2021 Fiscal Year Research-status Report
リベラルアーツ教育におけるオンライン実験科学「地球システム科学」コースの開発
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21K02888
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Research Institution | J. F. Oberlin University |
Principal Investigator |
坪田 幸政 桜美林大学, リベラルアーツ学群, 教授 (70406859)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 地球システム科学 / モデル / 実験科学 / 論理的思考 / システム思考 / プログラミング的思考 / リベラルアーツ / オンライン |
Outline of Annual Research Achievements |
リベラルアーツ教育における科学教育の実態調査として,米国の大学で全ての学生向けのGeneral Educationにおける自然分野の卒業要件を調べた.自然分野は2科目から3科目(6から10単位)が課されていたが,Laboratory Scienceの履修を課す大学は少なかった.また,Computational Reasoningを含めた思考力を培う科目群からの履修も併せて課している大学が多かった.一方,日本の文系大学では,自然分野の履修が卒業要件に含まれていない大学が多かった. 地球システム科学は国内外の大学で開講されているが,典型的なシラバスが存在しないことが確認できた.そこで地球システム科学のシラバス案を策定した.まず,地球システム科学は「地球全体を相互作用する多くの部分(サブシステム)から構成される1つのシステムとして捉えそれらのサブシステム内およびサブシステム間の変化に焦点を当てる科学」とした.そして,地球システムが地圏,水圏,気圏,生物圏から構成され,それら全てに関わる人間圏を取り扱うこととした.また,地球システム科学の手法として,論理的思考に加え,システム思考やプログラミング的思考を培うことを目的とした. プログラミング的思考力の育成に関する予備研究として,「女子学生のためのプログラミング入門講座」を実施し,事前・事後アンケート調査を行った.その結果,文系・理系を問わず,プログラミング的思考に対する興味関心が高く,教材の選び方や指導法を工夫することで,十分に指導可能であることがわかった. オンライン実験として,スマートフォンを用いた気圧や地磁気の測定教材を開発した.気圧の測定については,担当する地学実験Ⅰに組み込み,その評価を行った.その結果,これまで使用していた気圧センサーと同等の結果が得られることがわかった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は,課題1「リベラルアーツ教育における科学教育の実態調査」と課題2「大学生に対する科学リテラシーの習熟度調査」,課題3「オンライン実験科目『地球システムの科学』コースの開発」を設定しているが,課題2が遅れている状況にあり,課題3は計画以上に進展している.その結果,「おおむね順調に進展している」とした. 課題1については,国内外の大学がウェブサイトで公開している履修ガイドやシラバスから情報を入手できたが,新型コロナ感染症の影響で,訪問調査は1校しかできなかった.一方,カリフォルニア州立大学アーバイン校の「地球システム科学入門」は,全27回の授業録画が公開されているので,学生の応答も含めて分析でき,訪問調査に匹敵する情報を収集できた. 課題2が遅れている理由は,科学リテラシーの習熟度調査を実施するための評価ツールが決められていないためである.客観性を担保するために,広く普及した一般的な評価ツールを利用したいと考えて調査中となっている.また,他大学に対する科学リテラシーの習熟度調査の依頼も遅れている状況にある.今後,訪問調査を行うと共に協力関係を構築していく必要があると考えている. 課題3については,2022年度から担当する「地球システム科学」で実践するための準備ができ,学生向けのシラバスも公開し,履修者21名で授業が始まった.また,女子学生のためのプログラミング入門講座を3回実施し,事前・事後アンケート調査を通して,プログラミング的思考の育成に関するデータが収集できた. オンライン実験教材としては,スマートフォンの気圧センサーを用いた教材を開発し,担当する地学実験Ⅰで試用した.また,地磁気センサーと関連付けて,オンライン野外調査の可能性を調べるためにチバニアンの現地調査を行った.以上のことから,課題3については,当初の計画以上に進展しているとした.
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Strategy for Future Research Activity |
科学リテラシーの習熟度調査に関する文献調査を進めると利用可能な評価ツールを用いて,予備調査を実施する.予備調査では本学の理系実験履修済者と非履修者を対象として行い,実験科学の履修の効果を調査する.そして,2022年度中に評価ツールを決定することを目標とする. 「リベラルアーツ教育における科学教育の実態調査」に関する文献調査を踏まえて,国内外における実態調査をGoogle formなどを用いてオンラインで実施する.また,国内については新型コロナ感染症の感染状況が許す範囲で訪問調査を行う.米国の一般教育に関する事例研究として,カリフォルニア州立大学アーバン校の「地球システム科学入門」の担当者と情報交換を行い,現地調査に向けた準備を行う. 「オンライン実験科学『地球システムの科学』コースの開発」については,2022年度から担当する「地球システム科学」でシラバス試案を実践することで,コースの目標設定や実験・演習教材の難易度や理解度を調査する.また,女子学生のためのプログラミング入門講座を継続して開催し,プログラミング的思考の育成に関するデータを収集し,「地球システム科学」コース開発に活用する. 「オンライン実験教材」の開発としては,スマートフォンを用いた実験だけでなく,固体地球や気象と海洋,天体に関するデータを利用した演習教材も開発する.そのため,NASAなどがデータサイエンスのために公開しているデータや教材を調査する.また,米国では授業の枠組みで行うことが困難な野外調査をオンラインで行う試みが進んでいる.当初の計画になかったが,データサイエンス的要素やオンライン野外調査を組み込むことを検討していく.
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Causes of Carryover |
新型コロナ感染症の影響を考慮して,学会発表や訪問調査を次年度以降に延期した.また,感染予防対策の一環として,実験補助アルバイトの雇用を差し控えた.2023年度以降,感染状況に応じて,計画を見直しながら研究を進める予定である.
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Remarks |
地球システム科学のシラバスと教材共有サイト
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