2021 Fiscal Year Research-status Report
幸せは家族によってもたらされるのか:混合研究法による心理学的検討
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21K03052
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Research Institution | Shukutoku University |
Principal Investigator |
中坪 太久郎 淑徳大学, 総合福祉学部, 教授 (90456377)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 主観的幸福感 / 家族 |
Outline of Annual Research Achievements |
これまでの幸福感に関する心理学的研究において家族要因と幸福感の関連が指摘されていることを踏まえて,本研究では,①幸福感と家族要因の関連を量的モデルの検証によって明らかにすること,②家族と個人の要因が相互に影響する際に,個人の中で働く心理的メカニズムに関する具体的・視覚的理論モデルを提示すること,③「家族と幸福」のつながりに関する知見を用いてセルフヘルプ技法を作成すること,の3点を目的として設定した。 補助事業期間1年目である2021年度については,幸福感と家族要因の関連に関する調査に反映させることを目的として,児童期における幸福とその周辺概念についての認識を問う調査研究の結果について報告した。本研究全体の調査内容は家族要因に関するものであるが,その対象となる者が児童期にある場合には,成人と同様の調査方法や分析だけでは十分でない可能性がある。そのため,家族要因を適切に測定するための準備として,今回の報告は重要な取り組みとなると考えられた。また,パーソナリティと幸福感の関連に対するcovid-19の影響についても報告を行った。幸福感については,covid-19による社会的状況の変化の影響を受ける可能性について,多くの研究的取り組みがされるようになってきている。そのため,幸福感調査を実施するにあたっては,さまざまな要因を考慮してその影響を検討しておくことが重要であった。 これらの研究実績は,特に研究目的の①を検証する際の心理学的要因の設定の観点から,家族成員の一員である児童の幸福感尺度への反応の仕方や,社会的環境による幸福感への影響等について考慮することが可能となる点において重要であり,幸福感の心理学的研究を個人的要因と社会的要因の両方から説明するための知見が得られたという意味で意義があると考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
補助事業期間1年目である2021年度においては,幸福感と家族要因の関連について検証するために,ベースライン調査として質問紙調査を行うことを計画していた。得られたデータに対して統計解析を実施し,仮説モデルの検証を行うことで,「家族から個人」と「個人から家族」の要因が幸福感に与える影響について,また,属性や家族構成の影響,幸福感への寄与に関する,家族要因と経済や健康要因との比較についても分析を行うことを予定していた。 現在までの進捗状況としては,ベースライン調査の実施までは至っておらず,調査に組み込む幸福感および家族に関する要因の選定まで進めている状況である。特に,今回の調査対象を10代から80代としていることから,世代間の反応の差についても考慮しておく必要がある。また,幸福感にも大きな影響を及ぼす可能性のあるcovid-19の影響をどのように扱うかについては,covid-19以降の幸福感に関する研究知見も取り入れながら検討していく必要があると考えている。社会状況の変化をみながら,慎重にその要因についても,調査と分析の中に組み込んでいく予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
wellbeingとcovid-19の関連に関する報告が出るようになってきており,系統的なレビューについてもみられるようになってきた。そのため,幸福感に影響する要因についても考慮した上で,調査の設計や結果の解釈が可能になってくると考えられる。今回の調査は日本国内に在住の者を対象にしているため,さまざまな社会情勢や制限についての考慮も重要である。そのため,実施の時期を詳細に検討した上で,量的調査を行う予定である。一方で,分析方法や,調査対象者に合わせた調査方法の工夫等については,これまでの研究実績をふまえて,継続的に検討していく。 また,当初の計画では,ベースライン調査と同様の調査内容を用いて,フォローアップ調査を行うことを補助事業期間の2年目に計画していた。1年後の同時期に調査を行うことで,環境変数の影響を極力少なくすることを意図していたが,現在の社会情勢的にどの時期に行うことが経時的変化を適切に捉えられるのか,といった点についても慎重に検討を行った上で,実施を行うこととする。
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Causes of Carryover |
当初の研究計画では,2021年度において幸福感に関するベースライン調査を行うことを計画していた。しかし, covid-19の影響が社会生活に与える影響が大きく,適切なタイミングで調査を行わなければ,結果の解釈が難しくなることが想定された。そのため,調査の実施を延期したことによって,次年度使用額が生じた。次年度使用額と翌年度分については,当初予定していた調査とその分析を2022年度に行う予定であることから,その調査費用としての使用を計画している。
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