2022 Fiscal Year Research-status Report
Data-driven appraoch to the organization of the social knowledge and its neural representation
Project/Area Number |
21K02980
|
Research Institution | Fukushima Medical University |
Principal Investigator |
岡本 正博 福島県立医科大学, 医学部, 助教 (90548976)
|
Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
Keywords | 対人認知 / 人物表象 / 潜在的意味解析 / 自然言語処理 |
Outline of Annual Research Achievements |
他者の認知や印象形成にかかわる情報(知識や記憶)がどのように符号化され体制化されているか(人物表象)に関しては、これまでにも多くの研究がすすめられ、いくつかの代表的なモデルが提案されてきた。しかしながら、1980年代中ごろからはやや停滞していることが指摘されている(山本他, 2001, p.72)。その一因として、実験に用いられる刺激の人工性や限定性が挙げられ、より日常的で自然な情報によって形成される表象についての研究の必要性が指摘されている。本課題では、潜在的意味解析(Latent Semantic Analysis: LSA)の手法を自由記述された文章に適用することで、他者に関する自由記述文から他者情報の構造の抽出を試みた。その結果、主要な性格認知(「個人的好ましさ」「外向性」「社会的望ましさ」)のそれぞれに特異的な動作・行為表現を抽出することができた。これは、特定の性格とそれに関連する動作や行為が関連付けられて記憶に保持されていることを示すと考えられる(行動―特性クラスター)。さらに、抽出された動作・行為表現と性格特性の意味的な結びつきの程度を実験心理学的な手法で調べたところ、両者の間の結びつきの程度には非対称性があることがわかった(Induction-deduction asymmetry)。以上の結果は、近年の発展が著しい自然言語処理技術が、より日常的で自然な情報から人物表象を抽出するために有益であることを示している。この結果はPsyArxivに公表(https://doi.org/10.31234/osf.io/efczy)。現在、投稿中。 山本眞理子・外山みどり・池上知子・遠藤由美・北村英哉・宮本聡介(2001)『社会的認知ハンドブック』北大路書房
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
上記成果が学術論文に受理されずに思わぬ時間がかかっている。さらに、査読の過程で研究計画の不備が指摘されたため、研究計画をいったん中断し、計画の再検討と練り直しを迫られ、さらに時間を要する事態となった。指摘された主な問題点は、①研究の信頼性と②フレームワークの欠如で、大幅な見直しに時間がかかった。
|
Strategy for Future Research Activity |
論文投稿の過程で課題となった「研究計画の信頼性」を向上・確保するために、再考した実験計画をOpen Science Framework (OSF: https://osf.io/)に事前登録した。現在、OSF上にて研究計画の査読を受けている。また、解析プログラムも事前に作成したうえでGitHub上に公開した(https://github.com/mokamotosan/MyProject02)。 もうひとつの課題である「フレームワークの欠如」を解決するために、本課題に取り組むうえでの中心的な現象として「自己参照効果(self-referential effect)」に着目した。自己参照効果は自己に関連付けられた情報が一般的な情報の意味処理とは異なる処理を受けることを示す現象としており、その後の研究で、親しい他者についても同様の効果が起こることが示されている。しかしながら、「他者」が「親しい他者」として自己と同等の処理を受けるに至る過程についてはあまり調べられておらず、本課題は他者が「親しい他者」として自己に近い処理を受ける過程で、どのような表象の変化がみられるかを調べるうえで有力な手がかりを与えることが期待される。
|
Causes of Carryover |
研究計画に遅れが生じ、計画していたデータ収集にまだ至っていないため、次年度使用額が生じた。2023年度5月から順次データを収集するため、残りの期間で段階的に使用していく。
|