2022 Fiscal Year Research-status Report
ワーキングメモリ理論に基づいた児童生徒の読み書き算数困難の原因解明と支援
Project/Area Number |
21K03001
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
湯澤 正通 広島大学, 人間社会科学研究科(教), 教授 (10253238)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | ワーキングメモリ / アセスメント / 教育 / 児童 / 生徒 / 学習 / 発達障害 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、1)ワーキングメモリ理論に依拠し、個別の児童生徒が抱える読み書きの困難や算数障害の原因を特定化するためのテストバッテリーを開発し、読み書き困難や算数障害の原因を体系的に明らかにすること、2)読み書きや算数の学習に遅れや問題を抱える児童生徒の原因に応じて、トレーニングを行い、その効果の有無を明らかにすること、であった。今年度は、目的1に関して、読み書き困難の原因として、音声情報(例えば、音声「ア」)と視覚情報(文字「あ」)を結びつける(モダリティ間のバインディングを行う)エピソードバッファ(Baddeleyが2011年に提唱したワーキングメモリモデルの構成要素の一つ)の働きに注目した。言語性ワーキングメモリと視空間性ワーキングメモリそれぞれに問題がない(聞いた文を理解でき、文字を視写できる)にも関わらず、読み書きに困難を抱える児童が欧米で報告されている。そこで、小学校入学前後の4~8歳の日本人幼児・児童を対象に、かな文字の読み、およびかな文字や漢字の単語や文の意味の理解におけるエピソードバッファ(モダリティ間のバインディング)の役割を検討する実験を行った。その結果、4-6歳の幼児において、エピソードバッファはかな文字の単語の読み,特に拗音および促音を含むかな文字の単語の読みに関連していた。読み困難の原因を考えるうえで、音韻ループや視空間スケッチパッドの問題だけでなく、モダリティ間のバインディング能力の問題を考慮する必要性を示した。読み書きの困難を抱える児童生徒のアセスメントと支援を系統的に考えるうえで、有益なデータが得られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2022年度は、本研究の2つの目的に関して、目的(1)の読み書き困難の原因の一部を特定した。
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Strategy for Future Research Activity |
目的(1)のうち、算数障害に焦点を当てた研究を進めること、目的(2)のため、2021年度、作成したプログラムを実施し、その効果を検討すること、が今後の研究の推進方策である。
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Causes of Carryover |
新型コロナウィルスの感染の拡大のため、対面での研究の実施が制約を受けた。2023年度は、新型コロナウィルスの感染がある程度終息し、対面での研究の遂行ができる見込みであり、そのための旅費や人件費に使用する計画である。
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