2023 Fiscal Year Research-status Report
学校教育で獲得された科学的知識の転移およびその抑制・促進要因に関する研究
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21K03020
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
工藤 与志文 東北大学, 教育学研究科, 教授 (20231293)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐藤 誠子 東北大学, 教育学研究科, 准教授 (20633655)
進藤 聡彦 放送大学, 教養学部, 教授 (30211296)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | ルール学習 / ルールの機能 / 要約機能 / 予測機能 / 深化機能 / 知識構成水準 |
Outline of Annual Research Achievements |
これまでの研究では、ルール適用課題において未知事例に対するルール適用が抑制される傾向(知識適用における既知性効果)が確認されたるとともに、その一般性に関する知見が得られた。一方、既知性効果の解消については、ルールの予測機能の教授が効果的であることも示された。しかしながら、予測機能の教授によってもルール解釈課題の解決は促進されず、今後の検討課題として残された。本年度はルールの機能として「予測機能」に加えて「深化機能」を教授することで、ルール解釈課題の解決が促進できるのではないかという仮説を検証した。深化機能とは、予測機能によるカテゴリーの拡張に伴い、ルールを構成する概念についての既有の理解を見直す必要が生じることによって、結果的に当該概念の理解が深化するというルール機能のことである。「動物は消化器を持つ」というルールを題材に「要約機能教授群」「要約機能+予測機能教授群」「要約機能+予測機能+深化機能教授群」の学習効果を比較する実験を行ったところ、ルール解釈課題および誤前提課題において「深化機能教授群」の成績の優位性が確認され、仮説は支持された。さらにこれらの成果から、ルール学習に関する知識構成の3水準モデルを構築することができた。当該モデルは、ルールの内容的側面のみならず機能的側面の重要性を強調する点で、これまでのルール学習研究で得られた知見とは一線を画すものであるだけでなく、ルール学習研究に構成主義的視点を持ち込むという意味で独創的なものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでの研究における検討課題について、新たな仮説を形成し検証した結果、概ね仮説を支持する結果が得られたとともに、ルール学習に関する新たなモデル形成につなげることができたため。
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Strategy for Future Research Activity |
ルールの深化機能についてさらに検討を重ねる。特に、深化機能が働くうえでの「知識操作」の役割について、理論面・実証面ともに検討を進める必要がある。また、ルール学習における知識構成の3水準モデルについて実証的な検討をさらに進めるとともに、これまでのルール学習研究の知見を当該モデルによって検討しなおすという作業が必要である。
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