2021 Fiscal Year Research-status Report
先天性心疾患患者の心理社会的特徴と生涯発達:社会文化的文脈を含めて
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21K03093
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Research Institution | Toyo University |
Principal Investigator |
榎本 淳子 東洋大学, 文学部, 教授 (50408952)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 先天性心疾患 / 生涯発達 / 発達課題 / 社会文化的文脈 |
Outline of Annual Research Achievements |
医療技術の発展により先天性心疾患患者の多くが成人に達することが可能となり、成人患 者の自立、社会参加が課題となっている。しかし患者は生まれつきの病気であるがゆえに自分の状態を客観的に把握して病気を受けとめることが難しく、病気の捉え方によっては将来展望を持ちにくい事態が生じている。本研究ではこのようなことを背景に、1.「生涯にわたる病気」を抱える先天性心疾患患者の心理社会的特徴を、微視的視点で個々の生涯発達の径路の中に位置づけて捉えること、2. その結果をもとに巨視的視点で患者の発達段階モデルを提示すること、3. その際、患者の発達や生活に影響を与える日本の文化的要因、社会システムの特徴について検討し、病者の生涯発達を患者単体のみならず、文化や社会との関連を含めて複層的に明らかにしていくことを目的としている。 本年度は、次の3点について研究を進めた。1. 先行研究や文献研究から、先天性障害、中途障害のそれぞれの患者の生涯発達、およびその過程で必ず生じる体験や葛藤を捉えた。特に中途障害については先行研究が多く、一方で先天性障害については研究が少なく、そのため先天性疾患患者の発達を長いスパンから捉えた研究があまりないことが明らかとなった。2. 先行研究、文献研究から捉えられる発達課題を抽出した上で、現在までに実施した面接調査の結果を再度見直し、患者の生涯発達の特徴を時間軸とともに捉えた(現在その部分について論文を執筆中である)。3. 健康な人がどのように病者を受けとめているのかを明らかにするため、大学生を対象に、心臓病への一般的知識や心臓病者に抱くイメージについて自由記述式調査を実施した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、文献研究、およびそれをもとにした面接調査の見直しと患者の生涯発達に関する検討、さらに健康な人の病者への受け止めに関する自由記述式調査の実施など、1年目としてやるべきことを概ね実施することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、面接調査結果を見直し、患者の生涯発達についてさらに検討を進め、それらをまとめて論文にすること、またすでに実施した国際調査のデータ(現在使用許可を待っている状態)から、患者の社会的属性や心理社会的特徴、就業形態、年金、医療制度等の社会システムについてグローバルな視点で日本の文化的特徴、日本の患者の特徴を捉えていく。
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Causes of Carryover |
コロナウイルス感染拡大のため、海外での学会発表を行うことができなかったこと、また多くの国内学会がオンラインになったことなど、旅費の支出が少なかった。また、同様にコロナウイルス感染拡大のため人件費を使用することができず次年度使用額が生じる結果となった。 次年度は現在まで得た成果を積極的に国内外の学会で発表をしていくとともに、順次成果を学会誌に投稿をしていく。
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