2021 Fiscal Year Research-status Report
認知バイアス総合アセスメント尺度に基づくヘルスプロモーションプログラムの開発
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21K02986
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Research Institution | Rissho University |
Principal Investigator |
高比良 美詠子 立正大学, 心理学部, 教授 (80370097)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
池田 まさみ 十文字学園女子大学, 教育人文学部, 教授 (00334566)
森 津太子 放送大学, 教養学部, 教授 (30340912)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 認知バイアス / 尺度作成 / ヘルスプロモーション |
Outline of Annual Research Achievements |
一般の人に幅広く見られる思考や判断の歪みである “認知バイアス” は、個人の身体的・精神的・社会的な健康状態にさまざまな形で悪影響を及ぼす可能性がある。そのため、自らが示す認知バイアスの特徴を適切に理解し、それを制御する方法を身に着けることが望ましい。しかし、現在報告されている認知バイアスは100種類を超えており、有効性の高い制御方法を考案するためには、これらの多様な認知バイアスを集約的に捉える試みが必要になる。 なお、これまでの研究では、“認知バイアスは(多かれ少なかれ)誰にでも存在する”という点が過度に強調されていたが、人が示す認知バイアスの強さにはある程度の“個人差”が存在することが実証研究により明らかになっている。この、認知バイアスに見られる個人差は、特定の課題に対して発現される反応上の差異として捉えることが可能であり、一見異なって見える課題でも、個人がその性質を類似のものとして認識するならば、反応パターンにも一定の共通性が見られることが予想される。そのため、さまざまな課題に対するバイアス反応を一堂に集め、個々の課題内容を超えて同様の反応が現れる条件を特定していけば、人が示す多様な認知バイアスの特徴を集約的に捉えることが可能になる。 そこで本研究では、これまでに提案されてきた認知バイアスを個別に測定可能な項目を広範囲に含めることで、多様な認知バイアスを少数の因子に集約して測定できる “認知バイアス総合アセスメント尺度” を作成することを研究の目的とした。 当該年度においては、提案されている認知バイアスを幅広く収集し、尺度に含めるバイアスの種類を決定した。その上で、各認知バイアスの定義に基づいて尺度項目を作成し、心理学を専門とする立場から内容的妥当性を確認した。そして、大学生を対象とした予備調査を行い、項目内容のわかりやすさおよび一般化可能性について精査した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究課題では、はじめに、現在提案されている多様な認知バイアスを、少数の因子に集約して測定できる “認知バイアス総合アセスメント尺度” を新たに作成することで、認知バイアスの全体像を把握することと、認知バイアスの個人差を系統的に測定することを目指している。そして、このような研究成果を土台として、最終的には、多様な認知バイアスを包括的に説明する理論的モデルの構築や、個々人が苦手とする領域に特化したバイアス制御プログラムの開発を予定している。 そのために、2021年度は “認知バイアス総合アセスメント尺度”の作成を目標に定め、認知バイアスの収集から、予備調査の実施までを行なった。これは、2021年度に予定していた研究計画に沿うものであるが、“認知バイアス総合アセスメント尺度”の因子構造の検討については、2022年度の5月に実施する本調査の結果に基づいて行う予定である。そのため、現在までの進捗状況としては、「(3)やや遅れている」を選択した。 2021年度に、本調査の実施まで至らなかった理由としては、現在までに提案されている認知バイアスの多さから、尺度に含めるバイアスの選定および、各バイアスの定義に基づく項目の作成に多くの時間を要したことが挙げられる。また、項目を作成後に、大学生を対象とした予備調査を2回行い、項目内容の調整に時間をかけたことが挙げられる。
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Strategy for Future Research Activity |
当初に立てた全体計画の流れに沿って、今後の研究を推進していく。まず、2022年5月に、幅広い年代および職業従事者に対象者を広げて、“認知バイアス総合アセスメント尺度”を用いた本調査を行う予定である。そして、年代、性別、職業歴、教育歴などと、尺度に含まれた項目の関係を精査し、認知バイアスの個人差についての基礎的なデータを収集する。さらに、“認知バイアス総合アセスメント尺度”の因子構造を検討すると共に、尺度の信頼性と妥当性の確認を行う。 その上で完成した“認知バイアス総合アセスメント尺度”を用いた縦断調査を行い、認知バイアスの原因および結果となる変数との関係について検討を進める。
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Causes of Carryover |
“認知バイアス総合アセスメント尺度”作成のために必要な本調査の費用を当該年度分の助成金として請求していたが、この調査は次年度の5月に実施することになった。そのため、この調査の実施に必要な費用をそのまま次年度使用額(B-A)とした。なお、翌年度分として請求した助成金については、当初に予定していた通り、完成した“認知バイアス総合アセスメント尺度”を用いた別の調査の実施に使用する。
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