2021 Fiscal Year Research-status Report
生物学教育における自然人類学の新しい展開と科目間連携の探索
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21K02910
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Research Institution | Kanagawa University |
Principal Investigator |
松村 秋芳 神奈川大学, 工学部, 非常勤講師 (50531373)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
広谷 浩子 神奈川県立生命の星・地球博物館, 学芸部, 主任学芸員 (10205099)
米田 穣 東京大学, 総合研究博物館, 教授 (30280712)
近藤 修 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 准教授 (40244347)
太田 博樹 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 教授 (40401228)
戸坂 明日香 京都芸術大学, 文明哲学研究所, 准教授 (40894548)
矢野 航 防衛医科大学校(医学教育部医学科進学課程及び専門課程、動物実験施設、共同利用研究施設、病院並びに防衛, 進学課程, 助教 (80600113)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 自然人類学 / 動画教材 / 脳容量測定法 / 著作権 / サルの行動観察 / ヒトの遺伝子 / 化石頭蓋骨3D模型 / 授業用パワーポイント解説 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目標は、講義実習に資する動画教材、パワーポイント教材を開発し、教育効果を評価検証したうえで、その背景の解説を教育現場に論文や副読本として提供することである。これに基づいた研究実績の概要は、下記の通りである。 2022年5月までに、講義実習に資する動画2編を完成した。脳の進化に関連する実習(米田・市石・松村・矢野)として「脳容量測定方法」、類人猿とヒトにおける姿勢と運動の進化に関する実習(松村・米田・市石・広谷・近藤)として「ラエトリ足跡化石実習」を作成した。これらは、2021年10月に開催された第75回日本人学会大会のワークショップにおいて公表し、検討を加えたうえで完成版を得た。これらについては、学会ホームページを通して高校教員等に提供する準備手続きがほぼ整った。「ラエトリ足跡化石実習」については、都立竹早高校、江戸川区こども未来館ほかで高校生、小学生を対象とした出張講演授業を行い、効果の検証を行った(松村ほか)。 「効果的な博物館での展示方法の探求(広谷)に関して「サルの行動観察法」、ヒトの遺伝に関する講義実習の構築(太田)について「ミトコンドリアDNA を用いた系統分析」の実習動画の作成をすすめている。ヒトと化石人類の頭蓋骨の特徴を復顔を通して学習する方法の開発(戸坂・近藤・矢野)について、復顔と動画の作成に先立って頭蓋骨の3Dプリントをすすめるための準備を行った。 人類の進化についての授業用パワーポイント教材の作成(市石・山藤・松村)では、著作権にかからない図版7点と写真の作成をすすめた。 他教科との境界分野の教材の提案(科目間連携)に関して、人類学会誌の書評(松村)および日本発育発達学会の会誌に掲載された解説と座談会の記録のなかで議論した(松村・太田)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
新型コロナウイルス感染症の流行によって、当初期対面による動画撮影の日程を組むことが難しい状況だったので、全体の進捗がやや遅れることになった。また、2021年度後半に、「化石人類の頭蓋骨の特徴を復顔を通して学習する方法の開発」(戸坂・近藤・矢野)に関して実際の復顔の作業を進める予定であったが、担当する分担者の戸坂氏が産休に入ったため、3Dプリント模型をベースとした復顔の作業を延期することになった。この作業は2022年8月から再開する予定となってる。 一方、2022年5月までに、講義・実習に資する動画の作成などは、順調な進度ですすめられるようになってきた。脳の進化に関連する実習として「脳容量測定方法」、類人猿とヒトにおける姿勢と運動の進化に関する実習として「ラエトリ足跡化石分析実習」を作成を完成することができた。これらを学会ホームページを通して高校教員等に提供する準備手続きがほぼ整った。「ラエトリ足跡化石実習」については、高校生、小学生を対象とした出張授業を通して、効果の検証を行うことができた。さらに、「効果的な博物館での展示方法の探求(広谷)に関して「サルの行動観察法」の解説動画を、ヒトの遺伝に関する講義実習の構築について「ミトコンドリアDNA を用いた系統分析」の実習動画の作成をすすめている。人類の進化についての授業用パワーポイント教材の作成については、著作権にかからない図版と写真の作成をすすめている。これらについては、当初計画したスケジュールに追い付きつつある。 他教科との境界分野の教材の検討提案に関して、学会誌の書評および学会誌に掲載された解説と座談会の記録のなかで、予定よりも前倒しの時期に議論を開始した。 以上のように、2022年5月時点では、上に示した復顔の作業は遅れているが、計画の大部分はおおむね順調な状況に転じている。全般としてやや遅れている状況である。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は2021年度の進捗状況を勘案しながら、下記のテーマ1)~9)を発展的に継続して行う。データに基づいて教材化を進め、得られた成果は教育現場(出張講義・セミナーなど)で試用しながら改善していく。成果は学会等で順次発表する。一般の高校教員向けの動画教材の提供をホームページから試行する。 1)2021年度に導入した3Dプリンタを用いて古人類複合頭蓋骨標本を作製し、研究班内に供給する。以下の2)~4)について連携を保ちながらすすめる。2) 3D標本をベースとした復顔を通して、現代人と古人類の頭蓋骨の特徴を比較しながらヒトの形態と機能を学習するための動画を作成する。3)縄文人と渡来系弥生人頭蓋骨の形態学的な特徴についての解説動画を作成する。4) 人類の進化に関する授業用パワーポイントと動画の作成を引き続き行う。これらについては、オリジナルな図や模型を用いて、著作権に触れない独自の資料の作成を目指す。5) 遺伝的多型に関する実験を取り扱った実習動画、解説動画の作成をすすめる。6)放射性同位元素を用いた実験データを提示し、人類進化における食物環境の関与について生徒に考えさせるオリジナルな教材の作成を試みる。7)動作解析プログラムを用いて、サルからヒトへの運動様式の進化をわかりやすく解説する教材を作成する。ヒト特有の遅い成長と進化との関係を取り上げて追及し、自らが成長期にある生徒に考える機会を与える教材の作成をめざす。8)動物園でニホンザルの群れを観察するポイントを示す実習解説動画を完成する。9)これらの教材を用いた学習効果を分析する。 以上の教材開発の内容は、自然人類学が中心であるが、同時に地球科学、地理歴史、保健体育、医学などの分野との関わりを随所で具体的に示すかたちをとる。新規に作成する教材は、新教科書に準拠しながら、グローバルな視点に立った人類進化への理解を提案するものを目指す。
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Causes of Carryover |
次年度分と合わせて物品等を取得することを予定してるため。
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