2022 Fiscal Year Research-status Report
スマートラーニングの開発と実践:外来植物の天然染料を染色に活かした複合教材
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21K02930
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Research Institution | Tokai University |
Principal Investigator |
藤吉 正明 東海大学, 教養学部, 教授 (70349322)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 外来植物 / 帰化植物 / 草木染 / 花弁染色 / 天然染料 / 染色方法 / 材料保管方法 / 環境教育 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究計画における、令和4年度の活動内容は、令和3年度に引き続き日本に生育している外来植物(帰化植物と園芸及び野菜などの逸出種)の草木染を実施し、濃く染まる濃染植物を見つけ出すことであり、さらにそれらに加えてより短時間で染色ができるように、その新たな方法を確立させることである。新たな方法の確立のため、既存の草木染染色の時間(染浴時間と媒染浴時間)を変化させた実験とどの程度染色材料の保管ができるのか、その点にも着目し実験を行った。 草木染は、どんな植物でも材料となるが、 色素含量の差により、1回で染まる色合い(色の濃さ)は種によって大きく異なる。そのため、学校教育の中では授業時間が限られているため、短時間でより濃く染まる植物の方が教材としての価値は高い。また、草木染の材料は、植物体の葉を基本としているが、植物の花弁でも染色が可能か、その検証実験も含めて染色実験を行った。その結果、1年間で135種の外来植物を染色することができた。これらの結果において、濃く染まった植物は、キササゲ、オオハンゴンソウ、ニトベギク、オオテンニンギク、ヒメフウロ、コバノサンダンカ、ナツメヤシなどであった。花弁を材料とした染色実験では、オオキンケイギクやヒガンバナなどで花弁同様の色彩が布に染着されることが明らかになった。 また、木綿布に対する染色時間の影響と染色材料の保存方法を検討するため、数種類の植物を用いて染色実験を行った。その結果、染色時間の変化は、染色された木綿布の色彩に影響を与えなかった。材料保存において色彩の変化は、乾燥保存よりも冷凍保存と染液保存の方が小さかった。トウカエデとオオキンケイギクの場合は、染液保存であれば1ヶ月、冷凍保存であれば3ヶ月保存できることが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、日本に侵入・定着している外来植物(広義)を対象とし、研究1年目に合計約300種、研究2年目までに合計約450種、研究3年目までに合計600種という目標を立てて、染色実験を進めている。令和3年度の研究1年目は、410種の外来植物を染色することができ、令和4年度の研究2年目は135種の外来植物を染色することができた。過去2年間で合計545種の外来植物を染色できたため、目標以上のペースで染色実験が進められている。 また、研究2年目は、外来植物の染色に加え、環境教育活動として草木染を実践するための新たな染色方法の改善・確立も目標にしていた。その点については、学校教育環境でより短時間で染色実験を行うための方法の改善、染色実験を行うための材料保管方法や新たな染色材料の検討である。それらの実験を行った結果、①染色方法の改善については通常90分で染色を行っていたところを30分に変更しても色彩値の変化がなかったため、1時間の時間短縮が可能なこと、②材料保管については材料の種類や保管方法によって異なるものの、どの保管方法においても1週間程度であれば保管可能であること、③染色の材料は植物の葉を基本としているが、一部の植物においては花弁を活用しても染色が可能なことの3点が新たに明らかになった。その他、草木染染色の染料色素の定量においては、染料の抽出方法の予備実験を進めているところであり、具体的な成果が出ていないこともあり、全体の成果に対する自己評価としては、「おおむね順調に進展している」とした。
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Strategy for Future Research Activity |
令和5年度の研究3年目は、過去2年間継続している外来植物の染色実験について、目標の600種を達成するために、染色活動を進めていくことである。現在染色済みの種数が500種を超え、関東地域では新たな外来植物が手に入りにくくなっているため、研究2年目に調査に行くことができなかった北海道での採取を実施することと、西日本の人口集中地域である関西(大阪や兵庫など)での採取を実施することで、60種以上を採取することで目標の達成を目指している。また、それらに加えて、濃く染まる濃染植物染液中の染料色素物質の定量実験や過去2年間で染色を行った成果の情報発信(ホームページ作成)に関して計画通りに実験や制作を進めていく予定である。
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Causes of Carryover |
令和4年度の研究2年目については、1年目同様にコロナ感染等の影響もあり、予定されていた調査等が一部実施できなく(北海道等)、繰越金が生じてしまった。令和5年度の研究3年目については、コロナ感染等が落ち着いてきているため、過去実施できなかった外来種の植物調査を実施するとともに、本年度に予定している内容を着実に進めていく予定である。
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