2023 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21K03080
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Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
守谷 順 関西大学, 社会学部, 教授 (70707562)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 社交不安 / 注意 / 長期記憶 / 視覚探索 / 再認記憶 |
Outline of Annual Research Achievements |
他者からの否定的な評価を恐れる社交不安者の特徴として,過度な情報収集があげられる。様々な刺激に注意を向け,情報を得ると考えられるが,その情報がその後どう活かされているか十分に検討されていなかった。 本年度は,前年度に作成した注意と記憶の認知課題を用い,社交不安者ほど過度な情報処理により,多くの情報を記憶として保持しているかWeb実験を行った。参加者は複数の刺激が提示される視覚探索課題を行った後,そこで使用された刺激を覚えているか再認記憶課題を行った。加えて,複数の尺度を用いて各参加者の社交不安の程度を測定した。実験は統制群とストレス群に分けられ行われた。ストレス群では,実験中に成績が思わしくないと嘘の教示が示され,否定的な評価を与えられた。のべ232名が実験に参加した結果,どちらの群においても社交不安の高さが様々な刺激への注意を促し,注意を媒介して記憶を促進させることが示された。特にストレス群ほど,社交不安の高さによる記憶の促進が顕著であった。 研究期間全体を通じて,社交不安者が多くの視覚刺激に注意を向け,結果として人より多くの情報を記憶していることが確認された。多くの刺激への注意は,その時点においては認知課題のパフォーマンスの低下を促すため,従来良い機能とは考えられてこなかった。しかし本研究より,その注意機能が社交不安者の記憶を促進することを明らかにできた点は重要である。過去の記憶は将来の問題解決の際に役立つことを考えれば,社交不安者に見られた多くの情報の保持は適応的な側面を有している可能性が考えられる。今後は,記憶の促進が社交不安者にとってどのような良い影響,はたまた悪い影響をを与えているか,詳細に検討する必要がある。
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