2021 Fiscal Year Research-status Report
直観的協力行動の集団拘束性に関する比較文化心理学的研究
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21K02992
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
橋本 博文 大阪市立大学, 大学院文学研究科, 准教授 (00759714)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 直観的意思決定 / 集団 / 社会差 / 集団主義 / 個人主義 |
Outline of Annual Research Achievements |
本申請研究の主たる目的は、1)直観的意思決定に基づく協力行動に、集団による拘束性があるか否かを実験室実験により検証すると同時に、2)集団の枠を超えた協力行動の促進因について明らかにすることにある。さらに、直観的協力の集団拘束性に示される社会差についても分析の俎上に載せ、3)身内びいき傾向が強固に示される集団主義的社会では、集団内に限定的な直観的協力が顕著に示される一方、集団の枠を超えた協力行動は示されにくいという理論仮説を検討する。これら一連の目的に沿った個別研究を着実に実施するため、令和3年度には、直観的協力行動の集団拘束性を確認する実験研究の実施に尽力した。この実験における主たる従属変数は囚人のジレンマゲームにおける協力行動であり、その集団差を分析することが目的であるが、意思決定時に参加者自身と相手の意思決定の組み合わせの利得行列をコンピュータ画面に提示して、15秒間というタイムプレッシャーのある状況下で実験参加者が利得行列のどの部分を注視するのかについても探索的に測定した。その結果、協力行動には予想した集団差は示されなかったが、内集団を相手とする場合には協力者の意思決定時間が非協力者よりも短い可能性、さらには、協力者は相互協力の場合の結果により注意を払いやすく、自身が非協力した場合の結果については注意を払いにくい可能性が示唆された。この研究成果については、現在学術論文としてまとめており、できるだけ早期に投稿する予定である。さらに、同じくタイムプレッシャーという実験手続きを援用する形で実施した実験研究(従属変数はトロッコ問題に関する意思決定)についても興味深い研究知見が得られたため、学術論文としてすでにまとめている。今年度得られた結果を踏まえつつ、問題点をクリアにするかたちで追試研究を行うための準備も現在進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
申請段階において計画していた実験を着実に実施しているため。コロナ禍の影響は小さくないが、独立基盤形成支援(試行)により、研究環境の整備が進み、研究実施の方向性についての見通しが明確になったこともあり、少なくとも現在までは当初の計画通りに研究を展開することができている。
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Strategy for Future Research Activity |
本申請研究実施にあたって申請者は、身内びいき傾向が強固に示される集団主義的社会においては、集団内に限定的な直観的協力が顕著に示される一方、集団の枠を超えた協力行動は示されにくいと予想していたが、この予想が実証的な研究を通して裏付けられるか否かを大規模な比較文化研究を通じて検討する予定である。調査研究によって把握できるのは、あくまで人々の一般的な協力性ないし寛容性であるが、そうした傾向性が集団内に限定されるものか否かを確かめるためのプレ調査をできるだけ早期に展開する。また実験研究については、令和3年度に蓄積した研究知見を踏まえつつ、米国でプレテストを実施できるように国際研究体制を早急に整える。直観的協力行動と関連する信念体系や心理的特性を明らかにするとともに、日米における実験研究のプレテストを行うことが令和4年度の課題である。
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Causes of Carryover |
コロナ禍の影響は小さくなく、申請段階で計画していた実験の実施を後ろ倒しする必要があったため。(実験の実施については令和4年度に集中的に実施する予定である。)
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