2021 Fiscal Year Research-status Report
Elucidation of career awareness and behavior change process by narrative communication between different generations of female engineers
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21K02896
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Research Institution | Osaka Prefecture University College of Technology |
Principal Investigator |
中谷 敬子 大阪府立大学工業高等専門学校, その他部局等, 教授 (60295714)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 技術者キャリア発達支援 / ナラティブアプローチ / 理工系女性技術者 / 場の設計 / 内的キャリア / 統合的ライフプランニング / ユニバーサルコミュニケーションデザイン |
Outline of Annual Research Achievements |
これまで、ナラティブな語りを手掛かりにした個性の特徴分析と、働く価値観が、多様化する働き方と個人を取り巻く環境の中で、どのようなキャリア構築の課題に対してどのようなふるまいを引き起こすかに注目してきた。今年度はその延長線上の手法として、女性技術者の若年、中堅、および、ベテラン層の個人の特性や個人の持つ価値観が、キャリア発達プロセスにどう影響するかを、意識と実践の相関を定量的に分析することでそのプロセス特性の解明を目指した。その過程で、新しい試みを行った。ある一人の女性技術者の「個人と組織の共生」の困難さについての語りに触れて、傾聴から一歩踏み込んでナラティブな語りをより深める意味としての語り掛けを交えることで、当事者のキャリア発達を当事者自身が促進させることを発見した。このことは、本研究の最終目的の一つである、「多様設計」のために、仕事と人生の両側面のライフ・キャリアについてのピア・サポータブルな場の次年度以降の設計に大きな指針を与えた。年代と経験の幅だけでなく、性別・専門・業種など様々な立ち位置、しかし、同じ目的を持つ人材で構成されることで、この効果はより大きくなると予想している。 もちろん、ナラティブな語り合いの場合は、これまで通り場のすべての参加者に対して平等に双方向で行われる。若年層からの問題提起を双方が語り合うプロセスの中で、若年層への情報提供が若年層に与える意識と実践の変容のプロセスの解明を進めている。これは、複数名が関わる場であるからこその当事者の視野の広がりを促進する。 キャリア発達の支援には、当事者のキャリアに対する「考えの広がり」と「理解の深まり」という3次元的な発達が重要である。これは、ライフキャリアの豊かな発達と言ってよい。次年度以降は、この「豊かさ」という視点を踏まえながらさらに研究を推進する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
若年からベテランまでの幅広い世代と経験を持つ女性技術者に対して、個人の特性や価値観や意識の変化をそのキャリアプロセスでの実践との相関を見ながら分析した。若年層のキャリア意識が中堅・ベテランとの語り合いを通じて発達するプロセスの分析に力を入れているが、自身の価値観の最も重要な部分を統合することが指摘されている、45歳以降での第二成人期のキャリア構築プロセスの意識変容のメカニズムの解明がとても重要であることが分かった。なぜなら、中堅層は、若年層と異なり、ある一定の実戦と経験を積んでおり、その結果得た、組織や社会に対する評価を自分のその後のキャリア発達の形態にフィードバックさせていることが明確になったからである。これは、女性特有のワークとライフの両立やバランスの困難さのために、組織や社会への自分のキャリアへの貢献は低いという判断を当事者がするために、組織と社会がキャリア発達を当事者の価値観に沿う形で促進する効果があり得るということを見落とす傾向がある。キャリア発達は組織や社会の中でも進められていくものである。従って、女性技術者のキャリア発達の支援においては、社会と組織との相互作用がどのような影響を与え、発達プロセスにおいてどのように生かしていけばよいかについての視点や実践を支援するようなピアサポータブルな場の設計が重要であり、現在そのような場の設計を進めている点で、進捗は良好である。
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Strategy for Future Research Activity |
キャリア発達プロセスの特徴のフィードバックが意識変容とプロセスに与える効果の検証を進める。今年度のナラティブな語りの聞き取り、および、ナラティブな語り合いがなされるピア・サポータブルな場での中堅層女性技術者の個人のキャリア構築プロセスの分析から、個人のキャリア発達に注目した意識変容のメカニズムの解明に加えて、個人が所属する組織や社会とどのように関わっているか、どのような相互作用をしているか、そしてどのようなフィードバックを選択して、自分のキャリア発達に取り込みのちのキャリア発達とその実践を進めていくのかの分析を行う。これらは、今年度で得た新しい視点を含んでおり、社会と組織をその相互作用の要素に含むことで、生まれながらの多様な個性と融合した無理のない発展的なキャリア資質の獲得を可能となり、個人が望むキャリア発達に沿う意識変容と行動変容のプロセスをより深く解明できる。
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Causes of Carryover |
今年度はコロナ禍ということもあり、特にベテラン層のキャリア発達プロセスの聞き取りはzoomを多用することが多かった。ベテラン層はその多くが首都圏におり、その点で、旅費が大幅に減額した。加えて、研究推進の過程で、先にも述べているように、「個人と組織の共生」が中堅層の女性技術者のキャリア発達に大きな影響を与えていることがわかり、新規にその研究を加えたために、当初予定していたSPSS心理学パッケージの購入を見合わせたことによる減額が次年度使用額が生じた理由である。 次年度の仕様計画として、SPSS心理学パッケージを購入し、対面でのナラティブな語りの傾聴と、語り合いのデータ分析を進める。
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Remarks |
第 9 回 JSEE AWARD受賞の表彰理由抜粋 中谷 敬子氏(大阪府立大学工業高等専門学校・教授) 2008年から事業企画委員会に参画,女性エンジニア育成やダイバーシティ調査研究WGにて,リケジョのサロンを企画・運営するなどの活動,研究講演会での女性エンジニア育成に関する新しい取り組み事例を発表するなどで,本協会へ大いに貢献している点を評価する.
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