2022 Fiscal Year Research-status Report
発達特性パートナーとの関係不全に悩む女性の質量混合調査による心理支援法開発研究
Project/Area Number |
21K03055
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Research Institution | Teikyo University |
Principal Investigator |
笠井 さつき 帝京大学, 付置研究所, 教授 (70297167)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 発達特性パートナー / カサンドラ症候群 / 女性のメンタルヘルス / 障害の社会モデル / 女性の主体性支援 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究における①当事者研究も含めた先行研究から「発達特性」についての記載を収集・分類し,②①と臨床場面での心理支援職が感じる実感との重ね合わせを行い,「発達特性パートナーのアンマッチ」の状況として共通するイメージやキーワードを共有し,③②の状況において心理支援職がどのような知識・技法を用いてアプローチを行い,そこで感じる困難や課題,あるいは有効なアプローチを集積する のうち、心理支援職39名に対するアンケートと、そのうち13名のインタビューを実施した。これらのデータの記述統計と、KJ法を援用した質的分析の分類プロセスまでを終了した。2023年度日本心理臨床学会においての口頭発表、「心理臨床学研究」への論文投稿に向けての分析を行った アンケート調査の結果からは、女性クライエントの大多数が結婚前はフルタイム勤務であり、結婚後に専業主婦となっていたこと、男性パートナーの大多数には問題行動や衝動性以外に共感性の乏しさやコミュニケーション能力の問題が特徴であることがわかった。これらの特徴からは、女性クライエントの抱える困難が日本において伝統的な家父長制や家族の価値観に強く影響を受けていることが考えられた。心理支援者の工夫としては、男性パートナーを一方的に悪者とするような対応は効果的ではなく、可能であれば機会をもって直接男性パートナーと会い、治療協力を求めるような関りが重要であること、支援者は個人心理療法を軸に複数の体制であることが好ましく、家族のライフサイクルの視点を持ちつつ長く続く支援を提供することなどのポイントが挙げられた。また、多くの心理支援者からはこれらの実態や関りの工夫について支援者間で共有することが現状では不十分であることや今後は重要であることが語られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度当初の計画では、①アンケート調査の協力者の中から了承を得た心理支援職10名に対して、インタビュー調査を実施する(状況に応じオンライン利用)。半構造化面接を行い、KJ法(予定)で質的分析を行う。②発達特性パートナーとの良好な関係を持つ家族へのインタビュー調査として、家族10名への研究協力を依頼してインタビューを実施する。その結果を協力者の同意を確認し、心理支援職と女性クライエントが利用できる形で可視化(質的分析による結果図・カテゴリー化)する。 であった。実績としては、①において当初予定の10名より多い13名の協力者を得てインタビューを実施、分析を行った。分析の結果からは、心理支援職が発達特性パートナーとの関係のアンマッチに苦しむ女性クライエントに対し、個人心理療法を軸にしつつもそこにとどまらずより広い視点で介入する多くの工夫がカテゴリー化された。②においては協力者を求める段階で手掛かりとする従来の発達特性チェックリストを当事者にとってのスティグマに配慮する方向で修正中である。これらの特性リストを使用したインタビューが、情報収集のみならず協力者にとっても有意義な経験となることを意図して進めている。以上の状況から、①②とも「おおむね順調に進展している」と自己評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の目的である、発達特性パートナーとの関係のアンマッチに悩む女性支援における困難や工夫の手掛かり集の作成を目指し、引き続き①当事者研究も含めた先行研究から「発達特性」についての記載を収集・分類し,②①と臨床場面での心理支援職が感じる実感との重ね合わせを行い,「発達特性パートナーのアンマッチ」の状況として共通するイメージやキーワードを共有し,③②の状況において心理支援職がどのような知識・技法を用いてアプローチを行い,そこで感じる困難や課題,あるいは有効なアプローチを集積する。 以上の作業を行い、学術報告に向けての結果・考察を引き続き進めていく予定である。アンケート調査における自由記述とインタビューデータに関しては、KJ法を援用した質的分析を行う予定であり、これらの作業を2023年度に進めていく。口頭発表と論文作成後、関係良好パートナーのインタビューを実施する予定である。 さらに、協力者の了承を得たうえで、ホームページ上にテキストとして掲載し、より多くの支援者や当事者に役立つ情報を提供していく。また、それらのプロセスを通して、当事者や支援者と広く情報交換が可能となり、困難にある女性やそのパートナーの支援可能性を広げることで、世代間や社会における連鎖や悪循環の回避につなげていく。
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Causes of Carryover |
2022年度は新型コロナウイルス感染対策上、学会が非対面形式での開催のことも多く、また対面形式での参加や研究会主催を見合わせた。そのため、学会参加出張費や研究会主催の費用が抑えられ、それに伴う準備の費用も未使用となった。2023年度においては、関連学会や研究会への参加、主催も進めていき、研究の目的である発達特性パートナーとの関係アンマッチに悩む女性や、そのパートナー支援につながる知識や工夫の共有を実現していく。 また、関係良好パートナーへのインタビューも実施していく予定である。
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