2021 Fiscal Year Research-status Report
幼児の「不器用な向社会的行動」の発達的特徴に応じた保育者の関わり
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21K02997
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Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
杉岡 紀乃 (若林紀乃) 静岡大学, 教育学部, 講師 (70435056)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 向社会的行動 / 保育 / 幼児 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は幼児の向社会的行動の自発的生起過程において,不器用な表現となる幼児および,その育ちを支える保育実践,を検討することを目的とした4カ年計画の研究である。 研究初年度となる今年度は,幼児の向社会的行動の表現方法の実態と保育者の向社会的行動に対する価値観について,基礎的な情報を収集した。当初,保育現場における観察・面接調査を計画していたが,新型コロナウィルス感染拡大をうけ,オンラインを活用し,保育者より幼児の「思いやり」に関する意見を収集した。 オンライン意見交換会に先立ち,あらためて国内外の先行研究をレビューしたところ,これまで結果として他者の利益にならなかった幼児の向社会的行動はあまり取り上げられてこなかったことが確認された。これらの研究の実態は保育者のもつ向社会的行動に対する価値観と類似している。今回の意見交換会にて収集された具体的な保育者の意見例は次のとおりである。「思いやりのつもりがその行動が喧嘩の原因になってしまう子どもは年少~年中児にみられる」,「取り組んだ内面を評価したいのでそのような言葉がけはするが,相手のためになる方法は何かを考えさせがち」,「実際の向社会的行動が喧嘩等を引き起こすことになっていたならば,内面を受け止めつつも,表現方法を責めてしまうと思う」「年長児であれば相手のためになる行動を考えられるようになってほしい」 以上の意見交換会の情報から,特に年長児において不器用な向社会的行動の表現を容認することが難しいこと,幼児の内面を受け止めることを重視している保育現場であっても,向社会的行動の場合,行動の結果や相手の利益になることを重視しやすいことがうかがえた。 今後は,初年度の基礎的情報を踏まえ,保育現場での観察・面接調査にて向社会的行動が不器用な表現になりやすい幼児の特徴・場面の特定をすすめ,保育実践の検討へとつなげる予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究は,主に,保育現場における幼児の観察・面接調査,および保育者との協議を研究方法としている。 研究初年度は,調査予定の保育園において新型コロナウィルス感染拡大状況による休園がなされるなど,新型コロナウィルスの影響により保育現場に入り観察・面接調査を行うことができなかった。そのため,急遽,研究方法をオンラインによる情報収集に変更した。保育者からの情報は収集できたのものの,幼児の実態を実際の保育現場にてデータ収集することがかなわず,研究計画としてはやや遅れた状況となっている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の計画としては,初年度の基礎的情報を踏まえ,保育現場での観察・面接調査にて向社会的行動が不器用な表現になりやすい幼児の特徴・場面の特定をすすめる予定である。 具体的な観察方法としては,幼児の自発的な向社会的行動を保育現場にて収集する。さらに,面接調査では幼児が知識として向社会的行動の表現方法をどの程度有しているかを探る。それにより,向社会的行動が不器用な表現となる幼児が,知識やスキルが不足している状態であるのか,もしくは感情や衝動等の要因が隠されているのか,その特徴を検討していく。向社会的行動が不器用な表現となる幼児の特徴,場面をふまえて,どのような保育実践が必要なのかを探っていく予定である。
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Causes of Carryover |
今年度は,新型コロナウィルス感染拡大の影響をうけ,当初予定していた保育現場での調査がオンラインとなり調査費用を使用しなかった。さらに国内外の学会もオンラインとなり,研究発表や研究交流にかかる旅費の使用もなかった。次年度は,保育現場での調査をすすめると共に,国内外での学会にて積極的に研究交流をすすめていく予定である。
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