2022 Fiscal Year Research-status Report
抑うつを予測する新たな認知的記憶特性に着目した転換的語り直しの心理回復効果の検証
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21K03072
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Research Institution | Shokei Gakuin College |
Principal Investigator |
池田 和浩 尚絅学院大学, 総合人間科学系, 准教授 (40560587)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐藤 拓 明星大学, 心理学部, 准教授 (10577828)
西浦 和樹 宮城学院女子大学, 教育学部, 教授 (40331863)
川崎 弥生 早稲田大学, 人間科学学術院, 講師(任期付) (80846105)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | エピソード思考 / うつ傾向 / 時間的距離 / 出来事の主体 / 主観評価 / 転換的語り直し |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,エピソード未来思考の概括化によって生じた機能不全が引き起こす将来への希望感の喪失という特性に着目し,新たな認知的メカニズムに基づいて「うつ」の発生を予測する基準を策定することを目的とした。 うつを予測する認知的特徴として,近年ポジティブなエピソード未来思考 (Episodic future thinking: EFT)の欠損が注目されている (Moustafa et al., 2018)。EFTの検証には通常,自伝的記憶の特殊性を検出するAMT (Williams & Broadbent, 1986)を元に構築されたテストを用いる。しかしながら池田ら(2022)ではEFT得点の差異が参加者の認知的努力によって埋められる可能性が示唆された。また,うつの予測には,時間的距離,出来事に関連する対象の影響などを考慮する必要性が確認されている。これらの問題を現在のEFTテストによって全て解決するには,参加者に大きな作業負荷を強いる。そこで本研究では,従来のEFTに内在する問題を解決する新たな記憶テストを開発するため,うつと語り直し特性が記憶の主観的評価に与える影響を検討した。 実験で参加者は記憶の主観的評価に基づく新たな記憶テストおよびQIDS-SR,ReTALEに回答した。その結果,うつ傾向の高さは,未来の自分に関する出来事ではなく,未来の社会的出来事への自我関与度を高めることが確認された。また,うつ傾向の高いものは,過去の出来事に比べ,未来の出来事に関する重要性を相対的に高く評価した。うつの高さは,未来の社会的出来事への自己感を高め,相対的な記憶の価値(重要性)を高める作用を持つと推察される。こうした働きは,自己の経験と社会的経験の間の記憶特性の差を減少させ,自己に特異な情報を正確にモニタリングする力を低減させる可能性を予測させる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度(令和3年度)に行った実験から,当初の手続きでは研究目的を検証することが困難であると判断したため,研究計画書に基づいて新たに倫理申請を行い,今年度も実験を行うことができた。また,予定通りの実験参加者を募り,データを分析することができた。次年度は,令和4年に実施した研究成果を補足するための新たな実験を実施する。
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Strategy for Future Research Activity |
EFTを元にした記憶テストでは,単語手がかりによる制限を伴うために,未来のイメージに比べ,過去のイメージを想起することが困難である可能性が示唆された。そこで令和5年では,手がかり語を用いない形で令和4年度と同様の実験を行い,前回の研究で得られた成果が,うつによってもたらされたものか,実験の制約によるものなのかを判断するための補足実験を行う。また,これらの成果をまとめて総合考察を行う。得られたデータは,11月に行われるPsychonomic Societyにて報告する。また国内学会でのシンポジウムに登壇し,過去の研究成果と併せた総括的な研究発表を行う。
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Causes of Carryover |
令和3年度の実験結果から,本研究の大きな目的を達成するために,令和4年では当初予定していた実験計画と異なる新たな記憶テストの作成を行なった。このことから,謝金を含む人件費の使用方法に若干の変更が生じた。加えて,当初参加を予定していた国際学会への研究成果発表が,東ヨーロッパの情勢によって中止されたために,旅費の使用に変更が生じたことによる。 令和5年,申請者は研究専念期間に入ることから,招聘先の大学にて実験を行う必要がある。招聘機関の規定に応じた研究費の運用を行うことで,当初の研究目的を十分に達成できると考えられる。
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Research Products
(5 results)