2022 Fiscal Year Research-status Report
原発性局所多汗症症状に対する不安尺度の開発及び不安軽減のための心理療法の開発
Project/Area Number |
21K03068
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
小川 さやか 長崎大学, 保健センター, 助教 (80629171)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
古林 正和 長崎大学, 保健センター, 准教授 (00380874)
木下 裕久 長崎大学, 保健センター, 准教授 (10380883)
田山 淳 早稲田大学, 人間科学学術院, 教授 (10468324)
西郷 達雄 北海道医療大学, 心理科学部, 講師 (50622255)
室田 浩之 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(医学系), 教授 (90363499)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 原発性局所多汗症 / 不安 / Quality of Life |
Outline of Annual Research Achievements |
原発性局所多汗症(以下多汗症)は,頭部・顔面,手掌,足底,腋窩に,日常生活に支障をきたす程の大量の発汗を生じる状態である。多汗症患者は汗で書類が濡れてしまうのではないか,自分が触ったものに汗がついていないか心配になるなど,多汗症症状による不安を日常的に感じており,Quality of Life (QOL)の低下も報告されている。しかしながら,多汗症症状に特化した不安のアセスメント方法は確立されていない。そこで本研究では,多汗症症状に対する不安尺度の開発を行い,信頼性および妥当性を検証し(研究①),多汗症症状に対する不安が多汗症症状の重症度,QOLに与える影響を明らかにする(研究②)。さらに,作成した多汗症症状に対する不安尺度の有用性の検証を行い(研究③),多汗症症状の不安に有効な心理療法の開発につなげる(研究④)。 令和4年度は,令和3年度に実施した多汗症症状に対する不安尺度の開発のためにアンケート調査を統計解析し,多汗症有症状者の汗によって誘発される不安のリスクは,無症状者に比べて高いという結果をThe Journal of Dermatologyに投稿し,受理された。また,多汗症患者の不安を状態‐特性不安尺度 (State-Trait Anxiety Inventory:STAI) を用いて検討した結果,STAI特性不安のオッズ比は,多汗症有症状者及び多汗症重症者は,無症状者に比べてSTAI特性不安のリスクが高かった。しかしながら,STAI状態不安については多汗症有症状者と無症状者,多汗症軽症・中程度者,重症者と無症状者に有意差はみられなかった。この結果について,日本心理学会第86回大会にて学会発表を行った。さらに,令和4年度は多汗症症状に対する不安尺度の信頼性と妥当性に関して統計解析を行い,学会発表及び学会誌への投稿の準備を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
令和4年度は,令和3年度に調査を実施した多汗症と汗によって誘発される不安の関連について統計解析を行い,The Journal of Dermatologyに論文を投稿し,受理された。そのため,研究①(多汗症症状に対する不安尺度の開発)と研究②(多汗症症状特有の不安と多汗症症状の重症度,QOLの関連についての検討)を進めることができた。 加えて,令和4年度は,研究③(多汗症症状に対する不安尺度の有用性の検証)及び研究④(多汗症症状の不安に有効な心理療法の開発)の準備を行った。しかしながら,予想以上に準備に時間がかかり,研究実施まで到達することができなかった。これらのことからやや遅れていると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
令和5年度は,多汗症症状に対する不安尺度の信頼性と妥当性に関して統計解析を行ったものを学会発表及び学会誌へ投稿する予定である。多汗症症状に対する不安尺度の信頼性,妥当性を検証し,多汗症症状に対する不安が多汗症症状の重症度,QOLに与える影響を明らかにする。 また,令和3, 4年度に準備した,多汗症症状に対する不安の軽減を目的とした心理療法については,倫理委員会の承認が得られ次第,リクルートを行い,介入を実施する予定である。介入終了後は,速やかに統計解析を行い,結果のまとめを行う。
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Causes of Carryover |
理由:令和4年度に多汗症症状に対する不安の軽減を目的とした心理療法に関する介入を開始するはずだったが,介入の準備に時間がかかってしまい,実施することができなかった。そのため,介入準備や介入研究の際の謝金に使用することができなくなり,次年度使用額が生じた。また,当初国際学会で学会発表をする予定であったが,新型コロナウイルス感染症の行動制限により渡航できなかったため,旅費の費用が不要になったことも,次年度使用額が生じた理由である。 使用計画:令和5年度は多汗症症状に対する不安の軽減を目的とした心理療法に関する介入を開始するため,介入の準備や介入研究の際の謝金に使用する予定である。また,介入研究で得られた研究成果を学会発表や国際誌へ投稿する予定である。そのため,旅費,学会参加費,英文校正,論文投稿料に使用する計画を立てている。
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