2022 Fiscal Year Research-status Report
顔印象とそのメタ認知の正確性/偏りの個人差に関する実験心理学的検討
Project/Area Number |
21K03124
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
鈴木 敦命 東京大学, 大学院人文社会系研究科(文学部), 准教授 (80547498)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 顔 / 印象 / 特性推論 / メタ認知 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題は、次の2つのリサーチ・クエスチョン(RQ)を設け、心理学実験を通じてその答えを探求することを目指している。1つ目のRQは、「顔印象は正確だというメタ認知を持つ人の顔印象は実際に正確なのか、或いは、偏りを持つのか。」である(RQ1)。2つ目のRQは、「顔印象とそのメタ認知の正確性/偏りの個人差はなぜ生まれるのか。」である(RQ2)。RQ1に関連して、2022年度は、顔印象(特に顔に基づく信頼性判断[顔信頼性判断]に着目)の正確性の個人差の安定性を調べる実験を行った。つまり、ある顔刺激セット・時点で顔信頼性判断の正確性が高い人は別の顔刺激セット・時点でも同判断の正確性が高い傾向にあるかを検討した。実験の結果、2回の顔信頼性判断の正確性の相関は有意ではなく、顔信頼性判断の正確性は安定した個人差特性ではないことが示唆された。RQ2に関連して、2022年度は、顔印象は正確だというメタ認知(人相学的信念として測定)を持つ人と持たない人の間で顔印象(特に顔に基づく知性判断[顔知性判断]に着目)の形成に使用する手がかりが異なるかを調べる実験を行った。手がかりとしては、目の開き具合や口角の上がり具合などの意図的な操作が比較的容易なものと、顔幅の縦横比や眼間距離などの意図的な操作が比較的困難なものを比較した。実験の結果、人相学的信念が高い人ほど、目の開き具合や口角の上がり具合を顔知性判断の手がかりとする傾向にあることが示された。つまり、人相学的信念が高い人はむしろ意図的な印象操作の影響を受けやすいことが示唆された。この研究成果については、2023年に開催される日本感情心理学会第31回大会で発表予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題は、次の2つのリサーチ・クエスチョン(RQ)を探求するものである。1つ目のRQは、「顔印象は正確だというメタ認知を持つ人の顔印象は実際に正確なのか、或いは、偏りを持つのか。」である(RQ1)。2つ目のRQは、「顔印象とそのメタ認知の正確性/偏りの個人差はなぜ生まれるのか。」である(RQ2)。RQ1に関連して、2022年度は、顔に基づく信頼性判断(顔信頼性判断)に顔刺激セットを変えて参加者に2回取り組んでもらう実験を行った。実験の結果、2回の顔信頼性判断の正確性の相関は有意ではなく、かつ、人相学的信念との相関も有意ではないことが明らかになった。この結果は、顔信頼性判断の正確性が安定した個人差特性ではないことを示唆するものである。RQ2に関連して、2022年度は、人相学的信念の強さと顔に基づく知性判断(顔知性判断)の際に使用する手がかりの関係を調べる実験を行った。手がかりとしては、目の開き具合や口角の上がり具合などの意図的な操作が比較的容易なものと、顔幅の縦横比や眼間距離などの意図的な操作が比較的困難なものに着目した。実験の結果、参加者全体として、目の開き具合や口角の上がり具合が高い顔写真の人物ほど知性が高いと判断されやすい傾向が見出された。さらに、この傾向は人相学的信念の高い人ほど強いこともわかった。この結果は、人相学的信念が高い人はむしろ意図的な印象操作の影響を受けやすいことを示唆するものである。この研究成果については、2023年に開催される日本感情心理学会第31回大会で発表予定である。以上のように、RQ1とRQ2を探求する研究がともに着実に実施できていることから、研究は順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
2023年度は、2022年度に行った実験で得られた知見の頑健性を調べる概念的追試を行う予定である。まず、RQ1に関連して、ある顔刺激セット・時点で顔信頼性判断の正確性が高い人が別の顔刺激セット・時点でも同判断の正確性が高い傾向にあるかを検討する実験を改めて行う。ただし、2022年度とは異なり、今回は顔信頼性判断の正確性に応じて参加者に報酬を与える。つまり、顔信頼性判断の正確性の個人差の安定性の欠如が、正確な判断へのインセンティブが存在する条件下でも頑健に観測されるかを調べる。次に、RQ2に関連して、人相学的信念と顔信頼性判断に使用される手がかりの関係を調べる実験を行う計画である。2022年度と同様に、手がかりとしては、目の開き具合や口角の上がり具合などの意図的な操作が比較的容易なものと、顔幅の縦横比や眼間距離などの意図的な操作が比較的困難なものを比較する。この実験を通して、人相学的信念の高い人ほど意図的な操作が可能な顔手がかりを使用しやすいという傾向が、顔知性判断だけでなく顔信頼性判断でも認められるかを明らかにする。ただし、顔印象に関する研究は進展が目覚ましいため、最新の研究動向を踏まえ、ホットな話題を研究の中に随時取り入れたり、種々の研究の優先順位を適切に更新したりすることで、インパクトのある研究成果を着実に挙げられるように努める。
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Causes of Carryover |
当初海外渡航として参加予定だったPsychonomic Societyの年次大会にオンライン参加することとなり、それに係る旅費の支出がなかったため。繰越分は、次年度の旅費や研究成果公表のための費用などとして使用する計画である。
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