2022 Fiscal Year Research-status Report
適応的セルフ・エスティームの絵画式潜在連合検査と非意識連動型早期介入法の開発
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21K03107
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Research Institution | Naruto University of Education |
Principal Investigator |
山崎 勝之 鳴門教育大学, 大学院学校教育研究科, 特命教授 (50191250)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
内田 香奈子 鳴門教育大学, 大学院学校教育研究科, 准教授 (70580835)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | セルフ・エスティーム / 潜在連合検査 / 非意識連動型介入 / 小学校低学年 |
Outline of Annual Research Achievements |
コロナウィルス禍の影響で、令和4年度の研究は、令和3年度の研究で未実施の研究を中心に実施することになった。実施内容は、小学校1年生での潜在連合テストならびに小学校1年生での「本当の自己肯定感の育成」プログラムを完成することであった。 潜在連合テストは、小学校1年生児童78名を対象に、テストが小学校1年生に実施できることを確認しながら、4週の間隔をあけた再検査信頼性の観点からテストの信頼性を調べた。その結果、2回の実施間に有意で高い正の相関が得られ、再検査信頼性がそなわっていることを確認した。また、担任教師の受け持ちの児童の行動評定の観点から構成概念的妥当性を確認した。評定では、自律的セルフ・エスティームならびに他律的セルフ・エスティームが高い場合によく見られる行動特徴について各児童を対象に担任に評定してもらい、その結果、潜在連合テストの得点の高低に想定される行動評定の高低結果が得られた。こうして、本潜在連合テストについて、2年生への適用に続いて1年生でも、信頼性と妥当性を有するテストであることが確認された。 続いて、小学校1年生に適用する「本当の自己肯定感の育成」プログラムについては、すでに信頼性と妥当性が確認されている潜在連合テストで効果が確認された小学校2年生用のプログラムをベースに小学校1年生用に細部の改訂を行った。使用する教示や説明内容、そして教材に至るまで、小学校1年生の実施に支障がないように改訂が行われた。そして、実際に本プログラムを1年生に適用しながら、運用上の問題を修正しつつ、効果評価に適用できるプログラムを完成させることができた。 こうして令和4年度においては、1年生用の自律的セルフ・エスティームの教育プログラムと測定方法を完成させることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
令和3年度にコロナウィルスの影響で実施し残した研究があり、また令和4年度においても同様の影響を受けたが、令和3年度分に実施すべき研究の遅れはおよそ取り戻すことができた。つまり、令和4年度での研究の進捗状況の遅れは、ほぼ令和3年度の遅れによることになる。 令和4年度は、令和3年度にやり残した、小学校1年生における自律的セルフ・エスティームの測定法としての潜在連合テストを完成させ、同じく小学校1年生での自律的セルフ・エスティームの育成プログラムの開発を完了した。これで当初計画されていた、小学校低学年(1,2年生)での自律的セルフ・エスティームの測定方法と教育プログラムがそろったことになる。これで翌年度から、疑似無作為配置での効果評価研究から、完全無作為配置による効果評価研究へと進める準備が整った。測定法とプログラムの確立は、その後の効果評価の出来映えを左右する研究成果となり、この点では、遅ればせながら研究は予定された軌道上を進んでいるものと判断される。 令和4年度独自のコロナウィルス禍の影響による遅れは少ないものの生起し、それは完成したプログラムの無作為化比較試験前に試行的に実施する予定であった効果評価研究ができなかったことである。この遅れは、令和3年度同様、コロナウィルス禍の影響により、予定していた小学校での通常カリキュラムの遅れならびに外部からの研究者の参加が困難な時期が生じたことから、予定していた効果評価研究に進むことができなかったためである。
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Strategy for Future Research Activity |
令和5年度においては、令和4年度に実施できなかった効果検証研究を実施する。前年度までに、小学校低学年(1,2年生)を対象に、自律的セルフエスティームの育成プログラムとその潜在連合テストが完成された。そこで、研究手順の予定どおり、完全無作為化比較試験の実施に至る前に、疑似無作為化比較試験を行う。完全無作為化試験の実施は時間と労力を要し、年に一度の遂行が限度と予想されるので、まず疑似無作為化比較試験で方法論上の問題があれば修正をする段階を経る。 そこで、小学校1,2年の各学年において、それぞれ教育クラスと比較対照クラスを複数クラス設定し、1,2年生別各学年用の自律的セルフ・エスティームの育成プログラムを実施する。比較対象クラスは倫理上、研究実施後に教育プログラムを実施する。その教育実施前後に(比較対象クラスでは同時期に)、1,2年生にほぼ共通して適用できることが確認された潜在連合テストを適用し、両群の前後変化を比較し、教育効果の有無を検討する。 また、とりわけ教育前に自律的セルフ・エスティーム得点の低い児童の向上が眼目になるので、事前の得点の高低レベルを分けた分析も同時に実施し、さらには、得点の上昇度や下降度が極端な児童を対象に、教育中や学校生活での様子を事例的にも追う予定である。 この効果評価において、効果の確認の観点ならびにプログラム運用上の観点からプログラム内容や潜在連合テストに修正点がさらに出れば合わせて修正し、再度同様の効果検証評価を行う予定である。
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Causes of Carryover |
<理由>令和3年度に続き令和4年度も、影響の度合いは低かったがコロナウィルス感染の影響を受けることになった。つまり、学校での研究実施がそのために遅滞した。具体的には、最も研究実施のために補助が必要であった効果評価研究に進むことができず、このための経費を中心に次年度に使用する必要が生まれた。低学年での効果評価研究は、教育の実施と評価の両面において、特に1年生では多人数の補助が必要になり、この点では次年度にその必要経費を確保したい。
<使用計画>小学校低学年での実施、しかも実際にプログラムを各学年複数クラスに多時間実施するという点で実施補助に人件費・謝金を多く使用する。とりわけ、小学校1年生生での実施は多くの実施補助が必要になる。プログラム実施者による教示の理解度、また、教示に沿った動きなどは低学年の児童では多様で個人差が大きく、このため、個人に応じた個別の教示や指示が必要になることが多い。また、ロシア侵攻の影響などのため予定していたヨーロッパでの学会発表(ヨーロッパ精神医学会)を行うことができなかったため、今年度は海外での研究発表を実施する予定である。
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Research Products
(2 results)