2021 Fiscal Year Research-status Report
感情制御目標がネガティブな感情への対処方略と抑うつに及ぼす影響についての研究
Project/Area Number |
21K02970
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Research Institution | Otemae University |
Principal Investigator |
服部 陽介 大手前大学, 現代社会学部, 准教授 (40733267)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 感情制御目標 / 抑うつ / マインドワンダリング |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,感情制御における目標の志向性とネガティブな出来事を経験した際に用いられる対処方略が抑うつに影響を与える背景にある認知過程を究明することを目的としている。令和3年度は,Rusk et al. (2011) で作成された感情制御目標の個人差を測定する尺度の邦訳を行った。感情制御目標の個人差を測定する尺度は,目標志向性を測定する既存の尺度 (Elliot & Church, 1997; Dykman, 1998) の一部を感情制御に対応する形に修正することにより作成されている。目標志向性に関する尺度については対応する日本語版の尺度も作成されているため (黒田・桜井, 2001; 田中・山内, 2000),これらの項目を参考にしながら,Rusk et al. (2011) で作成された項目の邦訳を行うこととした。現在,原著者に日本語への翻訳の可否について確認をとり,翻訳作業を進めている。なお,尺度翻訳の手続きは,ISPOR (lnternational Society for Pharmacoeconomics and Outcomes Research) タスクフォースによる報告書の尺度翻訳の手続き (稲田, 2015; Wild et al, 2005) に準拠して実施している。また,並行して,感情制御目標に関連する概念であるマインドワンダリングに関する暗黙理論の個人差を測定するための尺度であるthe theories of mind wandering (TOMW) scale (Zedelius et al., 2020) の邦訳を行った。その結果,原版の尺度と概ね等しい構造の1因子が抽出された。現在は,作成された尺度の信頼性・妥当性を検討するための縦断調査を実施している。ここで得られた結果は,令和4年度に開催される各学会で報告する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
令和3年度は,感情制御目標の個人差を測定する尺度を日本語に翻訳し,その信頼性と妥当性を検証する予定であった。現時点で,翻訳作業は進行しているものの,項目の等質性の確認などに時間を要しており,完成には至っていない。一方で,妥当性の検証に使用予定であるTOMWの邦訳および信頼性・妥当性の検討は予定していた以上に進行しており,すでに一定の妥当性を確認できている。以上から,研究の進捗には多少の遅れがあるものの,一定の成果が得られているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き,感情制御目標の個人差を測定する尺度の邦訳を行い,信頼性・妥当性の検証を行う。また,並行して,日本語版TOMWの信頼性・妥当性の検証を続ける。 さらに,昨年度は困難であった対面での実験が実施可能な状況が整いつつあるため,感情制御目標を操作する実験を実施し,感情制御目標が対処方略に与える因果的影響を確認するための準備を進める。
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Causes of Carryover |
感情制御目標の個人差を測定する尺度の日本語への翻訳作業が遅れたために,翻訳のために計上していた予算を使用することができなかった。また,尺度の翻訳の過程で得られた結果について学会で発表し,論文化する予定であったために,その予算も計上していたが,翻訳作業の遅れに伴い,その予算分も使用できていない。次年度は,これらの予算を用いて翻訳作業を継続し,速やかに学会発表と学術誌への投稿をする予定である。
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