2023 Fiscal Year Research-status Report
「深い学び」を実現する探究学習のための教員の資質・能力に関する研究
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21K02925
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Research Institution | Kyoto University of Education |
Principal Investigator |
村上 忠幸 京都教育大学, 教育学部, 名誉教授 (20314297)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
樋口 とみ子 京都教育大学, 教育創生リージョナルセンター機構, 教授 (80402981)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 深い学び / 自由で協働的な探究学習 / コーチング / デボノの帽子 / マルチプル・インテリジェンス / 個と集団 / 教師教育 / 省察 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、題目「「深い学び」を実現する探究学習のための教員の資質・能力に関する研究」のもとその遂行に向けて、2023年度(3年目)は以下のような成果を上げた。 1.探究学習において「深い学び」を実現するための教員の資質・能力を育成するための研修を安定的に実施した。それらは大きく2つのカテゴリーとして実践した。一つは自由で協働的な探究を実現するための「探究体験」:マルチプル・インテリジェンス理論(以下MI)を用いたグルーピング、デボノの帽子による省察で構成され、探究実践とその省察を経験するものである。また、二つは、「コーチング力・省察力」:探究を支える資質・能力を体験的に学ぶものである。これらを28回開催した(時間、対象者は異なるが、内容は主に「探究体験」15回、「コーチング力・省察力」6回、両方1回、その他6回)。これらのアンケート調査を行い、100%の満足度(大変満足、満足の合計)の評価を得た。 2.「探究学習の真正性」を充たした「学びの場づくり」の概念構築に向けて大きな進展が得られた。上記の研修を展開する中で、我々が探究学習の経験モデルとして開発した「自由で協働的な探究学習」の一般化を求める声が高まり、そのエッセンスを検討した。 その検討から「真正性」が一般化の中心となる概念であることがわかった。この経過では多くの現職教員の協力を得て議論を進めることができた。 3.「学びの場づくり」を実践・実現するための教員の資質・能力として「省察力」「コーチング力」の育成に向けてオランダの教師教育の調査から多くの知見が得られた。それは「個と集団」という視点への着眼である。日本の教員の資質・能力に「個と集団」という視点を重ねて「自由で協働的な探究学習」の体験モデルを再検討・再評価することから、探究本来の学びとして個別最適化を実現する教員の資質・能力具体的な検討をする展開を次年度に期するものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は初年度である2021年度、新型コロナ禍による対面授業、研修の自粛や海外渡航の制限によって、ほとんどの実践的な取り組みができなかった。2022年度になり、本研究の本格的に実施が可能となった。したがって本研究は2021年度から3年計画のところ、現実的には2022年度からの3年計画として仕切り直し、研究遂行に臨む体制とした。したがって2023年度は本研究3年間の2年目の位置づけとして遂行した。その意味において、目標としたところはおおむね進展している。以下、計画書の記述に基づき、進捗状況を示す。① 理論研究:「学びの場づくり」に関して「深い学び」「探究学習」「教員の資質・能力」の関係を明瞭化する。自由度の高い協働的な探究学習を軸に、MI、授業デザイン、省察モデル、コーチング理論、海外の先進事例(オランダ等)調査等をふまえ、特に教員の資質・能力につながる部分について整理し「学びの場づくり」として概念を構築する。→順調である。 ② 開発研究:理論研究の成果をもとにして、小・中・高・大の探究学習や教員研修において、探究学習の「学びの場づくり」の概念形成と資質・能力育成方略を質的研究に基づく概念化によって開発を行う。→計画以上に進展している。 ③ 実践研究:②の成果を実践に活かし、②にフィードバックを繰り返しながら、評価の方法論を構築し、探究学習における「学びの場づくり」に関する実践を行う。→計画以上に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
2024年度は、本研究をコロナ禍の影響で1年延長したため、実質的な最終年度として位置づけ、本研究の成果をまとめ、評価・発信する取り組みに重きを置く。 ① 理論研究:「学びの場づくり」に関して「真正性」概念を中心として、自由で協働的な探究学習を経験モデルとして一般化する。そのためのエッセンスをより具体化する。また、「深い学び」「探究学習」「教員の資質・能力」の関係性を明瞭化するために「個と集団」の視点を重ね、その理論化を行う。教員の資質・能力については、コーチング力・省察力について、オランダの教師教育の調査をさらに進める(8月にオランダで調査)。 ② 開発研究:理論研究の成果をもとにして、小・中・高・大の探究学習や教員研修において、探究学習の「学びの場づくり」の概念形成と資質・能力育成方略について、2023年度のデータを合わせて、質的研究に基づく概念化を進める。 ③ 実践研究:②の成果を実践に活かし、②にフィードバックを繰り返しながら、評価の方法論を構築し、探究学習における「学びの場づくり」特に「真正性」関する評価の可能性を探り、それを概念化すための実践を検討する。 ④ 評価研究:「学びの場づくり」の有効性について実践的に検証を継続し、本研究による取り組みについて研修等の実践を調査し評価する。また、研修等により普及を図る。さらに、有効な普及の方略(書籍、SNS等)について検討し、試行する。
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Causes of Carryover |
本研究は初年度である2021年度、新型コロナ禍による対面授業、研修の自粛や海外渡航の制限によって、ほとんどの実践的な取り組みができなかった。2022年度になり、本研究の本格的に実施が可能となった。したがって本研究は2021年度から3年計画のところ、現実的には2022年度からの3年計画として、1年延長した。そのため次年度使用額が生じ、これを2024年度(最終年度)として使用する。最終年度の使用については、主にオランダに渡航し教師教育関係の調査費用(旅費、通訳謝金等)に充てる。また、国内教員研修等の費用(旅費等)に充てる。
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