2023 Fiscal Year Research-status Report
図形の一筆描き動作の文化的変異とその発現機序の解明:日台越仏の比較による分析
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21K03005
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Research Institution | Dokkyo University |
Principal Investigator |
田口 雅徳 獨協大学, 国際教養学部, 教授 (00360313)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 描線動作 / 比較文化 / 発達 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、おもにベトナム人の児童(6~8歳児)を対象として、図形の一筆描き動作に関する実験を実施し、データの収集を進めていった。ベトナムは漢字文化圏にあるが、19世紀の終わりごろにフランス領となったことでローマ字(ラテン文字)が広く利用されることとなった。こうした歴史・文化的背景を持つベトナムの児童の描線動作の特徴を漢字圏の子どもの描線動作と比較することで明らかにし、さらに文字習得と描線動作との関連を検討することが本年度の研究目的であった。 2023年9月には、上述したようにベトナム人児童(6~8歳児)を対象として対面で実験をおこなった。おおよそ25名の協力者から描線動作に関するデータを収集することができた。今後、これまでに得られた日本や台湾の子どものデータと合わせて比較・分析し描線動作の特徴を明らかにしていく予定である。 本年度までに収集したデータについて予備的に分析をおこなったが、その結果、ベトナム人児童の描線動作は日本および台湾など漢字圏の子どもの描線動作と類似する傾向がみられることが示唆された。ただ、そうした描線動作の特徴がみられるようになるのは、日本や台湾の子どもと比較すると、やや遅い傾向にあった。その理由について漢字の書字習慣が関連してる可能性が考えられ、今後この点をさらに検証していく予定である。また、本年度得られた実験データについては、今後、学会発表などを通して公表していく予定である。 2024年度では、これまでと同様にベトナムおよび台湾での幼児・児童を対象とした実験を実施し、さらにベトナムと同じくローマ字表記を使用するフランスの学生や児童を対象に実験を実施する計画である。そのため、2023年度においては、各地域の研究協力者とデータ収集の方法などについて検討を重ねた。これを踏まえて、各地域の描線動作の発達的変化を検証するためのデータを収集していく計画である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
2023年3月に国内およびベトナムにおいて学生など成人の実験協力者を対象としてデータの収集をおこなった。さらに、2023年9月にはベトナムにて対面で児童を対象とした実験を実施した。いっぽう、台湾の児童を対象とした実験をおこない、データの追加を計画していたが実施できていない。また、フランスの成人および児童を対象とした実験データの収集は依然として進んでいない状況である。このように、2022年ごろまで国内・国外での対面によるデータ収集が難しい状況にあったため、当初の予定と比較すると、データ収集が遅れている状況にある。
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Strategy for Future Research Activity |
2023年以降は海外・国内での実験実施、データ収集が比較的実行しやすい環境となり、着実にデータ数も増えている。本研究では日本、台湾、ベトナム、フランスなどで実験およびデータの収集を実施する予定であるが、2024年度については、主としてフランスと台湾などでのデータ収集を進めていく計画である。上述のとおり、2023年度において、これらの地域の研究協力者と実験実施に向けて検討を重ねており、2024年8月以降にデータ収集を計画している。また、日本国内におけるデータ収集も引き続き実施していく予定である。
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Causes of Carryover |
2023年度はおおむね計画通りに予算を使用したが、2022年度まで旅費等に係る予算で未使用分があり、それら繰越金が次年度にも繰り越されることとなった。今後、フランスや台湾など海外での実験の実施のため、旅費などで使用する計画である。
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