2022 Fiscal Year Research-status Report
「深い学び」を実現する探究学習のための教員の資質・能力に関する研究
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21K02925
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Research Institution | Kyoto University of Education |
Principal Investigator |
村上 忠幸 京都教育大学, 教育学部, 名誉教授 (20314297)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
樋口 とみ子 京都教育大学, 教育創生リージョナルセンター機構, 教授 (80402981)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | メタ認知 / 探究学習 / 探究OS / 省察力 / 教師教育 / 資質・能力 / オランダの教育 / 学びの場づくり |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、2021年度(初年度)の研究を通じて「自由度の高い協働的な探究学習」を、授業(小学校、中学校、高校、大学)、教員研修等で広く実践し,このような学びを有効化するためには「学びの場づくり」を可能とする教員の資質・能力がポイントであることを改めて確認した。特に「省察力」が重要な資質・能力であることに焦点化し、そのための教員研修を開発・実践の試行を継続し、良好な評価が得られた。それを受けて2022年度(2年目)には、「省察力」を育成する教員研修の実践モデルの構築を目指して、「省察力」の育成に関する評価を試みた。また、オランダにおける現地調査を実施し、「省察力」の育成に関する比較を通じて、日本における教員研修の在り方を総合的に分析・検討した。 「省察力」を強調した教員研修(実践モデル)において、それを有効化する要素は、探究学習(理科的なアプローチ)を経験することにあることがわかってきた。すなわち経験のない研修では、児童・生徒のメタ認知、教員自身のメタ認知に関する認識が希薄であり、また、教師間にばらつきがあることがわかった。この、経験によって生じる認識を「探究OS(オペレーションシステム)」と呼び、「このOSなしに探究学習を成立させることは難しい」という表現によって経験学習の受け入れが容易になることも分かってきた。このように「省察力」を巡ってその概念形成への接近法が明瞭化してきた。 オランダの教師教育の調査を通じて、探究OSを育成する方略について、個人主義的なアプローチと集団主義的アプローチの視点があり、個人主義の強いオランダと比較して、集団主義の強い日本における探究OSへの接近方略への課題が明瞭化した。 本研究の目標達成に向けて、探究学習の「学びの場づくり」に資する教員の資質・能力を育成することへの接近が、理科教育発の汎用的教授理論づくりから、その実現へ一歩近づいた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究の目標のもと、コロナ禍の中で初年度に多数の教員研修を実施し、教員及び研究者との交流も実施できた。ただ、その多くはコロナ禍以前とは様相を異にしており、コロナ対策等を施したものであった。また、オンラインによるものもあった。実施件数は、アクティブな学びが主であるためコロナ禍以前の半数程度に減った。それに基づく質的なアプローチによる分析を進捗させたが、コロナ禍による海外調査・資料収集(オランダ等)を実施できなかった。このような状況を背景に、研究全体でおおむね3割(経費ベース)の進捗であった。本年度(2年目)においては後半、対面による授業、教員研修が実施できるようになり、多数の授業、教員研修を集中して実施した。また、オランダへの渡航による現地調査(2023年3月7~19日)を実施でき、教員養成、教員研修に関する資料収集を果たすことができた。ただ、このような調査については昨年度の計画分を今年度に延期し、さらに今年度予定分については、その一部を来年度に延期する形になり、本来見込んだ2年目の成果について概ね9割(経費ベース)の進捗であった。具体的には、授業、教員研修の一部および海外調査(オランダ、その他)の実施及び分析・評価について遅れが生じている状況である。したがって2年目修了時点でおおむね0.7~0.8年分(経費ベース)の遅れが生じている。したがって、以上のような理由によりこれまでの進捗状況を「(3)やや遅れている。」とした。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究は3年間の計画によって遂行しているが、現時点の予算ベースで0.7~0.8年の遅れが生じている。これはコロナ禍による影響によるものである。したがって、研究期間を1年間延長して、本来設定した目標の達成を図りたい。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染状況の影響を受け、教員研修、海外調査・資料収集(オランダ等)が未実施のため、次年度に今年度分も合わせて実施する予定である。
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Research Products
(4 results)