2023 Fiscal Year Research-status Report
社会的ネットワークと関係形成場面における行動戦略:関係流動性に着目して
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21K02984
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Research Institution | Teikyo University |
Principal Investigator |
堀田 結孝 帝京大学, 文学部, 准教授 (90725160)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 社会的ネットワーク / 関係流動性 / 一般的信頼 / 文化 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題の目的は、社会的ネットワークの形成と関わる個人の心理傾向を関係流動性に代表される社会環境要因から説明するアプローチの妥当性を検討することにある。 研究計画期間中に行った一連の研究で、一般的信頼(他者一般に対する信頼)と参加者の自己報告による友人数との間に正の相関関係が確認され、一般的信頼は社会的ネットワークの拡張に関与する心理傾向である可能性が示唆された。その一方で、関係流動性の認知(社会における関係の選択肢の多寡に対する信念)については、ネットワークの数及び一般的信頼等の心理傾向と直接的な関連が見られていない。日本人学生及び一般人を対象とした研究で、同様の傾向を確認している。 2023年度は日米の一般人を対象としてデータを収集し、社会的ネットワークの数及びネットワークに寄与する心理傾向との関連を総合的に調べるとともに、それぞれの文化差が関係流動性の認知によって説明されるかを検討した。その結果、一般的信頼の高さと社会的ネットワークの数の多さとの有意な相関が見られ、関係性拡張としての一般的信頼の役割の頑健性が示された。更に、十分なサンプルサイズでデータ収集を行った結果、従来の研究と同様に関係流動性によって一般的信頼の日米差が説明されるという傾向が再現された。関係流動性は新規関係の構築だけではなく、既存の関係の継続に係る心理傾向(友人との親密性など)も促すと議論されている。しかし、本研究データでは、友人に対して感じる親密性については日米差は見られる一方、その日米差が関係流動性によって説明されるという傾向は確認されなかった。関係流動性は既存の関係の強化よりも、社会的ネットワークの拡張に関わる心理傾向を促す環境要因としての役割を果たす可能性にあるのかもしれない。現在、研究成果を投稿論文としてまとめている段階に入っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
日本人学生を対象として収集した調査データを出発点として、その後一般人を対象とした調査、更に日米間の文化比較調査へと発展させることができた。これまで分析したデータの論文化も進めており、研究は順調に進められたといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
各年度において、本研究計画の大きな目的である関係流動性と社会的ネットワークの形成との関連が十分検討ができた。今後は研究期間中に収集したデータの論文化を進めていく。
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Causes of Carryover |
学会が所属機関近辺で開催されたことにより、旅費が当初の予想よりもかからなかった。また、投稿中の論文の査読結果の通知までに想定以上の期間を経たことから、本年度中に予想していた改稿にかかる校正経費や出版費用が生じなかった。次年度使用額は、論文の執筆にかかる費用(校閲及びオープンアクセス費用)や追加研究に要する経費などに充てる予定である。
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