2023 Fiscal Year Annual Research Report
女性のキャリア選択とジェンダー格差維持に関する社会心理学的研究
Project/Area Number |
21K02978
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
森永 康子 広島大学, 人間社会科学研究科(教), 教授 (60203999)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
福留 広大 聖カタリナ大学, 人間健康福祉学部, 准教授 (10847841)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | ジェンダー / ジェンダー格差 / システム正当化の緩和機能 / 差別認識 / 女性のキャリア / トークニズム / メリトクラシー |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題は,日本においてジェンダー格差が肯定・維持される仕組みの心理学的基盤を,システム正当化(SJ)理論の立場から検討することを目的とした。研究期間を通して得られた主な成果は以下の通りである。 1. SJの緩和機能のメカニズムに関する検討:女性が既存のジェンダーシステムを正当化すること(GSJ)で人生満足度が高くなるというSJの緩和機能が,どのようなメカニズムによって生じるのかを検討した。その結果,GSJが強い女性の場合,自分は女性であるおかげで優遇されているという認識が媒介して,人生満足度が高くなることを見出した。男性ではこうした関連は見られなかった。従来の多くの研究は差別認識と主観的幸福感の関連を報告してきたが,本研究ではそうした関連が見られず,新しい知見を得たと考えられる。また,責任の重い仕事は男性に回すというような取り扱いも,GSJが強い女性の場合には自分が優遇されていると認識する傾向が見られ,GSJがジェンダーに関する社会的事象を認知する際のレンズとして働いていることが示唆された。 2.SJと女性のキャリアに関連する要因についての検討: 1)トークニズムに関する研究では,組織の女性割合目標が50%よりも10%や30%の場合にジェンダー平等であるという認識が男女ともに生じることを見出した。2)男女ともに,採用や雇用における機会の平等は結果の平等よりもジェンダー平等であると認知しており,機会の平等はジェンダー役割を肯定する傾向と関連することを見出した。 3. ジェンダー格差に関連する要因についての検討: 1)学校がメリクラシーであるという信念によって社会に不平等があることを認識しにくくなるという過去の研究をもとに,メリクラシーの信念とジェンダー不平等の認識の関連を検討した。2)夫婦別姓と性差別主義的態度の関連について検討した。 以上の成果は学会や論文を通じて報告した。
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