2022 Fiscal Year Research-status Report
Modeling of Physical Knowledge Acquisition Process using Piano Playing Support System
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21K02846
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Research Institution | Kushiro National College of Technology |
Principal Investigator |
山田 昌尚 釧路工業高等専門学校, 創造工学科, 教授 (40220404)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
土江田 織枝 釧路工業高等専門学校, 創造工学科, 准教授 (10230723)
中村 栄太 京都大学, 白眉センター, 特定助教 (10707574)
峯 恭子 大阪大谷大学, 教育学部, 准教授 (90611187)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 身体知 / ピアノ学習 / データ分析 / 練習方法 / 教員評価 / 自己評価 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,ピアノ初心者の練習演奏に関する定量的な分析を通じて,学習者や指導者に効果的な練習方法を提案することを目指している。これまでに,電子ピアノのMIDIデータ記録機能を使用して多数のピアノ初心者の長期的な練習演奏データを収集し,隠れマルコフモデルを用いて楽譜とのアラインメントをとって楽曲推定を行った。演奏の音高誤り, 余分音符, 不足音符などについて頻度の経時的な変化を分析・可視化した結果,これらの演奏ミスが時間の経過とともに減少する様子がみられた。これは練習により演奏技能が向上し,楽譜通りの演奏ができるようになっていく過程を示しているといえる。そのなかで演奏誤りが一時的に増える現象も観察されたが,これは練習が複数日にわたる場合の演奏技術の獲得過程を示していると解釈できる。 また,学習者へのアンケート調査および試験演奏での教員評価の結果を練習演奏データとあわせて分析した。学習者アンケートによる音高の譜読みに関する自己認識と,実際の練習演奏での音高誤りとの間には相関が見られず,教員の試験評価と練習演奏での音高誤りの割合にも明確な相関が見られなかった。この原因のひとつに,練習演奏時には自分が弾けない部分を集中的に練習するため,試験の評価が高い学習者でも音高誤りなどが多い練習演奏が記録されていることがあげられる。ほかに,試験評価が高い学習者が練習中は自由にアレンジして弾いていたり,試験評価が低い学習者が練習中はごくゆっくり弾いて間違いの少ない演奏をしていたことなどの例が観察されており,より包括的な理由については今後詳細に検討する必要がある。 なお,上記の成果を発表した口頭発表2件はそれぞれ「FIT2022ヤングリサーチャー賞」「情報処理学会第85回全国大会学生奨励賞」を受賞した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
【進捗状況】 本研究課題で計画している内容について,項目別の進捗状況は以下の通りである。(a)演奏データの記録:昨年度はコロナ禍で実施できなかったが今年度は計画通り実施した。(b)楽譜と演奏データのアライメント:計画通り実施したことに加えて精度を向上させるための検討を行い,全体がオクターブずれた場合に対応する実験を実施した。(c)演奏技能習得モデル:演奏記録に対して演奏誤りとリズムのずれについて経時的な分析を実施した。(d)学習者のメタ認知および指導者の所見とデータの照合:令和5年度に実施予定だったが前倒して今年度実施した。(e)演奏支援システムの構築と運用:システムの構成要素には動作しているものもあるが,一部の機能を実装できていない。 【予期していなかった状況とその対処】 上記(d)について実施したところ,事前には練習演奏と試験時の演奏に一定の相関があると予想していたが,結果からそうした傾向は見られなかった。この理由について現段階で判明している要因を「研究実績の概要」に記載したが,今後,試験評価は高いが練習演奏での間違いが多い学習者と,試験評価は低いが練習演奏での間違いが少ない学習者について,練習演奏および試験演奏の内容を詳細に調査する。特に,練習時の演奏テンポやリズムといった隠れマルコフモデルでは捉えるのが難しい要素が関係している可能性があるため,これらを含めた取り扱いを検討する。
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Strategy for Future Research Activity |
演奏データの記録は令和5年度も引き続き実施する。楽譜と演奏データのアライメントについては必要に応じて精度の向上などを図っていく。令和4年度の研究成果により,現在のデータ分析項目では学習者の自己認識や教員による試験評価と練習時の演奏との相関がみられないことがわかったため,この点について詳細に検討することで,どのように練習がおこなわれ,それが学生の自己認識や試験でのパフォーマンスと関連しているかを明らかにする。あわせて,試験での演奏について教員による評価結果だけでなく演奏そのものも分析対象とする。本研究の調査対象に関して,練習演奏では電子ピアノによるMIDIデータの取得が可能だが試験演奏はピアノの音響データで記録されることになるため,音響データからMIDIデータへの変換について最新のトランスクリプション技術を複数比較・検討したうえで分析を行う。打鍵ミスの数,リズムの正確さ,和音の発音同時性などの演奏ミスを可視化する方法は,どのような提示手法が効果的か引き続き検討を続ける。演奏者にフィードバックするシステム演奏支援システムの構築については,未実装部分について開発を進める。
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Causes of Carryover |
コロナ禍により,予定していた演奏データ収集や研究打ち合わせ,学会発表等が制約され,一部の計画を先送りしたため。
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Research Products
(2 results)