2021 Fiscal Year Research-status Report
Education in Acoustics and Speech Science with ICT using Vocal-tract Models
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21K02889
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Research Institution | Sophia University |
Principal Investigator |
荒井 隆行 上智大学, 理工学部, 教授 (80266072)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 科学教育 / 音響教育 / 音声生成 / 声道模型 / ICT |
Outline of Annual Research Achievements |
人間が音声を生成する機構を声道模型やリード式音源などを中心に物理模型で引き続き再現し、科学教育や音声科学分野へと応用した。音響音声学デモンストレーションAcoustic-Phonetics Demonstrations(以下APD)のwebsiteでは、オンライン教材を引き続き公開している。2021年度からは特にICTとの融合に対しより焦点を当て、次の4つの柱を中心に展開した:1)APDのコンテンツの充実化、2)より工作しやすい、あるいは、より効果のあるデモンストレーションが可能な物理模型の開発、3)声道模型をPCによって制御する試み、4)プログラム教育への応用。1)については、音の物理学の基礎に関して今まで足りなかったコンテンツを補強した。海外からは引き続き、使用許可の問い合わせが相次いでいる。2)については、工作しやすくするためにまずサイズを今までのものより細くまた短くつつ、音質を損なわない声道模型の実現に成功した。また、リード式音源に空気を送り込む機構として、大きめの蛇腹を応用し効果的なデモンストレーションを可能にしつつある。3)については、見た目がより人間の顔に近い解剖模型式の声道模型において、舌や下顎を動かす機構の試作を重ねると同時に、かつてPCで制御できるようにした梅田・寺西式声道模型の改良を行った。4)については、ロボットアームとスライド式3音響管モデルを組み合わせることによって、簡単な命令によって声道模型による母音生成を可能とするシステムを開発中である。
これら開発してきた声道模型等の成果として、インドの科学館では2021年から展示が始まった。また、声道模型の副産物として、人間にはリスクがあって実験がしにくいレーザ等の強い光線を用いた飛沫やエアロゾルの可視化に対し、声道模型を用いて可視化の実験が実施可能であることを確認し、COVIDに関連する貢献も実現した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
APDについては、利用者がオンライン学習できるように今まで足りなかったコンテンツを随時、増やしているところであるが、2021年度において動画やアニメーションを含めページを飛躍的に増やすことができた。COVID-19の影響により、世界的にオンライン教材の需要が高まる中、国内外から使用許可に関する問い合わせが増えていることから、時代のニーズに合った教材を提供していることが確かめられた。新たな声道模型についても、サイズを細く短くした複数のスライド式3音響管モデルを使って、さらにサイズの異なるリード式音源とも組み合わせ、母音の質の評価などを行った。これにより、オンラインワークショップを始め、身の回りにある素材で実験が以前よりもしやすくなったものと考えている。蛇腹機構については、インドの科学館において空気ポンプを直接踏んで呼気を作り出す際、音源部のリードを痛めやすいことを経験してから、以前から検討していた構想を具体化した。解剖模型式については、舌や下顎をモータやアクチュエータによって制御する機構を試している。梅田・寺西式声道模型については2010年にPC制御が可能になったものの、必要であった改良を進めた。また、ロボットアームとスライド式3音響管、リード式音源を組み合わせることによって、少ない命令で複数の母音のバリエーションを伴う母音生成システムを構築することが可能となるため、そのシステムを作り始めることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
ICTとの融合に関わる4つの柱ごとに述べる。1)のAPDについては、ページの英語化が一部、追いついていないため、その作業に加え、さらなるコンテンツの充実化を図る予定である。2)については、より工作しやすいサイズや素材を使って、実際のワークショップ等で試すことを考えている。また、新しい蛇腹機構については、ペダルと組み合わせることによって展示において足による操作が可能となるため、その実証、ならびにロボットアームによって吊り上げる動作が可能かどうかを検証予定である。3)の解剖模型式声道模型では、舌や下顎を動かす機構を実際にアクチュエータなどでPC制御する実験を進めたい。4)では、スライド式3音響管をロボットアームで動かし、かつ、蛇腹機構とリード式音源を組み合わせることで、簡単な命令による母音生成システムを進める予定である。そして、そのシステムについては対面や遠隔での科学教室等での応用も視野に入れている。
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Causes of Carryover |
半導体不足によりすでに発注済みの機器や部品が年度内に納品されず、遅れが発生していることが次年度使用額が生じた主要因となっている。それに伴って、関連する開発費も滞ってしまっているため。2022年度では、上記の機器や部品が納品される予定であるので、他の関連する開発費と共にその予算を執行する予定である。
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Remarks |
声道模型の一部は、北海道大学、順天堂大学、筑波技術大学に送り評価してもらっている。東京大学では新しいタイプの電気喉頭を評価する目的で声道模型を使っていただいた。リード式音源を用いた実験や声道模型を用いた飛沫等の可視化実験の一部は、豊橋技術科学大学との共同研究で行われた。また、スライド式3音響管の実験は、スーパーサイエンスハイスクール事業の一環として立命館慶祥高等学校の課題研究で行われた。
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