2022 Fiscal Year Research-status Report
感情制御目標がネガティブな感情への対処方略と抑うつに及ぼす影響についての研究
Project/Area Number |
21K02970
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Research Institution | Otemae University |
Principal Investigator |
服部 陽介 大手前大学, 現代社会学部, 准教授 (40733267)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 感情制御目標 / 抑うつ / マインドワンダリング |
Outline of Annual Research Achievements |
令和4年度は,Rusk et al. (2011) で作成された感情制御目標の個人差を測定する尺度である感情制御目標尺度 (the Goals for Emotion Regulation Scale: GERS) の邦訳と,その構造的妥当性および構成概念妥当性の検討を行った。教示と項目の翻訳後に逆翻訳を行い,原著者との協議を経て,GERSの日本語版であるGERS-Jを作成した。その後,作成されたGERS-Jの構造的妥当性と妥当性を検討するために調査を実施した。303名の有効回答について確認的因子分析を実施した結果,原版と同様,3因子 (達成回避目標,達成接近目標,修得目標) モデルの適合度が高いことが示された。さらに,Rusk et al. (2011) と同様に,感情制御目標との関連が予測される,抑うつ,反すう傾向,思考抑制傾向,ネガティブなムードの制御方略の効果に対する期待感を反映する各尺度との関連について検討した。その結果,概ね予測に一致した変数間の関連が確認され,GERS-Jの構成概念妥当性が示された。 また,感情制御目標に関連する概念であるマインドワンダリングに関する暗黙理論の個人差を測定するための尺度であるthe theories of mind wandering scale (TOMW) の邦訳版 (TOMW-J) の信頼性と構成概念妥当性の検討を行った。その結果,TOMW-Jが一定の再検査信頼性を有することが示された。さらに,経験サンプリング法を用いて授業中および日常生活で経験されるマインドワンダリングの頻度を測定し,TOMW-Jの得点との関連を検討した。その結果,TOMW-J得点とマインドワンダリングの頻度に正の相関がみられ,TOMW-Jが一定の構成概念妥当性を有することが示唆された。これらの結果は,令和5年度に開催される日本心理学会で報告予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
令和4年度は,感情制御目標の個人差を測定するGERS-Jの構造的妥当性,信頼性,構成概念妥当性を検証する予定であった。構造的妥当性と構成概念妥当性については,一定の成果が得られているものの,縦断的調査を要する再検査信頼性の検討は行うことができなかった。その一方,GERS-Jの妥当性の検証に使用予定である,マインドワンダリングに関する暗黙理論尺度日本語版TOMW-Jは翻訳とともに信頼性,妥当性を確認できており,既に使用可能な状態にある。以上から,一部の研究の進捗にやや遅れがあるものの,一定の成果が得られているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き,感情制御目標の個人差を測定するGERS-Jの再検査信頼性と構成概念妥当性の検証を行う。その際,抑うつおよび感情制御方略の利用頻度を合わせて測定し,感情制御目標が両者に与える因果的影響についても検証する。さらに,感情制御目標を実験的に操作し,感情制御目標が対処方略に与える因果的影響についてさらに詳細な検討を行う予定である。
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Causes of Carryover |
尺度の翻訳に多くの時間を要したために調査実施が遅れてしまい,予算として計上していた人件費・謝金およびその他の支出ができなかった。また,翻訳作業の遅れに伴って実施予定であった実験の実施が遅れたために,実験に使用する予定であったPC購入のための物品費と,実験参加者に支払う予定であった謝金の支出ができなかった。これらの点から,上記の状況が生じた。令和5年度は,当初の計画通りこれらの調査および実験を実施する予定である。
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