2021 Fiscal Year Research-status Report
Basic research to identify factors adjusting the effects of interleaved practice
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21K03028
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Research Institution | University of Miyazaki |
Principal Investigator |
尾之上 高哉 宮崎大学, 教育学部, 准教授 (30631775)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 交互練習 / ブロック練習 / 学習内容の定着 / メタ認知 / 効果を調整する要因 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題「交互練習の効果を調整する要因を特定する基礎研究」に着手する前段階として、「交互練習にどのような効果が期待されるのか」という点と、「そもそも、交互練習の対概念であるブロック練習にどのような弱点があるのか」という点を明確にする必要があると考えた。そこで、前者については、交互練習には定着促進効果以外に、副次的効果として、確信度判断の正確性向上という効果が期待できるのではないかと考え検証を行うことにした。後者については、先行研究をもとにブロック練習の弱点を具体的に想定し、その弱点が顕在化するか否かの検証を行うことにした。以下にそれらの研究の要約を記す。 本研究では、4 つの立体の求積課題の学習を、各課題の学習と復習の2 つの段階から計画した。交互練習条件(練習問題の構成を両段階とも交互練習にする)と、複合練習条件(前者の段階はブロック練習、後者の段階は交互練習にする)を設けて、次の 2 点を検証した。第 1 に、交互練習が副次的に確信度判断の正確性を高めるかである。分析の結果、まず、交互練習条件は複合練習条件よりも復習の段階で成績が有意に高くなり、その差は 1 週間後と 4週間後のテストでも維持されていた。そして、その両時点で交互練習条件が複合練習条件より確信度判断の正確性も高かった。第 2 に、各課題の学習を行う段階の練習問題をブロック練習で解く場面では、学習者が、「問題の種類を見分けて、必要な方略を想起し、選択する」ことなく、「既に意識下にある方略を問題に適用するだけ」になる、という弱点が、実際に顕在化するかである。分析の結果、参加者の 81% (35名)が、既に意識下にある方略をただ問題にあてはめて解くことにだけ注意を向け、問題を読まずに解答した可能性が示された。 今年度の研究成果により、交互練習という概念に着目し詳細な検討を実施する必要性がより明確になったといえる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
下記の2点を踏まえた時、現在までの進捗状況については、「おおむね順調に進展している」と評価できる。 まず1点目について述べる。当初の計画では、1年目は、本研究課題「交互練習の効果を調整する要因を特定する基礎研究」に関する1つ目の問いについて、大学生を対象とした実験室研究を実施する予定であった。しかし、その実験に着手する前に、本研究課題で注目する「交互練習」の効果をより明確にすることが必要であると考えた。また、交互練習の対になる概念である「ブロック練習」についてもより詳細に検討し、交互練習に着目する必然性を確認する必要があると考えた。そのような考えから、1年目は当初の実験は実施せずに、上記の2点について検証を行うことにした。その結果、2点に関して十分な結果を得ることができた。具体的には、まず、交互練習には定着促進効果以外に、確信度判断の正確性向上という点での副次的効果が認められることが確認された。次に、ブロック練習には、学習者が、「問題の種類を見分けて、必要な方略を想起し、選択する」ことなく、「既に意識下にある方略を問題に適用するだけ」になる、という弱点が潜在することが確認された。この1年目の研究を通して、本研究課題を進める必然性を確認できたと考えている。 次に2点目について述べる。この1年目の期間に、中学校の先生との繋がりを作ることができ、1年目に実施する予定であった実験室研究を、2年目に中学校での授業を対象にした実践研究として実施できることになった。1年目に予定していた実験に関する先行研究のほとんどが実験室研究であることを踏まえると、実践研究として実施できる点は意義があると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の推進方策について述べる。 まず、本研究課題「交互練習の効果を調整する要因を特定する基礎研究」について、2年目となる今年度は、当初1年目に実施する予定であった大学生を対象にした実験室研究を、中学生を対象にした実践研究として実施する。既に研究協力校の先生方とは連携が取れており、実験に協力して頂ける学級の選定や、実験の対象となる教材も確定している状況にある。現在は、7月に予定している実験に向けて準備を進めている。今回の実験は、教科書の1単元を対象に行う予定になっており、実際の授業を対象に研究を行う点での意義がある。関連する研究の多くは実験室研究であり、実際の授業を対象にした研究は少ないからである。実践研究であるため、実験室研究のように効果に影響する要因をコントロールすることが難しくなるが、現実世界で交互練習がどの程度の効果を持つのかという点や、どのような要因が交互練習の効果を調整するのかという点を検討する予定である。 次に、3年目と4年目について述べる。当初の計画では、1年目から4年目まで、問を変えながら大学生を対象にした実験室研究を行う予定であった。しかし、先述したように、2年目に中学校での実践研究を行えるようになった。従って、まずは、2年目の研究の結果を詳細に分析し、3年目と4年目に検証すべき課題を改めて検討したいと考えている。 4年間の研究を通して、本研究課題「交互練習の効果を調整する要因を特定する基礎研究」についての結論を導くことを目標にしている。また、2年目に実践研究を行えるようになったため、「交互練習」というアイデアを教科書に沿った授業の中にどのように取り入れていくことができるのかについての示唆も提示できるようにしたいと考えている。
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Causes of Carryover |
まず、次年度使用額が生じた理由について述べる。当初の計画では、1年目は、本研究課題「交互練習の効果を調整する要因を特定する基礎研究」に関する1つ目の問いについて、大学生を対象とした実験室研究を実施する予定であった。しかし、その実験に着手する前に、本研究課題で注目する「交互練習」の効果をより明確にすることが必要であると考えた。また、交互練習の対になる概念である「ブロック練習」についてもより詳細に検討し、交互練習に着目する必然性を確認する必要があると考えた。よってそれらの点を検討するために、1年目は、既に実施済みの実験結果の分析と検証を実施した。よって、1年目に予定していた実験室実験に必要な備品等の多くは購入しなかった。そのため、次年度使用額が生じている。 次に、次年度使用額の使用計画について述べる。今年度、当初1年目に実施する予定であった大学生を対象にした実験室研究を、中学生を対象にした実践研究として実施する。よって、次年度使用額については、実践研究に必要な備品や教材の購入費用として使用する予定である。また、3~4年目に実験室実験を実施する場合は、実験を進める上で必要な備品の購入費用としても使用する予定である。
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