2022 Fiscal Year Research-status Report
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21K03114
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Research Institution | Meiji Gakuin University |
Principal Investigator |
金沢 吉展 明治学院大学, 心理学部, 教授 (10152779)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | カウンセリングに対する好み / 中断 / web調査 / 作業同盟 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的の一つは、カウンセリング・心理療法の中断に影響する主な要因を同定することである。初年度に作成を行った、クライエント(CL)の好みに関する尺度(PEX日本語版)、および、デモグラフィック調査票、回答の質に関する質問項目、終結もしくは中断の様態に関する質問項目、ならびに作業同盟に関する尺度を用いて、直近1年間に精神科・心療内科への外来受診経験を有する18歳以上の成人を対象としたweb調査を行った。無作為抽出により調査票・尺度を配付し、571名から有効回答が得られた。PEX日本語版については、まずカウンセリング開始時のCLの好みについて回答を求め、次に、各項目に対して担当セラピスト(TH)がどの程度重視していたと感じたか回答を求めた。CL自身が示す好みと、その好みに対して担当THがどの程度重視したのか、その間の差が大きければ大きいほど、CLによる中断が生じやすいと予想された。統計的分析により、面接回数4回以上の場合は、「PEX問題解決指向因子の差絶対値」が増えるほど中断が減り、一方で「PEX感情表出・被受容指向因子の差絶対値」が増えるほど中断が増えることが示された。また「無断欠席なし」が増えるほど中断が減ることが示された。面接回数3回以下の場合は「無断欠席なし」が有意傾向となり、「無断欠席なし」が増えるほど中断が減る可能性があることが示された。面接回数が3回以下の場合も4回以上の場合も、無断欠席を減らすことが中断予防のために重要であることが示唆された。加えて4回以上の場合は、CLの感情表出・被受容指向への好みに十分に対応することも中断の予防につながることが示された。一方、問題解決指向への好みに関しては、TH-CL間の差が増えるほど中断を減らすことが示され、追加解析を含めたさらなる検討が必要と考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度においては、クライエントの好みに関する測定尺度の開発を行わなければならない状況となり、本研究課題全体の進捗に大きな影響を及ぼすこととなった。現在のところ、測定尺度の開発に次いで、クライエントによる中断に影響を与える重要な要因を探ることができた。問題解決指向への好みに関して、セラピスト-クライエント間の差が増えるほど中断を減らすことが示され、予想とは異なる結果が得られたため、追加の分析が必要となっている。したがって理想的とは言えないものの、現時点における進捗としては概ね順調と考えて良いのではないだろうか。
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Strategy for Future Research Activity |
PEX問題解決指向への好みに関しては、セラピスト-クライエント間の差が増えるほど中断を減らすことが示されたが、この結果は理解が難しく、追加解析を含めた更なる検討が必要である。その上で、中断に影響を与える要因に関する調査結果および海外で検討されている、中断を防ぐためのセラピスト側の対応スキルを基に、カウンセリング場面においてセラピストが使用できる具体的スキルから成るモジュール作成に着手する予定である。加えて、このモジュールの有効性を実験的に試みる研究に進んでいく予定である。
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Causes of Carryover |
PEX問題解決指向への好みに関して、セラピスト-クライエント間の差が増えるほど中断を減らすことが示され、予想とは異なる結果となった。したがって、追加解析を含めた更なる検討が必要となっている。そのため、中断を防ぐためのセラピスト側の対応スキルについて検討を行うことが難しい状況となった。次年度においては、この追加解析を早めに実施した上で、カウンセリング場面においてセラピストが使用できるようなスキルの検討に着手する予定である。
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