費用と宿泊費用を支出した。3年目となる最終年度は、国際会議への参加(session chair)と論文投稿を計画している。
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