2021 Fiscal Year Research-status Report
心拍リズムの調和による感情ストレスマネジメント~ピアで支えるコロナ禍の学生支援
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21K03062
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Research Institution | Hirosaki University |
Principal Investigator |
高橋 恵子 弘前大学, 保健管理センター, 講師 (70281904)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | レジリエンス / 健康教育 / コンパッション / 呼吸 / 自律訓練法 / ピア / 場の力 |
Outline of Annual Research Achievements |
コロナ禍のキャンパスライフでは、課外活動の自粛やオンライン授業など生活リズムの乱れや仲間との触れあいの低下から様々なメンタル不調や健康障害が増えている。研究の初年度は、心と体を繋ぐセルフコンパッションの対話力についての探索を行った。 2021年4~8月、週1回の定期的な健康教育にあわせて、ストレス反応を自覚する大学生64名(男性34名、女性30名、19.4±2.5才)を対象に、レジリエンス(健康回復力)を高めるセルフコンパッションの動機づけを行った。はじめにコロナ禍のストレス反応を、現在の心理・身体・行動面から、自律神経系と心身の健康面とのつながりから健康教育を行った。次いで姿勢と呼吸のワーク、身体の緊張をとる筋弛緩法から、こころと体の準備状態を調えた。続いて自律訓練法(AT)、及びマインドフルネスのワークとなるセルフコンパッションを導入した。 実施後調査の結果、7割以上の学生が日々1~2回から 3回のホームワークを習慣化し、腕部の重温感(AT公式)については、7割程度の学生が5段階評定の3点(かなり修得)以上の修得度を示した。導入後に改善をみた症状は、疲労、不安緊張の軽減、睡眠の改善、集中力の向上などであった。 コロナ禍は三密回避など、他者との関わり、繋がりが希薄化されやすい状況にある。「ストローク」(ふれあい)は、交流分析では「心の栄養」と考えられている。仕事や勉強などの「活動」に比べ、「雑談」はそれ自体に意味や生産性があるわけではないが、互いの気持ちにふれることができる高密度の交流を生む。人間的ふれあいを生み出す対話の「雑談」の効果は、自殺予防の観点からも見直される必要があると考えられた。この様な人間的支援の機会が、エンパシー負債に陥りやすいコロナ禍の現在求められていることを、カウンセリング事例を含めて考察した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
コロナ禍の大学キャンパスでは対面授業の再開など、徐々に落ち着きを取り戻しつつあるが、依然、本年度はリモート授業が相次ぎ、蔓延防止など活動自粛が頻発するなど対人場面での研究が進みにくい状況にあった。そのなかでもピアの集団で実施されたマインドフルネスの呼吸法や、自律訓練法(AT)練習では、仲間と同じ時間と場を共有する体験が強化された。集団練習では適度な緊張と弛緩のメリハリがあり、身体的フィードバックのリラクゼーション効果が実感されやすかったが、ピア集団におけるAT教育の意味は、とりわけ仲間と「息」が合う「体感」や場の力があり、呼吸をあわせ「場の空気」を感じるAT練習では 「つながり」の一体感が強められた。ピア(仲間)の力は集団の緊張感を解消させるセルフコンパッションの自信強化につながった。
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Strategy for Future Research Activity |
ピア集団における練習効果と、オンラインの個別練習との比較分析の結果、自律訓練法(AT)の公式修得度について統計的有意差はみられなかったが、「ATがセルフコントロールに役立ったか」の評定については、ピア集団の方が有意に得点が高かった。今後の研究展望としては、仲間と「息」が合う一体感やその調和がもたらす集団の「場の力」の検証があげられる。これらはATの健康教育の更なる可能性を示唆するものである。あわせて生理学的指標の分析も課題である。引き続き一人ひとりの内的体験や、内発的動機に基づいた教育的関与から、プロアクティブな健康効果がもたらされるレジリエンスの効果について検討を進めたい。
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Causes of Carryover |
本年度はコロナ禍において学会がオンライン開催になったことで出張費が控えられたこと、また研究補助等の人件費が未使用だったことにより経費が減額された。次年度以降、調査の測定機材やタブレットの購入、研究打ち合わせ等の必要経費が見込まれている。
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Research Products
(4 results)