2021 Fiscal Year Research-status Report
ネグレクト死亡事例における虐待親の認知要因についての研究
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21K03078
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Research Institution | Hanazono University |
Principal Investigator |
橋本 和明 花園大学, 社会福祉学部, 教授 (80434687)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 児童虐待 / 認知 / ネグレクト死 / 保護者 / 保護責任者遺棄致死事件 / 事例のメタ分析 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では過去10年間の児童虐待死亡検証報告書で取り上げられたネグレクト死となった約50の事例と,保護責任者遺棄致死事件の計40の裁判例を分析対象とし,「事例のメタ分析」という質的研究法を用いて,認知要因のあり方や変容について分析するのが目的である。 これまでに上記の裁判例については分析を終え,コード化とカテゴリー生成を行ったところ,注意の優先順位の誤りや注意の遮断,持続性のなさ,分配のなさといった≪注意の問題性≫に特徴があることが判明した。また,自己愛的や被害的な認知をしやすく,≪メタ認知能力の低さ≫があったり,子どもへの共感性の欠落などの≪認知の歪み≫が生まれ,それが危険を予知する能力の欠如や認知感覚の麻痺という≪危険への認知の欠如≫となって事態がますます深刻化していくことがわかった。 しかし、もう一つの研究対象として挙げている検証報告書の方はまだ分析が途中であり,最終的なコード化やカテゴリーの生成までには至っていない。現在まで約50の個々の研究協力者の分析はほぼ完了しているが,今後はその分析を互いに持ち寄り,合議制で検討する作業が残っている。次年度はそれを早期に完了する予定である。 さらに,その後の研究計画では,すでに分析済みの裁判例と現在分析進行中の検証報告書について,さらにメタの視点から分析を行い,ネグレクトをする親の認知のあり方の特徴を見出していきたい。 その上で,認知に問題を抱える親に対して,どのような関わりや支援が虐待予防につながるのかについて最終的に提言していきたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究協力者とともに事例のメタ分析を進めているが,本研究ではその際に合議制質的研究法の手法を採用している。しかし,個々の研究協力者が行った分析を持ち寄って協議する時間がなかなか取れないことから,分析を終える段階には至っていない。 しかし,今後は日程を調整して,定期的な分析を進めて行くことでその問題は解消できると考える。 また,裁判例の分析はすでに終えているので,本研究全体としてはおおむね順調に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
ネグレクトによる児童虐待死亡検証報告書の分析をできるだけ早く進め,本年度中には裁判例とのメタ分析を終える予定である。その上で,ネグレクト死を招いた親の認知のあり方の特徴を見出していきたい。 また,ネグレクトという虐待を防止する意味でも,親の認知のあり方のアセスメントをどのようにすべきか,あるいは認知の中でもどこに注目していくべきかを検討したい。 さらに,そのような親の認知の修正にはどのような支援やかかわりが必要かを考えていきたい。
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Causes of Carryover |
コロナ禍の状況において,研究協力者全員が参集して協議等をすることがしにくかった。そのため,zoomを用いての研究を進めたが,深い議論や検討をするには不十分な点も多かった。 また,研究代表者が所属する大学を変わった関係もあり,その期間は研究が進まなかった。 以上の理由から,当初予定していた旅費の支出や人件費等が本研究に活用できず,次年度にそれを有効かつ効果的に使用する予定である。
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Research Products
(1 results)