2022 Fiscal Year Research-status Report
国際競争力を培うSTEM人材育成に向けた教育プラットフォーム構築と実践
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21K02900
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
岩城 奈巳 名古屋大学, 国際機構, 教授 (50436987)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | STEM / 理工系学生留学 / 留学 / 短期留学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究はこれまで学術・専門知識の習得を重要視してきた理工系教育に、語学、異文化への適応・対応スキル等を習得する国際教育分野のカリキュラムを加えることで日本の理工系学生に特化した国際競争力向上に寄与する教育モデルを構築することを目的としている。今年度は夏に北米、欧州で開催した短期留学に参加した理工系学生26名を対象に調査をおこなった。具体的に、渡航1ヶ月前に留学に行く理由を含むアンケート調査を実施し、さらに帰国後は留学にて得たこと、今後のキャリアについての調査をした。多くの学生が、理工系学生の留学は就職活動やキャリアアップで大きなアドバンテージになる、留学は海外の最先端の技術や研究に触れることができるよい機会になる、と回答した一方で、一般的に見ると理工系学生向けの留学プログラムは豊富ではないと感じる、留学生と交流する機会をもっと大学で設けてほしい、などの回答も目立った。さらに、所属学部、学科で留学や国際活動を推進している雰囲気があまりないこと、交換留学などで卒業を延長することは理工系学生にとって就活などで不利になると感じている学生もいたことが判明した。日本では海外と比較して理工系学生への国際教育の実践事例や研究が少ないため、本研究による調査は今後の参考になると考える。また、「理工系学生が積極的に留学に行くにはどのような制度や支援があれば良いと思いますか。大学ができることなども含め、教えてください」への回答で最も多かったのは費用に関することで、11名が経済・金銭面について言及した。経済的な問題が留学の阻害要因となることは日本人STEM生の留学について調査した別の結果でも言及されており、各大学は国への奨学金申請を行ったり、大学独自の奨学金を設立したりして学生支援をおこなっている。本学も支援を行なっているが、国全体での支援が不可欠である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本学学生への聞き取り調査、理工系学生の留学へのニーズに関する調査は順調に進んでいる。具体的に、オンラインで短期留学に参加した理工系学生を対象にインタビューを実施し、参加理由、得たこと、さらに理工系だからこそ留学に参加する意義などを具体的に聞くことができた。また、交換留学から帰国した学生にも聞き取り調査を開始しており、留学がその後の就職活動にも大きく影響し、インターンへの招待や採用に繋がっていること、大きく評価されることなども示唆する意見も得ることができた。その一方で、日本人学生へのインタビューから得た結果を基に海外協定校を訪問し、現地理工系生への留学に関するインタビュー調査、現地理工系学生との比較を進める予定であったが渡航を予定していた夏はコロナウィルス水際対策が依然厳しかったため、渡航は断念せざるを得なかった。さらに緩和されつつあった春休みに再度渡航を計画したが、他の業務との兼ね合いから困難で計画は中止となった。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度、協定校であるオレゴン大学にて夏休みに実施されている理工系生を対象としたSAIL (Student Academic to Inspire Learning) プログラムに参加する短期留学科目を教養教育院にて国際科目として立ち上げた。具体的に、Biology, Environmental Science, Chemistry, Computer Science, Physicsなど理工系に特化されたプログラムが用意されており、学生は自分の専攻に沿った科目を選択し、研究室の見学、実験見学を現地生とともにおこなう。さらにその分野のポスドクとのディスカッションも用意されており、参加学生にはある程度の英語能力も要求される。20名ほどの学生が留学予定であり、参加者を対象に、事前(留学を希望した理由)、留学中(期待通り進んでいるか)、そして帰国後(参加した感想、理工系学生の留学について気持ちの変化はあったかなど)と3段階にわけて個別インタビューを実施し、理工系学生の留学理由をさらに深掘りする。このプログラムを足がかりに参加学生には帰国後、交換留学や他の長期留学についての講義をし、さらなる可能性について紹介していきたい。これら得た結果から理工系学生への留学促進に繋げる。
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Causes of Carryover |
研究活動停滞の最大の理由はコロナ禍で渡航できなかったことである。今年度はミネソタ大学、ミュンヘン工科大学、シンガポール国立大学の協定校に行き調査を予定し、そのための予算を計上していたが使用できなかった。さらに、協定校訪問だけではなく、国際関係者が一度に介する国際年次大会(NAFSAおよびEAIE)に参加して関係者と議論する予定であったが、水際対策が夏休みまで依然厳しく渡航可能な状況ではなかったため断念せざるを得ず、こちらも計画していたように渡航費を使用できなかった。来年度は協定校、具体的に、ノースカロライナ州立大学、国立台湾大学への訪問が確定している。さらに、西オーストラリア大学が共催する国際年次大会(APAIE)に参加し、理工系学生の留学を担当している教職員、関係者に聞き取り調査を実施する。この時期は、西オーストラリア大学に本学学生を短期留学で派遣しているため留学中の学生と現地で面談し、インタビューを実施予定である。このように、次年度は計画通り、予算を執行可能な予定を立てている。
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Research Products
(1 results)