2022 Fiscal Year Research-status Report
ひきこもり経験者の語りから見た支援ーひきこもり者の回復プロセスモデルの作成ー
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21K03100
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Research Institution | Tezukayama University |
Principal Investigator |
中地 展生 帝塚山大学, 心理学部, 教授 (70461192)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山口 祐子 帝塚山大学, 心理学部, 教授 (30753321)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | ひきこもり / 相談者 / 行動指標 / 量的研究 / 横断的研究 / 縦断的研究 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究代表者らは、ひきこもり者の4段階の行動指標(1段階:部屋からほとんど出られない~4段階:自由に外出できる)を作成し、ひきこもり支援者への調査を通して、各段階の支援の特徴を明らかにした(中地・山口,2020)。しかし、この研究ではひきこもり者本人への調査は実施できていない。そこで、本研究では、ひきこもり支援機関の相談者やひきこもり経験者を対象とした量的・質的研究(【研究1】【研究2】【研究3】)を実施して、ひきこもり者の回復プロセスモデルを作成することを目的とした。 2021年度実施した【研究1】については、その成果についての学会発表を行い、現在投稿論文としてまとめている。2022年度実施した【研究2】では、ひきこもり経験者1名を対象として、3回の継続的なインタビュー調査を行った。分析の手法としては、一事例を丁寧に図示できる「複線径路・等至性モデル(Trajectory Equifinality Model;以下、TEMと表記)」(安田・サトウ,2012)を用いた。最終的に作成されたTEM図では、ひきこもり経験者が15年にわたるひきこもり期間中に4段階の行動指標の2段階から4段階の間を揺れ動きながら、変化して社会的回復に至るプロセスを明らかにすることができた。特に回復のために必須であったと思われる「就労支援機関」などにひきこもり生活の中でつながることができた要因について、「促進要因」や「阻害要因」の視点から考察を加える。 今回の【研究2】は一事例を分析したものであるが、【研究1】の数量的分析と今回の研究から明らかになった視点を、最終的に【研究3】に活かしていきたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
【研究1】の成果については、研究分担者とともに、第41回日本心理臨床学会において、「ひきこもり支援団体における相談者の分析(1)―性別および不登校経験による検討―」と「ひきこもり支援団体における相談者の分析(2)―行動範囲と対人交流に着目して」というテーマで発表を行った。また、第41回日本人間性心理学会にて「ひきこもり支援団体における相談者の縦断的研究―行動範囲と対人交流の視点から―」というテーマでも発表することができた。さらに、研究代表者は、第39回日本家族心理学会準備委員会企画シンポジウムに招待され今回の研究の一部を「ひきこもり支援団体や支援者への調査から」として発表をした。現在これらの一連の研究をまとめて、投稿論文を作成中である。 【研究2】については、当初予定をしていた1名のひきこもり経験者へ3回継続的なインタビュー調査を行い、TEM図を完成させるという研究を実施することができた。しかし、コロナ禍の中でのインタビュー調整には時間がかかり、成果を発表するまでには今年度中には至らなかった。また【研究3】についても同様にインタビュー調査の候補者選定や日程調整に予定よりも時間がかかってしまい、2022年度中には1名にしかまだインタビュー調査を実施できていない。
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Strategy for Future Research Activity |
【研究1】については、一連の学会発表をまとめて学会誌への投稿論文を準備している。【研究2】については、作成したTEM図をもとにして2023年度中に学会誌へ投稿をする予定である。【研究3】については、AセンターとBセンターという2団体と連携をしてのインタビュー調査を予定していた。しかし、コロナ禍の影響があり、当初予定をしていた対象者の選定や日程調整に遅れが生じている。2023年度のできるだけ早い段階で、2団体とも再度話し合いを行い、他団体も含めて協力を依頼して、計画通りの対象者数を確保して、適切に研究を推進していたきたい。
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Causes of Carryover |
今年度は、コロナ禍ということもあり、当初予定していたAセンターやBセンターでの打ち合わせを予定回数通りに実現することができなかった。また、当初の予定よりも学会発表数を増やしたが、学会発表を行った学会はいずれもWEB開催であり、想定していた旅費の使用を節約することができた。 次年度については、複数のひきこもり経験者を対象としたインタビュー調査がメインになるために、対面での打ち合わせや調査実施がより一層必要になる。また、当初予定をしていた2団体だけに調査対象者の選定を依頼するだけでは、分析に必要な対象者の確保が困難になる可能性があり、近隣・遠方も含めて新たなひきこもり支援団体との協力関係も検討している。そのための予算も予定よりも必要になる見通しである。以上の理由のため、次年度使用が生じたが、計画全体に変更はない。
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