2022 Fiscal Year Research-status Report
Education in Acoustics and Speech Science with ICT using Vocal-tract Models
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21K02889
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Research Institution | Sophia University |
Principal Investigator |
荒井 隆行 上智大学, 理工学部, 教授 (80266072)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 科学教育 / 音響教育 / 音声生成 / 声道模型 / ICT |
Outline of Annual Research Achievements |
COVID-19により世界中でオンライン教材のニーズも世界中で依然高く、音響音声学デモンストレーションAcoustic-Phonetics Demonstrationsのwebsiteで公開中のコンテンツも国内外で引き続き高い評価を受け、使用に関する連絡を複数いただいた。さらに、新しい動画の制作と公開も行い、例えば中高生向けの音や声の研究に関する導入動画など、コンテンツ強化を図った。そして、人間がいかに音声を生成しているか、その機構をわかりやすく説明する声道模型や音源についても引き続き改良や評価を続け、音声科学の教育的応用に貢献した。その一部は、国立民族学博物館にて企画された特別展においても展示された。そこでは、リード式音源に空気を送り込む機構として蛇腹を応用し、声道模型もシンプルかつ、人体のように直角に曲がった形のものを採用し、効果的なデモンストレーションを可能にした。また、2021年度からICTとの融合が強化された結果、PCによって声道模型を制御するシステムをロボットアームやアクチュエータと組み合わせて実現し、その運用が始まっている。なお、そのようなシステムの応用例として、COVID-19の影響でイベント自身が延期になってしまったが、ICTを使うことによって貧困地を含む世界のどこからも遠隔で声道模型を操作することができるようなシステムを国際音響学会議の招待講演にて提案した。人間の音声生成機構のうち、一部の母音と子音に特化した声道模型として新たに母音/a/といくつかの子音(/b/, /m/, /w/, /d/, /n/)を生成可能なモデルについては、人間にはリスクがあって実験がしにくいレーザ等の強い光線を用いた飛沫やエアロゾルの可視化の実験に使用した。そして、リード式音源についても振動時に飛沫が生まれやすくなる様子を測定することに成功し、COVID-19にも貢献した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2021年度に大幅に増やした音響音声学デモンストレーションAcoustic-Phonetics Demonstrationsのコンテンツを使って、授業や講習会などを展開できた。ページの一部は日本語のみであったが、その英語化も実施できた。そして、それをベースにした教育プログラムやその工夫点、教育的効果への評価などを論文としてまとめ、アメリカ音響学会の音響教育特集号に投稿し、2022年度に出版に至った。声道の物理模型とICTとの融合という点では、PC制御による声道模型のシステムを新しく2つ実現した。1つはロボットアームを用いた制御であり、もう1つは複数のアクチュエータをD/A変換ボードを介して制御するものである。半導体不足のあおりを受けて、一部の部品についてその納入が滞ってしまったこともあり、実現に時間を要したのは事実であるが、それでも予定通りに進められている。遠隔で声道模型を操作するシステムについては、国際音響学会議の招待講演にてそのアイディアを紹介することができた。実際にインドの科学館とworkshopを開催する話があったが、COVID-19もあって延期になってしまった。しかし、今後、別の形で実演することも視野に入れている。また、ICT教育との融合という点では、中高生を対象に声道模型とPCを使った実習を行った。生徒には、アプリを介してPC上で声道模型に入力する音源を作ってもらい、PCから送った音源信号を小型スピーカからスライド式声道模型に入力し、音声を生成するというものである。ここでの特徴は、ICT教育と物理教育が融合しているだけでなく、音源信号の周波数については数学と音楽が、さらには出力される母音の中には英語の特有の母音も含まれていて外国語教育に至るなど、その教育分野の幅がかなり広いことである。音声を中心としたSTEAM教育の試行ができた点で、その意義は大きものがあった。
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Strategy for Future Research Activity |
音や声に関わる科学教育について、ICTとの融合を本プロジェクトでは進めている。その中に掲げた4つの柱ごとに、今後の研究を述べる。1)音響音声学デモンストレーションAcoustic-Phonetics Demonstrationsについては、各ページで英語と日本語のバイリンガル化を進め、さらなるコンテンツの充実化を図る予定である。2)物理模型の開発については、言語障害に対する模型の応用や、言語聴覚士養成コースでの使用を含むより扱いやすい教材の開発や評価を考えている。3)PC制御による声道模型について、複数のアクチュエータによって制御される多自由度の新しい声道模型の機構について、開発・検証予定である。4)プログラム教育では、STEAM教育に向けてさらに教材や教育プログラムを改良し、それらを使用して対面や遠隔での科学教室等での応用も視野に入れている。
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Causes of Carryover |
半導体不足により機器・部品の一部が遅れて納品されたため、それに伴って関連する開発費や消耗品費などが遅れたため。
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Remarks |
声道模型の一部は、Dresden工科大学、Pennsylvania州立大学、New York医科大学、香港中文大学などと連携し、評価してもらう予定。その一部の声道模型は、アメリカ音響学会の音響教育委員会とも連携し、今後も広くアウトリーチに使用されることになっている。また、New York医科大学では音声言語治療に携わる言語聴覚士養成の講義における教材として使用してもらうために準備を進めている。
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