2022 Fiscal Year Research-status Report
図形の一筆描き動作の文化的変異とその発現機序の解明:日台越仏の比較による分析
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21K03005
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Research Institution | Dokkyo University |
Principal Investigator |
田口 雅徳 獨協大学, 国際教養学部, 教授 (00360313)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 描線動作 / 比較文化 / ベトナム |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、おもにベトナム人学生等を対象として、一筆描き図形の描線動作に関する実験を実施し、データの収集をおこなった。ベトナムは中華文明の影響を強く受け、19世紀終わりごろまでは漢字由来の文字(チュノム)が使用されていたとされる。しかし、19世紀にはフランス領となりローマ字(ラテン文字)が広く利用されることとなった。こうした歴史的・文化的背景を持つベトナム人の描線動作を、漢字圏およびラテン文字圏のデータと比較することでその特徴を明らかにし、また文字習得と描線動作との関連を検討することが本研究の目的の1つである。 本年度では9~10月ごろ主として遠隔よる実験で、ベトナムの実験協力者から描線動作に関するデータを収集することができた。また、2023年3月ごろにはベトナムの学生等を対象として対面で実験をおこない、おおむね30名ほどの協力者から描線動作に関するデータを収集することができた。今後、得られたデータについて詳しく分析をおこなっていく予定である。 これまでに収集したデータについて予備的分析をおこなった結果、ベトナム人の描線動作は日本および台湾など漢字圏の学生の描線動作と部分的に類似する点がみられたが、いっぽうで、ドイツなどのラテン文字圏の描線動作とも類似している点もみられた。これらの研究成果については、今後、学会発表などを通して公表していく予定である。 次年度以降では、データ数をさらに増やし、これらの結果について詳しく検証をおこなっていく予定である。とくに、次年度についてはベトナムおよび台湾での幼児・児童を対象とした実験を実施し、発達的変化を検証していく計画でいる。データ収集に向けて、すでに各地域の研究協力者とも実施計画について検討を重ねており、今後、実験実施を進めていく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
昨年度と同様に、新型コロナウイルス感染症の世界的な流行にともなって、2022年度の前半は国内での対面での実験実施や海外への渡航が難しい状況にあった。本研究では国内と台湾、ベトナム、フランスなどでデータ収集を行う計画であったが、それらの計画が実行できない状況が続いてしまった。そのため、2022年度の9月頃ごろには遠隔でのデータ収集を予備的に実施した。その後、2023年に入ってからは国内での対面でのデータ収集や海外でのデータ収集が比較的実施しやすい環境となった。そこで、2023年3月に国内およびベトナムにおいて学生など成人の実験協力者を対象としてデータの収集をおこなった。いっぽう、台湾やフランでの実験実施、データ収集は依然として進んでいない状況である。以上のように、当初の予定と比較すると、データ収集がやや遅れている状況にある。
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Strategy for Future Research Activity |
上述の通り、これまでは国内での対面によるデータ収集や海外渡航を伴うデータ収集が難しい状況にあった。ただし、今後は海外・国内での実験実施、データ収集が比較的実行しやすい環境となっている。本研究では日本、台湾、ベトナム、フランスなどで実験およびデータの収集を実施する予定であり、次年度については、台湾とベトナムなどでのデータ収集を進めていく計画である。すでに、これらの地域の研究協力者と連絡を取り、2023年8月以降に幼児・児童を対象としたデータ収集の計画を立てている。また、日本人のデータ数も充分には収集できていないため、日本国内におけるデータ収集も引き続き実施していく予定である。日本国内におけるデータの収集に関しては、感染状況を鑑みながら実施する計画である。
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Causes of Carryover |
当該年度ではデータ収集のための国内旅費・海外旅費、また実験実施に伴う補助要員への謝金などを請求していた。これらの予算のうちの多くは未使用である。主な理由は、先にも述べたように、新型コロナウイルス感染症の世界的流行によって、国内・海外での実験実施が難しかったからである。ただし、2023年3月には国内およびベトナムにおいて実験を実施し、データの収集をおこなった。これら実験実施に伴う旅費については次年度への繰り越し金から支出されることになる。また、国内・海外とも自由な移動が認められつつあることから、今後は国内・海外でのデータ収集を対面で実施していく計画である。こうしたデータ収集にあたっては旅費を使用する計画である。また、実験の実施にあたり、補助員等が必要であるため、謝金として人件費を使用する計画である。 さらに、本研究に関わる最新の情報を得るとともに、これまでに得られた研究成果を学会等で発表するため、次年度以降では学会参加のため旅費を使用する計画である。
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