2021 Fiscal Year Research-status Report
アドバンス・ケア・プランニングの普及・推進に向けた死生観の解明:長期縦断研究
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21K03017
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Research Institution | National Center for Geriatrics and Gerontology |
Principal Investigator |
丹下 智香子 国立研究開発法人国立長寿医療研究センター, 老年学・社会科学研究センター, 研究員 (40422828)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 死に対する態度 / アドバンス・ケア・プランニング / 生涯発達 / 長期縦断疫学研究 |
Outline of Annual Research Achievements |
1.研究の目的:成人中・後期の一般地域住民を対象とした「国立長寿医療研究センター・老化に関する長期縦断疫学研究(NILS-LSA)」のデータを用いて、成人中・後期における死に対する態度の縦断的変化と「人生の最終段階における医療等に関する要望」の関連を、心身の健康状態やライフイベント、心的発達等の影響も考慮しつつ検討する。これにより、成人中・後期の人が最期まで能動的に「よりよい人生」を生きるために役立つ、死生観および人生の最終段階で受ける医療等の要望に関する基礎的かつ有用な資料を得て、将来的なアドバンス・ケア・プランニング(ACP)の普及に資する知見を提供することを目的とする。 2.令和3年度の研究:(1)ACPに関連する領域の文献(人生の最終段階における医療等に関する要望や『終活』の実施状況の調査研究、ACPに関する書籍など)を収集し、日本国内における情報を整理した。 (2)(1)の情報を元に、令和4年度に開始予定のNILS-LSA第10次調査に組み込む、(a)「人生の最終段階における医療・ケア等」に関する要望、(b)人生の最終段階における医療等に関する要望の共有(開示・伝達)行動、(c)ACPに対する態度、を把握するための質問項目を作成した。そして、予備調査としてWeb調査会社のモニター登録者を対象としたWeb調査を実施した。 (3)平成30年10月より実施していた施設型のNILS-LSAフォローアップ調査(第9次調査)が、令和4年2月に終了した。 本研究により得られる知見は、成人中・後期の人が最期まで能動的に「よりよい人生」を生きるために役立つ、死生観および人生の最終段階で受ける医療等の要望に関する基礎的かつ有用な資料となるものであり、将来的なアドバンス・ケア・プランニング(ACP)の普及に資する重要な知見となると考える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定では、今年度は(1)NILS-LSAの既存データを用いて、死に対する態度の縦断的変化(下位側面ごとの平均的軌跡)に対して、ライフイベント・身体的/精神的健康状態の変化が与える影響、および心的発達・幸福感の変化との関連を縦断的に検討すること、(2)平成30年10月より実施中のNILS-LSAフォローアップ調査(第9次調査)が令和3年度前半で終了した後、データクリーンナップ作業を行うこと、(3)令和4年度から開始予定のNILS-LSAフォローアップ調査(第10次調査)にて実施する「『人生の最終段階における医療・ケア等』に関する要望」等を把握するための質問項目を作成すること、を予定していた。 実際には、(1)の解析に関しては、現在統計解析の手法に関する情報を収集し、解析実施に向けた準備を行っている状態である。(2)のNILS-LSA第9次調査に関しては、令和元年度から続く新型コロナウイルス感染症関係の影響を受けデータ収集が当初の予定よりも大幅に遅れ、令和4年2月に漸く終了した。そして現在データのクリーンナップ作業を進めているところである(第9次調査参加者総数:1689名)。(3)の「『人生の最終段階における医療・ケア等』に関する要望」等を把握するための質問項目の作成に関しては、先行研究を参照して質問項目を作成し、予備調査としてWeb調査を実施した。そのため、研究の進捗状況としては、おおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
令和4年度は第9次調査データを含めた縦断的データセットを用いて、(1)死に対する態度の縦断的変化(下位側面ごとの平均的軌跡)に対して、ライフイベント・身体的/精神的健康状態の変化が与える影響、および心的発達・幸福感の変化との縦断的な関連の解明、(2)死に対する態度の5側面を同時に考慮した、複数の特徴的な縦断的変化の軌跡(潜在クラス)の解明、および(3)「『人生の最終段階における医療・ケア等』に関する要望」等を把握するための質問を含む、NILS-LSAフォローアップ調査(第10次調査)の実施を順次行う。得られた知見については、学会等にて公表する。
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Causes of Carryover |
本研究は、老化に関する学際的な縦断研究プロジェクトであるNILS-LSAの一部として実施されている。令和元年度から続く新型コロナウイルス感染症の拡大に伴う緊急事態宣言発令やまん延防止等重点措置の実施などにより、施設型調査であるNILS-LSA第9次調査を中断する期間が生じたため、第9次調査の終了が令和4年2月までずれ込んだ。それに加え、資料収集および研究成果発表にも影響が生じ、本研究が計画通りに遂行できない部分があり、いくつかの費目に関して繰越金が発生した。 使用計画:現在、第9次調査データのクリーンナップ作業を進めており、その作業が終わり次第、縦断データセットを構築して解析を行い、論文化する予定である。また、令和4年度中に、第10次調査を開始する予定となっている。そのため、令和4年度は令和3年度からの繰越金を、物品費(文具、書籍など)、旅費(資料収集および研究成果発表など)、人件費・謝金(データ整理、調査票の作成、NILS-LSA参加者の名簿管理などを担当する研究協力者の雇用)、その他(研究成果発表にかかる学会参加発表費、別刷り印刷費、英文校正費など)に使用する予定である。
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Research Products
(1 results)