2021 Fiscal Year Research-status Report
身近な物理量の計測を基にした文理混合データサイエンス教育の実践
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21K02945
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| Research Institution | Chiba University |
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Principal Investigator |
三野 弘文 千葉大学, 大学院国際学術研究院, 准教授 (40323430)
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| Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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| Keywords | 物理量計測 / データサイエンス / 科学教育 / プログラミング |
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| Outline of Annual Research Achievements |
文理混合で行うに相応しい身近な物理量計測を基礎とした新しいデータサイエンス教育の確立を目指して、令和３年度においては、マイコンボードmicro:bitを用いたプログラミングと物理量の計測、Processingによる物理シミュレーション、分光器を用いた光スペクトル計測をテーマとして研究を進めた。micro:bitをテーマとした研究では、プログラミングと、温度、光強度、加速度など物理量の時間変化測定、そして得られた結果をグラフ化し、解析を通じて身近な物理現象をデータを基に理解させる実験授業を進展させた。また、Processing をテーマとした研究では、PC上で物理シミュレーションを可能とし、物理法則に基づく現象や、実験データを再現するといった観点での教材開発を行った。物理現象を数式のみでなく、高校物理の教科書におけるストロボ写真のような画像を、実際に動画としてPC画面上で表示し、条件を変えて即座に実現できるなどシミュレーションならではの特徴を活かした授業の展開を試みた。高校で試験的に実施した結果では学習効果の向上が示唆された。分光をテーマとした研究では、光スペクトル計測により人の目で認識する色が同じでもスペクトル形状が異なる場合があることや、LEDの白色におけるブルーライトについてスペクトルを基に理解させることを目的とした実験授業の開発を行った。また、身近な偏光板とセロハンテープを使用して偏光色を観察、その光スペクトルの測定と、エクセルを使用したシミュレーションにより、色や偏光について学び、等色関数の理解や、偏光色を使用したアート作品など応用について考えさせる教育も進めている。
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| Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
令和３年度において、マイコンボードmicro:bitを用いて必要なプログラミングを行い、温度、光強度、加速度など物理量の時間変化測定を可能とし、それを大学初年次の実験授業に取り入れ、測定で得られるデータのグラフ化、解析を通じて身近な物理現象をデータを基に理解するデータサイエンス教育を展開した。更に、Processingによるプログラミングにより、実測したデータをＰＣ画面上に描画させることや、逆に物理現象を画面上の物体の動きをシミュレートし、その動きをデータとして出力、グラフ化する教材の開発を行った。これにより、実測とシミュレーションをハイブリッド化した学びを実現させるに至った。固定端反射や自由端反射といった波の現象を扱った物理シミュレーションでは、実際に県立高校にて試験的に導入し、生徒の物理学習の向上に貢献した。光スペクトル計測に基づくデータサイエンス教育に関しては、太陽光、ＬＥＤ、白熱電球、蛍光灯など、白色でもスペクトル形状の違いをデータとして捉えることや、ブルーライトに関して正しく認識し、波長のみでなく、強度に対する考察が重要なことの理解に繋げる教育を展開した。更に、偏光板とセロハンテープを用いた偏光色をスペクトル計測とエクセルを用いたシミュレーションにより理解させ、セロハンテープの枚数や角度による色の変化について予測と実測による学びを目指した研究を進めている。現在、得られた成果を物理学会等での発表だけに留まらず、論文や紀要としての報告を進め、Webページなどでの公開も検討している。
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| Strategy for Future Research Activity |
令和3年度においてmicro:bitを用いたプログラミングと物理量計測や光スペクトル計測に基づく実験授業を確立させた。更に、データを扱う教育としてProcessingを用いた物理シミュレーションを発展させることができた。また光スペクトル計測では人の目で認識する色が同じでもスペクトルが異なる場合があることを理解させる教材開発や、偏光板とセロハンテープによる偏光色シミュレーションにおいて研究成果を得ることができた。これらの研究を更に発展させるとともに、当初の予定であるように、以下の3つのテーマについてデータサイエンス教育の確立を目指す。まず、「サーモグラフィーを用いた放射温度計測」では、光照射による物体の温度上昇をサーモグラフィーで捉え、植物の蒸散による温度抑制や湿度の影響などについて考えさせる。また、光照射による室内や車内の温度変化や、窓の開閉での温度上昇の違いについて定量的な評価も行い、温室効果の理解や、温暖化などの環境問題についてデータを基に学ばせる教育を実現させる。体の動きと体温上昇の相関なども扱う。2つ目として、「GM計数管を用いた放射線計測」では、身近なカリウムが放射線を放出していることの理解、その放射線の量がどの程度かについて定量的に捉えることができるようにする。線源の距離を離し、遮蔽物質によって被ばくをどの程度減らせるかについても数式を用いた理解に導く教育の確立を目指す。３つ目として、「スマートフォンを活用した遠隔個人体験物理実験の開発」では、スマートフォンに搭載されている高機能なセンサーを使用した物理実験や、物理量の計測について、Phyphoxなどフリーアプリを用いた遠隔実験から進め、最終的には独自に作成したアプリで、場所を選ばないどこでも個人体験物理実験など実現し、データサイエンス教育のカリキュラム開発に活かす。
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| Causes of Carryover |
今年度の研究において、研究発表や打ち合わせ等に予定していた旅費が新型コロナ感染拡大によって未使用になったこと、また、プログラミングやシミュレーション、データ解析などを先に進めたため、物品費の出費が若干抑えられたため次年度使用額が生じた。翌年度分として請求した助成金と合わせた使用計画としては、研究計画にある新たな物理量計測に必要な物品費、研究成果発表に必要な旅費や経費としての使用を予定している。
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