2023 Fiscal Year Annual Research Report
顔印象とそのメタ認知の正確性/偏りの個人差に関する実験心理学的検討
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21K03124
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
鈴木 敦命 東京大学, 大学院人文社会系研究科(文学部), 准教授 (80547498)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 顔 / 印象 / 特性推論 / メタ認知 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題は、次の2つのリサーチ・クエスチョン(RQ)を設け、心理学実験を通じてその答えを探求することを目指している。1つ目のRQは、「顔印象は正確だというメタ認知を持つ人の顔印象は実際に正確なのか、或いは、偏りを持つのか。」である(RQ1)。2つ目のRQは、「顔印象とそのメタ認知の正確性/偏りの個人差はなぜ生まれるのか。」である(RQ2)。RQ1に関連して、2023年度は、顔に基づく信頼性判断の正確性の個人差の安定性を、正確な判断に対してインセンティブを与えた上で調べる実験を行った。実験参加者に顔刺激セットを変えて2回の顔信頼性判断を行ってもらったところ、正確性の間に0.16の正の相関が認められた。この相関は統計的に有意だったが、値としては小さいため、前年度と同様に、顔信頼性判断の正確性は安定した個人差特性ではないことが示唆された。RQ2に関連して、2023年度は、鎌倉時代作の「公家列影図」に描かれた57名の公家の肖像画に対する印象を調べる実験に共同研究として携わった。実験の結果、肖像画に対する印象は、実人物の顔写真に対する印象と同様に、信頼性と支配性の印象次元によって要約できることが明らかになった。この結果は、絵画などの文化的構築物に描かれた顔と実人物の顔が類似の処理を受けていることを示唆し、前者において見られるステレオタイプ的な顔貌表現への接触経験の違いが顔印象の個人差に影響する可能性が推察される。この研究成果については、2023年に開催された日本心理学会第87回大会でポスター発表された。
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